2019年12月18日

アメリカの平均寿命低下からわかること

【経済格差などによる「絶望死」が要因か…アメリカ人の寿命は短くなっている】
 アメリカ人の平均寿命は3年連続で低下している。新しい研究は、25歳から64歳までの「生産年齢」のアメリカ人が、より高い割合で死んでいるという事実を示した。
 この死亡には、健康上の問題の中でも特に、薬物の過剰摂取、自殺、アルコール関連疾患が関与している。複数の専門家は、社会経済的な不平等と経済的困難がアメリカ人の死の増加の原因となっているかもしれないと見ている。アメリカは世界で一番裕福な国だが、平均寿命の針が間違った方向に動いている。1959年から2014年にかけて、アメリカ人の平均寿命はずっと上昇していた。しかし、『Journal of the American Medical Association』に発表された新しい研究によると、ここ3年は連続して低下しているという。
 「アメリカ人は生活のさまざまな面で自分たちが優れているという誤解の下で活動している。これはその一つだ」と、本研究の筆頭著者であるスティーブン・ウルフ氏はBusiness Insiderに語っている。
「世界で最高の医療と最高の平均寿命があると思うかもしれないが、そうではない」
 この低下は、人種や性別、地域に関連しているわけではない。アメリカでは25歳から64歳までの人の死亡率が高く、オピオイド中毒、肥満、アルコール性肝疾患、自殺などの問題に悩まされている。国民一人当たりの医療費が世界一であるにもかかわらず、アメリカ人は「他の国の人よりも65歳未満で亡くなる確率が高い。また、彼らの子どもも同様に長生きはできそうにない」とウルフ氏は付け加えた。
(12月8日、Business Insiderより抜粋)

ソ連学徒的には見逃せないパワーワード。
私の世代はソ連研究に際して、必ずE・トッドを読まされたものだが、「勤労世代の死亡増による平均寿命の低下」はソ連の衰退を示す重要な指標だった。
アメリカではここ数年、乳幼児死亡率や未成年者の死亡率が上昇傾向に転じるという報道もあり、1970年代のソ連と同様の兆候が見られる。これらは、社会資本の非効率的な分配と、社会インフラの老朽化・衰退が大きな原因と考えられるが、現在の米国で改善される兆候は見られない。
米国では、巨大な額の医療費が費やされているが、その恩恵に預かれるのは一部の人間に限られ、貧困層は医療を始めとする社会保障から排除されてしまっている。社会インフラも民営化が進み、公共部門は恐ろしく老朽化が進み、荒廃がとまらないようだ。
巨大な軍事費、非効率的な社会投資、貧富の拡大と社会的分断(分裂)などなど、ソ連の状況とは同じでは無いものの、相似性は否めないだろう。

他方、日本の場合、平均寿命の低下や乳幼児死亡率の上昇は認められないが、経営責任や政治責任が問われない制度が生産性の向上と社会資本の効率的運用を阻害している。また、教育の公的投資を否定し、政治家がこれを私物化することから、教育水準の長期的低下が不可避となっている。少子化に歯止めが効かないことは言うまでも無い。
posted by ケン at 12:00| Comment(2) | 財政、社会保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする