2019年09月16日

アフガンで鷹罠に嵌まってるアメリカ

【和平交渉、振り出しに=米、タリバンとの協議中止−アフガン戦争の出口見えず】
 合意間近とされていた米国とアフガニスタンの反政府勢力タリバンの和平交渉が振り出しに戻った。
 トランプ米大統領は8日に予定されていたタリバン指導者との会談を取りやめ、和平交渉も中止すると表明。タリバンも「米国民にさらなる被害が出るだろう」と態度を硬化させた。2001年の同時テロ以降続く「米史上最長の戦争」の出口は再び閉ざされた。
 「もうだめだ。できない」。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、トランプ氏は5日、アフガンの首都カブールで起きた自爆テロで米兵を含む12人が死亡したことを聞き、タリバンとの会談中止を決めた。
 同紙によれば、和平交渉が大詰めを迎えた8月下旬、トランプ氏はホワイトハウスでの側近との会合で、最後の交渉を首都ワシントンで行うことを思い付いた。数日後にはアフガンのガニ大統領だけでなく、タリバン指導者もワシントン近郊のキャンプデービッド山荘に招くことを発案。9月8日の「劇的な和平合意」演出に向けた計画が動き始めた。
 米政府は昨年7月以降、タリバンと和平交渉を繰り返した。9月1日に終了した9回目の協議では、米政府を代表するハリルザド・アフガン和平担当特別代表が135日以内に米軍約5000人を撤収させ、今後1年余でさらに段階的撤収を進めることを約束した。
 一方、タリバン側は国際テロ組織アルカイダと決別し、アフガンを対米テロ活動の拠点にしないことなどで「大筋で合意」した。だが、カブールでの自爆テロ後、タリバンが「外国軍の車列を狙った」と犯行声明を出したことで、トランプ氏の構想は崩れた。
 トランプ氏がタリバン指導者とガニ大統領との「秘密会談」を予定していたのは、くしくも米同時テロから18年の数日前。トランプ氏がツイッターで会談計画があったことを暴露すると、与党共和党内からも「キャンプデービッドは、米指導者が同時テロ直後にアルカイダと後ろ盾であるタリバンへの対応を協議した場所だ。タリバンを招くようなことがあっては断じてならない」などと批判が噴出した。
 米政府は、タリバンが力を誇示し、アフガン政府との今後の交渉で優位な立場に立つためにテロを続けていると分析。ポンペオ国務長官は、タリバンがテロ攻撃をやめれば交渉再開の余地はあると示唆した。
 交渉中止は「タリバンの暴力を止めるための戦略だ」(アフガンの政治評論家アフマド・サイーディ氏)と評価する声もある。だが、トランプ氏が来年の大統領選に向け、アフガンからの米軍撤収を目指しているのは周知の事実。米シンクタンク大西洋評議会のジャビド・アフマド上級研究員は「タリバンは戦場でも交渉の場でも勝っている」と述べ、成果を焦るトランプ氏に対し、タリバンが依然として優位な立場にいると指摘している。
(9月10日、時事通信) 

GMT「A Distant Plain」をプレイしたことのある人なら、超納得できる話。

現時点でアフガニスタンに駐留している米軍は約1万4千人。アメリカはまず5千人を撤兵しようとタリバン側と交渉したが、断念した格好になっている。
現状、アメリカ軍は米以外の全世界に約45万人を駐留させているが、一時的にでもタリバンを制圧させるためには30万人以上を投入する必要があると言われている。

興味深いことに、この数字はソ連がアフガニスタンに軍事介入した1970年代末から80年代にかけてと同じである。
ソ連軍が介入する前に、参謀本部は「アフガニスタン全土を制圧するには最低30万人、できれば50万人は欲しい」との数字を出し、「中ソ国境の防衛を考えれば、非現実的」との見解を出していた。
当時のソ連軍よりもよほど装備が近代化されている米軍をしても、一国を制圧するには物量に頼るほか無いことを表している。これはイラクでの経験が反映しているのだろう。

さらに面白いのは、現地のアフガニスタン政府軍が公式上は19万人も存在しているわけだが、多く見積もって国土の6割を抑えているに過ぎず、タリバンの影響圏は実質的には国土の半分以上を占めている。
「A Distant Plain」でも、1クールが終わると、政府軍と警察は3分の1が消失(自動除去)される仕組みになっており、戦力的にも米軍の半分以下で、「いないと困るけど、使い物にならん」状態が良く再現されている。

アメリカ側としては20年近くも戦果を挙げられないままウダウダやっている上、建前上は「民主政府」を守らねばならないため、とにかく駐留させざるを得ない。アメリカ人的には「アルカイダを叩いただけで、アフガニスタンのことなどはどうでもいい」のが本音だが、それを言ってしまったら、アメリカの価値観が根底から崩れることになる。ただし、トランプ氏はそのつもりのようだが。

他方、タリバンは勝利こそ収めていないものの、「侵略軍と戦う民族聖戦」を正義の旗として掲げている以上、下手な妥協はできないし、戦いを有利に進めている以上、不利な妥協をする必要も無い。
ベトナムと同様、もはやアメリカ、NATOが撤兵するほかに手立ては無い状態にあり、「誰がどのタイミングで決断するか」という問題でしかない。
しかし、ロシアからすれば、アメリカには少しでも長くトラップに嵌まっていて欲しいわけで、あれこれ手を打っているだろう。
さらに言えば、アメリカはタリバン勢力を抑えるために、アフガニスタンのISを陰で支援しているという噂もあり、三十年戦争くらいに訳が分からない状態になっている。

まさに泥沼である。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする