【立国合流急ぐ枝野氏 党内の突き上げに焦りも 鈍い玉木氏にしびれ】
立憲民主党の枝野幸男代表が国民民主党との合流を焦っている。枝野氏は新型コロナウイルス対策や東京都知事選で存在感を発揮できず、党内から次期衆院選を見据えた動きを加速するよう求める声が出ていた。旧民主党勢力の糾合をテコに“野党の盟主”として求心力回復を狙うが、仮に合流がうまくいっても険しい道が待ち受けている。
「15日に福山哲郎幹事長から国民側に申し上げたことに答えてもらっていない。答えをいただいた上で検討したい」
枝野氏は18日、横浜市で記者団の質問に答え、国民に対し、合流条件を逆提案する前に立民の提案内容に回答するよう求めた。立民は15日に両党が解党して新党を立ち上げた上で新党名を「立憲民主党」、略称を「民主党」にすることなどを提案したが、国民の玉木雄一郎代表は党名を民主的な手続きで決めるよう主張している。
国民に合流を提案した翌日の16日夜、枝野氏は都内で党の若手議員らと会食した。自らが立ち上げた「立憲民主党」の党名維持にこだわる枝野氏はその場でも「党名は絶対に譲らない」と繰り返した。「早々に決着をつける」とも語り、玉木氏が持ち掛けてくる条件闘争に応じない考えもにじませたという。
昨年末からの国民との合流協議では条件が折り合わず、1月に頓挫した。だが、立民の若手・中堅からは現状のままでは与党だけでなく、日本維新の会やれいわ新選組にも対抗できないとして協議を再開すべきだとの機運が高まっていた。合流に再びかじを切った枝野氏の心境ついて、国民中堅は「立民の政党支持率も頭打ちで焦っているのだろう」と推測する。
一方、今回の合流協議で新党への参加が見込まれる野田佳彦前首相ら旧民主党政権の重鎮も水面下で動きを活発化させている。野田氏を慕う勢力は今も両党内におり、新党結成後の代表選で野田氏を担ぐ案も浮上する。立民の最大グループを率いる赤松広隆衆院副議長も執行部への不満を募らせており、「枝野1強」と言われた党内基盤は揺らいでいる。
(7月18日、産経新聞)
解散・総選挙が近くなるも、支持率の低迷(下手すると維新よりも下)が続く中、産業報国会(自称連合)の強い要求と保身の論理から合流協議が進められている。ただ、付言しておくと、立憲左派(赤松派)は原則論に従って合流に反対の立場をとっている。
しかし、産業報国会や保身が優先されるあまり、「合流ありき」で話が進んでおり、そこには有権者への配慮や政策協議は何も無い。
中国が強大化し、米国の影響力が低下する中で、憲法と安全保障の政策的優先順位が相対的に高まっている。
冷戦期なら、日米安保と自衛隊に賛否を唱えるだけで良かったが(お手前のようなものだった)、現在の日本はアメリカと中国という二大強国に挟まれた状態となり、いわばポーランドやフィンランドのような地勢的条件に陥っている。しかも、日本はアメリカの傀儡国家として始まり、いまも準保護国のような状態にありながら、アメリカの影響力やコミットメントは日々低下しつつあり、アメリカの財政状況を考えれば、「いつ見捨てられてもおかしくない」条件下にある。これに対し、中国は2030〜35年頃までは経済成長と勢力増大していくと考えられ、日本はその矢面に立たされている。
現行の昭和帝政の方針は「何でもやるから米軍に残ってもらう」との方針で、アメリカの国際戦略を積極的に支援し、軍事力も提供する代わりに在日米軍の規模を維持しようとしている。ただこの点、帝政内でも合意は不十分で、外務省はアメリカに対しさらなる軍事貢献を求めているが、防衛省はやや消極的で、意外と安倍政権は海外派兵は最小限度に止めたいとの意向を持っている。
日本の選択肢は(何度も本ブログで述べているが)、「1.対米従属の維持」「2.親中路線への転換」「3.独自路線」となる。現状は1なのだが、それすらもトランプ政権から「思いやり予算」の倍増や防衛費の倍増を求められている。3の独自路線は、聞こえは良いが、米中露の三大軍事大国に挟まれる中で、独自路線を歩む場合、明治帝政と同レベルの軍事水準が求められるだろう。具体的には、現状の三倍の軍事費でも足りるかどうかという話になる上、核武装も検討せねばならず、ハードルは最も高く、現実的ではない。
ケン先生的には、イデオロギーを無視すれば、2の親中路線が将来的には現実的で、問題は「どれだけ従属せずに独立性を担保できるか」が課題となる。同時に、中国に従属しないで済むだけの軍事力を検討する必要がある。
いずれにしても、安全保障上の大きな岐路に立たされている中で、政策の曖昧さは大きな弱点となる。
民主党政権の総括も必要だ。
「東アジア共同体」をめざした鳩山政権と、米海兵隊の辺野古基地移転を沖縄県知事に要求し、秘密保護法と集団的自衛権行使解禁を準備した菅・野田政権の当事者がいまの両党を指導しているにもかかわらず、その総括はいまもなされていない。これでは、「日曜討論」などで安保問題を議論した場合、自民党に鎧袖一触で終わるだろう。
興味深いのはリベラル派の主張で、対米自立を唱える割に、中露に対しては拒否の姿勢を示しており、にもかかわらず日本の軍事的独立については、一切否定的で、軍事力を持たずに米中露から等距離を保とうということらしいのだが、およそ実現可能とは思えない。
これに関連して憲法改正も必要となる。
現行憲法は、帝政の存続の条件として武力の放棄を謳っており、故に戦争放棄と戦力不保持を記している。
その軍事的空白は、当初は国連軍(連合国軍)が埋める予定だったが、国連軍は結成されず、サンフランシスコ講和条約締結に伴い、アメリカ軍が駐留して、その役を務めることになったのだが、同時にその補助部隊として自衛隊が創設され、一義的には自衛隊が日本防衛にあたることとなった。本来なら、この時点で憲法改正が必要であり、岸信介などが主張したのだが、実現しなかった。
その後、解釈改憲を繰り返し、今では全世界に自衛隊を派遣して軍事力を行使することを可能とし、規模的には世界第七位程度の軍事力を有する軍事大国となっているが、体面上は「防衛用の実力組織・実務組織であって、戦力ではない」とされている。そして、今度は対外先制ミサイル攻撃まで「解禁」しようしている。
憲法による抑制が効かない状態で、解釈改憲でルールをねじ曲げてゆく手法は、問題が起きたときに隠蔽は虚偽で押し通すほかなくなり、「法の支配」の瓦解に繋がる。いまもかなりその気が強くなっている。
また、現行憲法は戦争を否定しているため、当然ながら国防の義務は誰にも課されていない。
結果、自衛隊法が以下のように規定しているだけとなっている。
第三条 自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。
これに対し、防衛大臣は防衛省の行政統括官でしかなく、自衛隊の最高指揮官は内閣総理大臣となっているものの、実は内閣総理大臣には国防の義務は課されていない。
欧州などの憲法では、憲法に市民の国防義務を明記している場合が少なくなく、大統領制を導入している国では、大統領が国軍最高指揮官として国防の責務を担う代わりに、その責任は国民に対してなされる関係が明記されている。つまり、市民は国防の義務が課されるが、その最高責任は大統領や議会が担い、市民に対する責務を持つという契約関係が成立している。
こうした社会契約が日本の現行憲法には存在せず、そもそも想定していないため、仮に戦争が発生しても、日本国民は国防の義務を有さず、総理大臣は最高指揮官ではあるが、失敗しても責任を問われることは無く、自衛隊は法律上の実務として国防にあたるだけで、しかも国民を守る義務は無い、という恐ろしい状態にある。
不安定な国際情勢下にあって、米中露に挟まれた日本であるからこそ、憲法問題を議論する必要がある。
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日本再軍備の条件・
天皇の戦争責任とは何かさらに歳出の四割を国債に依拠し、社会保障費が毎年2兆円も肥大化する中で、財政問題は不可避の課題となっている。
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またぞろ安直な消費減税これらの重要課題を放置したまま(増税派と減税派が)合流しても、またぞろ内部対立から破綻するだけだろう。そもそも「希望の党」ができた時に、「排除した方」と「排除された方」が、わずか3年で「手打ち」にすることについて、どう有権者に説明するのか。合流協議を進める前に、大義を掲げない時点で、不信感しか無い。