2019年06月25日

「無かったこと」にしてもどうにもならん

【「年金給付水準の低下」原案から削除 財政審が配慮か】
 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が麻生太郎財務相に提出した建議(意見書)で、原案にあった「将来の年金給付水準の低下が見込まれる」「自助努力を促すことが重要」との文言が削除されていたことがわかった。麻生氏が、老後の生活費が2千万円不足するとした金融庁の審議会報告書の受け取りを拒否したことなどで、老後の生活不安問題が夏の参院選の主要争点となる見通しだ。このため、財務省が安倍政権に配慮したのではとの見方も出ている。建議は19日の会議でとりまとめられ、提出された。財政悪化に歯止めをかけるため、社会保障の改革の必要性などを提言した。
 財政審はこの前回の6日の会議で、審議会メンバーら「起草委員」が作成した建議の原案を非公開で議論。関係者によると、原案では、年金について「将来の基礎年金の給付水準が想定より低くなることが見込まれている」「(年金だけに頼らない)自助努力を促していく観点が重要」などの文言が盛り込まれていたが、建議では削られた。
 年金をめぐっては、金融庁の審議会が3日、老後の生活費が「2千万円不足」するなどとした報告書をまとめたが、金融担当相を兼務する麻生氏が11日に「年金制度への誤解と不安を招いた」などとして受け取り拒否を表明したばかりだ。参院選を前に、都合の悪い事実を隠そうとしていると野党などが批判している。
(6月20日、朝日新聞)

私の言いたいことは全て「金融庁の年金報告書が「なかったこと」に」で述べているので、繰り返しになってしまう。
年金は株価予測と違って、保険料と給付金額の関係が非常に明快で、人口の増減や基金運用の正否は予測が外れることもあろうが、基本的には未来予測が可能な世界である。
それだけに基本的に年金額が低い日本の場合、「失われた30年」による収入低下もあって、年金だけでは暮らせない層が増えてゆくのは避けられない情勢にある。
また、2040年には65歳以上の高齢化率が40%近くなるのだから、大増税を行って税による補填を行わない限り、年金の給付額は低下せざるを得ないだろう。なにせ、保険料を負担する層と年金を受給する層が限りなく一対一に近づいてくるのだから。
年金制度そのものが崩壊する可能性は限りなく低いが、給付水準や受給開始年齢などの条件はさらなる悪化は不可避の情勢にある。

そうした「不都合な事実」を指摘した報告書を「無かったこと」にするのは、戦前の総力戦研究所の報告書やミッドウェー作戦の事前演習を彷彿とさせる。

政策の選択肢的には、報告書の通り現行のシステムを維持しつつ、市民の自助努力に委ねるか、さもなければ保険料ないし税を大幅に増やして給付水準の維持・向上を行う他ない。
後は、私が常々述べているように、年金以外のところで公営住宅の増設を行ったり、住宅補助金を出す仕組みを作ることが考えられる。この場合も、財源をどこに求めるかが問題になる。私の提案は資産課税である。

年金問題は本質的に鬼門で、ロシアのプーチン大統領ですら、年金問題で瞬間的に支持率を半分近くまで下げてしまったことがあるくらいだ。
いくら自民党が強いとは言え、それはあくまで「野党が弱すぎる」という相対的なものであり、選挙前の自民党が「無かったこと」にするのは戦術的には正しいのだろうが、戦略的には失敗するほか無い道である。
posted by ケン at 12:00| Comment(3) | 財政、社会保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする