2019年12月28日

拳銃で熊は倒せない・補

【県議「クマ襲撃前に発砲できなかったか」、県警部長「拳銃では倒せない」】
 6日の秋田県議会教育公安委員会で、11月に鹿角市十和田大湯で猟友会員と警察官の男性計3人がクマに襲われ重軽傷を負った人身被害発生当時の警察の対応を巡り、委員から疑問が投げかけられた。
 県警側は、警察官が所持する拳銃の威力は、クマに効かないとの認識を示した。
 鹿角市鹿角郡区選出の児玉政明委員(自民党)は、地元住民の不安を代弁し、「襲われる前に発砲できなかったのか」とただした。泉浩毅・県警生活安全部長は「人身被害の危険性があり、安全が確保できれば、警察官の命令で猟友会員が発砲できる」とし、「拳銃でクマは倒せないと認識している」と付け加えた。
(12月7日、読売新聞)

「拳銃で熊は倒せない」を読んだ読者が「そうなのか?」と疑問を呈しておられたので、改めて検討してみたい。

Smith_and_Wesson_Airweight_pocket_sized.jpg
S&M M37

日本の一般的な警察官が携行しているのは、スミス&ウェッソンM37の改良型、S&W M360 SAKURAだ。
実際に見てみると非常に小さく、「手のひらサイズ」とまではいかなくても、それに近いサイズで、見た目だけでも頼りない。
使用されているのは、9mmの38スペシャル弾で、これは有名な9mmパラベラム弾が開発される以前のリボルバー用弾丸である(1900年頃)。リボルバー用の弾丸はその後もあまり開発されることがなかったため、いまだに現役となっているが、その威力はパラベラム弾の5〜7割程度とされている。
要は、防弾ジャケットなどが存在しなかった時代、それどころか黒色火薬時代の産品なのだ。

実際の使用では、数メートルの至近距離から、薄手の服しか着ていない人間を狙った場合、腹部などを貫通する程度と考えて良い。ソ連軍の分厚い冬用コート(超重い)なんか着てたら、それだけでもうダメかもしれないレベルだ。
つまり、日本のような銃火器による市街戦を想定していない環境で、威嚇用としての機能は発揮するとしても、「戦闘」には耐えられないものと見て良い。もちろん、今までの日本ではそれで十分すぎる話なのだが。

では、対熊戦闘が発生した場合はどうであろうか。
熊に有効打を与えるためには、まず5メートル前後まで近づく必要があり、そこから熊の骨に当たらない部位で、かつ効果的なダメージを与える場所を狙う必要がある。
実際、ヒグマ猟に関する文献を読んでいる限り、「頭に当たった矢が弾かれた」「弾丸が骨で止まって、熊大暴れ」のような話が散見される。
熊猟に慣れていない人間が、数メートル以内に近づいて、冷静に銃を撃つことは、まず不可能であり、それは妄想の世界でしか無い。熊が気づいていないなら、一発は撃てるかもしれないが、気づかれて自分が狙われたら、もはや冷静ではいられないだろう。
それを現場の一警官に求めるのは、酷すぎる話だ。警官は熊猟師ではないのだから。

仮に9mmパラベラム弾を使用する自動拳銃(警察でも一部の特殊部隊などに配備)を持っていたとしても、今度は貫通力が高いため、熊に対しては「貫通するだけ」に終わってしまう恐れがある。この場合も、確実に「頭蓋骨に当たらない顔面」などを狙う必要があり、「運が良ければ」というレベルに変わりは無さそうだ。

現実に熊に有効打を与えるためには、恐らく45口径スーパーACP弾などを使う必要があり、SIG SAUER P220やH&K HK45を携行する必要がある。実際、自衛隊などではP220が使われているが、弾丸は9mmパラベラム弾である。
それでも、本気になった熊に対して、10メートル以上離れたところから命中させるのは容易ではなく、装備よりも熊と向き合った人間の士気と訓練度の方が重要な気がする。

99.999%以上の日本人は、熊と戦うことなど全く想定しないのだから。
posted by ケン at 12:00| Comment(4) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする