2019年08月05日

安倍政権が支持される理由

「何であんな権威的で腐敗も激しい安倍政権が支持されるのでしょうか?」

旨の質問を受けた。ケン先生的にはかなり「自明の理」のことだったので、特に深く考えたことはなかったかもしれない。
考えてみれば、本ブログはゴリゴリの左翼人が書いている割に、いわゆる安倍批判的なネタは非常に少ない。
そもそも自分が所属あるいはボスが所属していた民主、民進党にしても、「自民党よりはマシ」程度で、相対的に支援していただけで、支持していたとは到底言えない。まぁそれは良い。

まず言えることは、安倍批判系の人たちの批判の矛先は、「憲法に対する態度」「原発に対する態度」「自由・人権に対する態度」が主であり、社会保障や再分配については二の次な感じが見られる。
「改憲反対」「反(脱)原発」「自由・人権」は、55年体制期において旧式左翼(社会党とNK党)が主張してきたもので、常に少数派でしかなかった。現実の彼らの戦略は、「国会の3分の1を維持して改憲を阻止する」というもので、「3分の1が守れるかどうか」という程度のものだった。つまり、60年以上少数派なのだから、同じ主張を繰り返して支持が増える理由が無いのは当然だろう。
付言しておくと、NK党が「脱原発」に転じたのは1990年代のことである。
要は国民の多数派は最初からリベラリズムを政党支持の根幹に置いていないのである。

政府や政権の支持・不支持の一般的な基準は、やはり経済指標と生活水準である。
ケン理論的には、三つの指標で見ると分かりやすい。それは、

・高インフレ(物価高)
・高失業率
・低治安

で、このうちの一つだけなら政府に対する不安は高まっても、維持は可能だが、二つ成立すると急速に社会が不安定化し、三つになると危機的状況に陥る。
近代日本史を見た場合、昭和恐慌期と戦後期が「三つ」当てはまる時期だった。
昭和恐慌は、解決の目処がつかないまま、対中開戦によって暴力による資源収奪で解決しようとしたところ、破滅的結果を招いてしまった。
戦後恐慌も、今でこそ忘れ去られているが、政権は常に安定せず、デモとストライキが横行、治安は最低の状態にあったが、朝鮮戦争の勃発による朝鮮特需によって、まず失業率が一気に改善、生産力が回復すると同時に購買力も向上したため物価も安定傾向となり、社会は安定化していった。そして55年体制が成立する。社会党が不幸だったのは、連立政権を組んだのが最も不安定な朝鮮戦争前の時期だったところにある。もし朝鮮特需の時期が吉田内閣では無く片山内閣だったら、55年体制の有り様も大きく変わったのでは無かろうか。

現代で言うと、政権交代が起きて自民党が下野したのは、バブル崩壊(1993年)とリーマンショック(2009年)期で、ともに一時的に失業率が高まった時だった。それでも、2007年の失業率3.9%が、2009年の最高水準で5.5%になっただけなのだから、わずかな差で凄まじい影響が出ることが分かる。もちろん、物価と治安については大きな変化は無い。
但し、日本政府の失業率計算は全く現状を表していない。霞が関の言う「失業者」は、「無職かつ一生懸命求職活動している者」を指しているためで、バイトしながら正社員を目指しているものや、ハローワークに行かずに求職している者はカウントされない。実際には、2〜3割以上のものが失業者計算から除外されていると考えて良い。

さて、安倍政権である。安倍政権下では、少なくとも数字上は失業率は大きく改善している。野田政権期の4.4%はいまや2.4%にまで「改善」している。これが「アベノミクス」の成果なのか、単に少子高齢化の影響なのか、霞が関の統計改竄によるものなのかについては、議論の余地はあるものの、少なくとも国民の大多数は安倍政権を評価していると言えるだろう。
物価もやや上昇傾向にあるとは言え、全体的にはほぼ横ばいが保たれている。これも商品の中身を減らして価格を据え置くなど、欺瞞的なものが見られるわけだが、ここでは議論しない。
治安については、センセーショナルな事件は別にして、非常に良好な状態にある。
つまり、経済社会の運営について安倍政権に対して不満を募らせる理由は「何も無い」とすら言える状態にあるのだ。

自民党、霞が関が巧妙なのは、法人税の優遇措置や外国人奴隷制度などを上手く利用して、倒産寸前の零細企業や老朽化した大企業の延命を図ることによって生産力を維持、供給過剰状態を存続させることでデフレ(低物価)状態を実現していることにある。
また、小泉内閣などで労働市場の緩和を実現したことで、従業員の非正規率が4割以上になったが、これによって失業率の向上を阻止している。これは非正規職員の生活水準を最低賃金水準にまで落とすことになるわけだが、「失業よりはマシ」「日々の飯は食える」ということで、「安倍即斬」になるのを抑えている。
物価高と失業増を抑えられれば、治安が悪化することもないため、治安は良好を保っているが、例えば警視庁や公安調査庁は「次の時代」を見据えて、国会前のデモに参加した者の全ての顔写真を撮影してファイリングを進めている。当局による盗聴もほぼ自由化されている。だが、こうした側面が政権支持率の低下には繋がってはおらず、「自由・人権」が票にならないことを示している。

とはいえ、自民党や安倍政権が積極的に支持されていると言うことでも無い。
選挙後に行われた世論調査によると、比例区で自民党に投票した者の6割以上が「他に適当な投票がなかったから」との回答を示しており、現状維持バイアスが非常に大きいだけで、自民党・霞が関の政策が積極的に支持されている訳では無いことが分かる。
安倍政権が圧勝しても憲法改正にまで注力できないのは、「そこまでは支持してないけどな」という国民の多数派の意向が見て取れるためだと思われる。そこが、「政権取ったんだから俺の自由にやらせろ!」とやってしまった民主党鳩山政権との違いなのである。

まぁエリートなリベラル人士には理解できないかもしれないが。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | 憲法、政治思想、理念 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする