2019年08月09日

工作 黒金星と呼ばれた男

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『工作 黒金星と呼ばれた男』 ユン・ジョンビン監督 韓国(2018)

韓国のスパイ映画だが、従来の作品とはかなり毛色の異なる、現代ならではの作品。
北朝鮮において核開発が疑われた1992年、ある陸軍少佐が国家安全企画部にスカウトされ、北朝鮮への潜入捜査を命じられる。
その任務は「核開発の現状を把握する」「寧辺への潜入を試みる」「できる限り地位のある高官に接触する」で、いずれも尋常ならざる難易度の任務である。



前半はオーソドックスなスパイ映画の展開だが、後半は様相が変わってくる。
主人公は事業家に擬装して北朝鮮の対外経済部と接触を試みるが、利用し利用される関係の中で、擬装だったはずの民間事業が「南北融和の象徴」になっていってしまう。
さらに、対北諜報活動と言いながら、国内政治に関与して保守党を裏から支え、そのために北の軍部などと取引する安企部に対し、主人公は疑問を持つようになる。
そして、金大中が出馬する1997年の大統領選を迎え、クライマックスとなる。

ストーリー展開も描写も大胆かつダイナミックで、非常に見応えがある。
スパイ活動のディテールも緻密に描かれ、、演技も抜群で、グイグイ物語に引き込まれて行く。
音楽や演出で盛り上げるのでは無く、ストレートに演技で勝負しているところは高く評価したい。

本作の最大の特徴は、北を「悪」として描くのでは無く、可能限り中立的に描いている点にある。
善悪の単純な対立構造ではなく、「利害の一致」「交渉による妥協と融和」「善の中の悪、悪の中の善」など南北を巡る複雑な関係性も見事に描かれているのは、2018年という時代を表しているのだろう。」
北側の担当者たちも体制の人間とは言え、みな「一人の人間」として描かれ、みな様々な思いを心に秘め、ふとしたきっかけで露呈される。
その辺の描写がまた絶妙で、「上手すぎる」としか思えない。
同時に平壌などの再現度が半端なく、金正日役も非常に納得度の高い再現度で感動すら覚えるほど。
色々「なるほど、こうなっているのか!」と思わせるところが非常に多く、映画とは思えないくらいだった。

久しぶりに映画館でもう一度見てみたいと思える作品を見た気がする。
超お薦めである。

【追記】
本作を見ると、日本で国政選挙が近くなるたびに「飛翔体」が発射されるのは、官房機密費が北に流れているためであることが容易に想像さよう。
posted by ケン at 10:28| Comment(2) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする