2019年11月18日

ソ連帰りから見た北大教授拘束事件

【北大教授「機密資料を収集」と中国外務省 保釈を発表】
 北海道大の男性教授が9月、北京で中国当局に拘束された事件で、中国外務省の耿爽(こう・そう)報道官は15日の記者会見で「刑法と反スパイ法に違反した疑いで拘束していた男性教授を保釈した」と発表した。刑法の容疑は国家安全危害罪とみられる。
 中国外務省によると、教授は岩谷將(のぶ)氏で同日、日本に帰国した。産経新聞は発表内容について、教授本人に確認できていない。
 耿氏によると、中国の国家安全当局が9月8日、教授のホテルの部屋を捜索したところ、「中国の国家秘密に関わる資料」が見つかった。さらに教授は「以前から中国側の大量の機密資料を収集していたと供述」し、「犯行の一切を認め、後悔の念を示した」としている。中国側は教授を訓戒した上で、改悛(かいしゅん)の意を示す書類を提出させたという。
 関係筋の話を総合すると、教授は政府系シンクタンク、中国社会科学院近代史研究所の招聘(しょうへい)で9月3日に北京入りし、同17日に帰国予定だった。帰国時に北京の空港で拘束されたとの情報があったが「10日の発表会の直前に北京市内のホテルで拘束されたようだ」との証言も出ていた。
 教授は中国政治が専門。防衛省防衛研究所や外務省に勤務した経歴があり、日中戦争史などの研究テーマに関連する資料を積極的に収集していた。
 中国当局は2015年以降、スパイ行為に関与したなどとして教授以外にも日本人の男女計13人を拘束し、うち8人に実刑判決を言い渡している。
(11月15日、産経新聞)

今の中国は良くも悪くも色々「緩い」ので、逆に付き合い方が難しいところがある。かつてのソ連・東欧圏のように「外国人=スパイ」くらいに見られていると、よほどの覚悟がないと情報収集なんてやる気にもならないのだが、変に自由化されているため、つい気を許してしまうからだ。

市中では機密解除された文書が古書店においてあるし、図書館に行けば、一定の条件下で機密文書の閲覧が認められる。こうした機密には何段階もあって、「持ち出し禁止」「指定された部屋でスマホ無しで閲覧のみ可」「監視員の見ているところでのみ閲覧可」「特定の許可があれば閲覧可」など、相当に細かく分類されている。

それだけに、ルールを守らずに忍ばせておいた小型カメラなどで写真を撮ってしまうケースがあるという。
また、移動や行動も基本的に自由であるため、当局が監視下においている人物とも普通に接触してヒアリングしたりもできるわけだが、当局はこれを非常に嫌う。

私が聞いたところでは、件の教授は共産圏の方式で何度も「警告」が行われたそうだが、無視し続け、行動を改めるところが無かったという。
この「共産圏流」がくせ者で、「街中で知らない人に話しかけられる」「ホテルの部屋に間違い電話が来る」「ホテルの部屋に進入された痕跡がある」など、これまた段階がある上に「お手前」を知らない人からすると意味不明なところが厄介なのだ。
だが、件の教授の場合、「素人」では済まされないのであって、「事前警告はなされていた」「中国政府はかなり穏便に事を済ませた」と見るのが、「最後のソ連帰り」である私の見解である。

今回の拘束は懲罰的意味合いが強いと見るべきで、中国当局は政治的配慮からかなり穏便に事を済ませたものと考えられる。こうした拘束の場合、本当のスパイ罪でない限り、当局から係員が来て型どおりの事情聴取と「お説教」がされるだけで、残りは文字通り軟禁されたまま放置されるケースが散見される。こうした拘束を受けても何度も共産圏に行き来する人がいるところは、「人間って凄い」と思ってしまうのだが。

【追記】
岩谷氏が拘束されたのは、中国大陸から台湾に逃れた国民党の関連文書を所持していたためだったこともわかった。文書は、古本屋で購入したという。
(11月16日、読売新聞より抜粋)

いやいや、古本屋で古本を買っただけでは逮捕されないよ〜。そんなんだったら、私の周囲の研究者もゲームデザイナーもみんな逮捕されてるから!
ただ、市中の古本屋で台湾など経由して「禁書」の類いが入ってきて普通に並んでいるのも確かで、色々緩くなっているだけに、線引きが難しくなっている面はある。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする