2020年05月27日

「巨額の内部留保が役立った」は本当か

【「内部留保」はコロナ禍しのぐ“切り札”なのか 「至上主義」に警鐘も】
 新型コロナウイルスの感染拡大は、外国人の入国制限や緊急事態宣言に伴う外出自粛などで日本企業にも大打撃を与えている。ただ、大企業の切迫感や危機感は、海外企業と比べてそれほど大きくないようにみえる。背景には、国内企業が積み上げてきた約460兆円もの「内部留保」(利益剰余金=企業が稼いできた利益の総額)があるともいわれている。かつては「ため込み過ぎ」と批判された日本企業の内部留保は一転、コロナ禍をしのぐ“切り札”として高く評価され始めたが、果たしてそれでいいのか−。
 政府が4月下旬に公表した令和2年版の中小企業白書によると、中小企業の深刻な経営環境が浮き彫りになった。
 収入がなくなった場合を念頭に、現金や預金などの手元資産で、従業員給与や家賃といった固定費をどれだけ払えるかを試算したところ、金融・保険業を除く全産業の経営体力は1年10カ月弱だったものの、飲食サービス業は5カ月強、宿泊業は7カ月弱と短かった。資本金1000万円未満の規模の小さい企業だけでみると、全産業の平均体力は1年未満、宿泊業は3カ月以内に経営が立ち行かなくなるという。
 ところが、大企業に目を転じると、中小ほどの切迫感はみられないようだ。
 日本銀行の3月の企業短期経済観測調査(短観)によると、資金繰りが「楽」と回答した割合から「苦しい」と回答した割合を差し引いた指数は、大企業18、中小企業8と、そろって前回調査(昨年12月)から3ポイント悪化した。ただ、大企業の指数は中小の2倍強と、資金繰りにはまだ余裕が感じられる。政府・日銀の企業支援策も中小・零細企業向けが中心だ。
 「大企業はこういうときのために内部留保を積み上げていると思うので、しっかりと活用してもらいたい」
 西村康稔経済再生担当相は3月の記者会見でこう語り、多くの大企業は自助努力でコロナ禍を乗り切れるとの見方を示した。
 内部留保は会計上、「利益剰余金」と呼ばれる。会社の設立から現在までの毎年度の最終利益の累計額から配当金などを差し引いた額だ。会社が自らの事業で稼いだお金であり、返済が必要な銀行借入金などとは異なる。
 財務省の法人企業統計によると、日本企業が内部留保を確保しようと力を入れ始めた背景には、平成20年のリーマン・ショック時に、「銀行がなかなかお金を貸してくれない」と資金繰りに四苦八苦した経験があるようだ。東日本大震災直後の23年度に約280兆円だった内部留保は7年連続で過去最高を更新し、24年度には300兆円、28年度には400兆円をそれぞれ突破するなど右肩上がりだ。
 日本を代表するグローバル企業のトヨタ自動車の令和元年12月末時点の利益剰余金は約23兆円に達し、現預金は5兆円を超えている。
 安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の“第一の矢”として放たれた日銀の大規模金融緩和で、円安・株高となり、輸出企業を中心に日本企業の利益が大きくアップしたことも、内部留保がたまりやすくなった要因とみられる。
 こうした巨額の内部留保にもかかわらず、ここ数年、賃上げや設備投資は伸び悩んでいた。このため、麻生太郎財務相は「(内部留保が)会社員の給与や設備投資に使われれば、景気回復をもっと広く浸透させることができた」と毎年のように企業に苦言を呈してきた。一時は、財務省を中心にため込み過ぎた内部留保に課税する案まで検討されていたようだ。
 だが、内部留保をめぐるこうした批判はコロナ禍で消し飛んだ。世界中で企業の資金繰りが苦しくなる中、日本企業の潤沢な内部留保が海外からもうらやましがられるようになったのだ。
 自民党の甘利明税調会長は今年3月の会見で、西村氏と同様、「企業は今こそ雇用を支えてもらいたい。そのための現預金の留保ではないかというメッセージを強く出していきたい」とはっぱをかけた。経団連の中西宏明会長も4月下旬の会見で、内部留保について「従業員、協力企業、サプライチェーン(部品の調達・供給網)の維持など生き残るために打つ手は多様。有効なお金の使い方を考えていく」と応じた。
 一方、一部の専門家は「内部留保至上主義」が広がってきたことに警鐘を鳴らし始めた。
 ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミストは「『いざというときのために現預金が必要だ』という企業の主張は、コロナ禍で立証されてしまった。結果論として、分厚い内部留保で企業の資金繰りは多少救われているが、感染拡大の収束後も設備投資や人件費が抑えられるのはよくない」と解説する。
 第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストもこう指摘する。
 「企業はますますお金を使わなくなり、大企業の金余りを助長することになりかねない。有事の際に金詰まりしないよう、政府・日銀は大企業も含めた支援策を充実させるべきだ」
(5月18日、産経新聞)

色々何言っちゃってるんだ、と。

輸出企業を中心に日本企業の利益が大きくアップしたことも、内部留保がたまりやすくなった要因とみられる
→日本の輸出依存度は15%程度ですが

巨額の内部留保にもかかわらず、ここ数年、賃上げや設備投資は伸び悩んでいた
→法人減税による増益分を賃上げや設備投資に回さなかったから、巨額の内部留保になったんでしょ

「内部留保が危機回避に役立った」というのは結果論であって、本来別の戦線に投入する予定だった戦略予備の正面にたまたま想定外の敵が上陸してきただけのこと。
あるいは、本来買わないといけないものがあったものの、売り切れていたため、余らせていたお金が役立ったという話。

現在の日本企業の「巨額の内部留保」は、本来投資に回すべき資金を死蔵させているだけの話でしか無い。
それは、日本の国内市場が少子高齢化と貧困化によって将来性を失っていること、かといって中国などのアジア市場に積極的に進出する意欲も無いことの現れでもある。
つまり、「このまま投資して失うくらいなら、死蔵しておいた方がまだマシ」という後ろ向きな、企業としては自滅の道を歩んでいるのである。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする