2019年09月13日

これじゃあ中国は戦争なんてできないッス!

出勤すると、学生の何割かが迷彩服を着て歩いている。
去年もたまに見かけたが、こんなまとまった人数では無かった。
同僚の先生に聞いてみると、大学生二年生は軍事教練を受ける決まりになっているが、去年までは夏休み中に二週間にやっていたものが、今年からは新学期が始まってから最初の一週間で行うことになった、とのこと。
つまり、大学二年生の軍事教練らしい。

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だが、学生はそこかしこに座り込んでスマホをいじっているし、整列しているのを見ても、ロクに真っ直ぐ立っていられず、そもそも「整列」とすら言えない状況にある。
そもそもメガネ女子率が高めなので、ますますコスプレにしか見えない。
実際の教練の場面を見たわけではないが、およそ「軍事」にも「教練」にも似つかわしくない。
外国人ながら、

「米帝が攻めてきたら、どうするんじゃあ〜〜!!」

と叫びたくなってしまう。
いや、日本のように誰にも国防の義務がなく、自衛隊が国家傭兵として「米軍が来るまで戦うことになっている」と割り切ってしまうなら、それはそれで良いのだ。だが、その場合は一般国民は教練など不要だろう。
しかし、中国の場合、憲法が全公民に国防の義務を課しており、軍役の有無は別にして、国民は国防の義務を有している。それだけに、一応とは言え、社会的エリートを養成する建前にある高等教育機関における軍事教練は、本来であれば、重要な責務と課題を担うはずなのだ。

ケン先生がこう考える(嘆く)のは、ソ連帰りだからでもある。
ソ連のコムソモール(共産主義青年同盟)では、夏休みには一ヶ月程度の合宿があり、そこでは軍事教練も行われ、パルチザン訓練がなされていた。
それは、NATO軍が攻めてきた場合、同盟員がリーダーとなって、戦線後方でパルチザンを組織し、遊撃戦を展開するという想定の下にプログラムが組まれていた。
NATO軍に対抗するワルシャワ条約機構、あるいはアメリカ軍に対抗するソ連軍という世界トップレベルの軍事力を保有していたにもかかわらず、当のソ連共産党は米軍がソ連領内に深く攻め込んでくることを想定していたのである。
コムソモール員は必ずしも社会的エリートのみで構成されていたわけではなく、普通に高卒者も多かった。私が仲良くしていた女性は、日本で言えば美大出身で、「いかにも」なロシア美人だったが、私服で軍事教練を受けている時の写真を見せて、色々話してくれた。私服で軍事教練するところが一層パルチザンを思わせ、どこまでも徹底していた。

これは、長年「ソ連の脅威」「ロシアの伝統的拡張主義」などと西側史観を叩き込まれてきた西側人には全く想像もつかないだろうが、ロシア人というのは本質的には悲観的で防御的なのである。
革命内戦、革命干渉戦争(シベリア出兵)を経て、スターリンの独裁体制が完成してなお、スターリンは「必ずやポーランドと日本が東西から挟撃してくる」と恐れて軍備拡張を進め、現実にはドイツに宣戦布告無しで侵攻され、日本の関東軍も侵攻を準備していた(関特演)。

その意味で、日中戦争はあったと言えど、革命干渉もなく、冷戦においても主要は米ソ対立であったがために、中国の安全保障環境は、ソ連に比べると格段に緩かったのかもしれない。
ソ連学徒的には、軍の近代化は近代化として進めるも、それとは別に米軍や日本軍(自衛隊)の侵攻に備えて、国内で遊撃戦を行う体制を組んでおくのが統治者の責務であるように思われるのだが、現代中国(中共)はそうは考えていないようだ。

普通に考えて、アフガニスタンやイラクの事例を考えれば、突然アメリカが宣戦布告なしで侵攻してきて、中国の一部を占領し、自衛隊が「復興支援」と称して後方支援や治安任務を行うことなど、ソ連学徒的には「いつ起こってもおかしくない」くらいに現実的な想定だと思うのだが、全く謎である。
posted by ケン at 12:00| Comment(4) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする