2019年08月16日

安倍政権が支持される理由・続

安倍政権が支持される理由」の補足。
安倍政権は伝統的な自民党の統治手法に則っている側面がある。
それは「野党の政策を先取りする」だ。
55年体制下で社会党が政権奪取できなかったことの一因は、自民党が社会党の政策を先に実行したことがある。
特に岸内閣における国民健康保険と国民年金制度は、与党内に強い反発があったにもかかわらず、岸信介のイニシアチブによって強行された。結果、日米安保改正問題で大騒動が起こったにもかかわらず、岸内閣は総辞職するのみに終わり、続く総選挙では自民党が勝利している。これは「日米安保を除けば、自民党で良い」と国民が判断したためだった。

では、現在の安倍政権はどうか。
アベノミクスをまず見た場合、「大胆な金融緩和」によって倒産寸前にある零細企業や地方企業を救済し、雇用を守っている(だから経済成長しないのだが)。同時に物価も安定している(これも経済成長しない理由だが)。
「機動的な財政政策」で公共事業が復活(日銀が建設国債を購入)、伝統的な自民党支持層は一応潤っている。
「成長戦略」もバラマキに近いが、法人税を引き下げ、外国人労働者を緩和し、企業的には万々歳で内部留保だけは増えている(つまり投資先が無い)。

これらの政策は名称とは逆に競争と成長の可能性を犠牲にして、既存の資本と雇用を維持することに重点を置いていることが分かる。となれば、現状維持を優先したいものにとっては安倍政権を支持しない理由が無い。
さらに言えば、今後日本経済が悪化する以外にほぼほぼ可能性が無い以上は、「現状維持を至上とする」霞が関の方針に反対する方がリスクがあると言える。
ゲーム的に言えば、1D6を振って「1」が出れば成長軌道に乗るが、それ以外の場合はすぐに悪化するという選択肢と、「とりあえず現状維持」であるなら、後者を選ぶのが人情だろう。
その意味で、安倍政権は非常に「保守的」なのだ。

雇用については少なくとも数字上は改善しており、2012年の4.4%から2019年の2.4%まで劇的に改善している。
これは基本的には少子高齢化と非正規職の増加による「統計上の失業者の減少」という側面はあるものの、安倍政権を全否定する理由にはならず、全般的にはむしろ評価されているとみるべきだ。
また、今更ではあるが、就職氷河期世代への配慮や中途採用の拡大なども主張しており、本来野党が主張すべき政策を先取りしている。
野党からはダメ出しされつつも、最低賃金を上げる方向で財界に働きかけており、平均的な自民党総理よりはよほど「労働者にやさしい」側面がある。

社会保障についても、野党はこぞって批判しているが、安倍首相は基本的には祖父君の遺訓を受け継いで社会保障の維持に努めているように見える。
少子高齢化が進行する中で、制度そのものを維持するためには支出の抑制が不可欠であり、NK党や社民党が主張する「充実」を行った場合、税による補填が増えるだけで、すぐにも財政破綻するだろう。
日本の場合、例えば健康保険の適用範囲が非常に広く、薬も出し放題で、かなり放漫財政になっている。制度の持続性を考えた場合、保険適用範囲の限定は避けられないはずだ。この点、安倍政権でも進めておらず、安倍政権が本質的には社会保障制度に親和的であることを示している。同制度の大幅な縮小でも主張しない限り、自民党と野党の対立軸は決定的なモノになりにくいだろう。
幼児教育、保育の無償化も同じで、野党の政策であるべきものを先んじて実行している。

全般的に見た場合、2009年の民主党が「いま大手術すれば、日本は復活できる!」と大見得切って、国民の7割以上の支持を受けて政権交代を実現させたものの、蓋を開けてみれば、「何をどう手術して、日本をどう再生させるのか」について全く絵図面を持っていなかったことが判明した。挙げ句の果てに公約破りの増税を自民党と談合して決め、東日本大震災などの不幸があったとはいえ、失業率を悪化させて、わずか3年で自民党に支持が戻ってしまった。
自民党にはその反省があるため(悪夢の民主党政権)、安倍政権は「手術」路線を封印、現状維持=延命路線へと舵を切った。これは言うなれば、「ペレストロイカをやらないソ連」路線であり、いくばくか余命をつなぐことはできるかもしれないが、「それだけ」なのだ。故に、国内の貧困は見えないところで深刻化し、少子化も止まることが無い。
しかし、「手術するよりはマシ」というのが国民の大多数の判断であり、少数派のリベラル派を中心とした潜在的不満の高まりに対し、権威主義と警察権力をもって対処しようというのが安倍政権の本質なのだろう。言うなれば、岸信介の国家社会主義路線のソフト&劣化版と言えそうだ。

ケン先生的には「ペレストロイカをやらないソ連」の末路がどうなるのか、興味深く見守るつもりだ。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする