2014年03月18日

婚活支援という国家主義

【自民が「婚活」後押し=未婚率半減目指す】
 自民党の婚活・街コン推進議員連盟(会長・小池百合子党広報本部長)は14日、衆院議員会館で会合を開き、脱少子高齢化に向けて、生涯未婚率と離婚件数を現状の2分の1以下にすることなどを柱とした目標を決めた。4月には、党が後援して出会いの場を提供するパーティーも開催する。議連によると、2010年の生涯未婚率は男性が20.1%、女性は10.6%で、それぞれ半減以上の改善を目指す。また、女性1人が生涯に産む子どもの数の推計値である合計特殊出生率を、12年の1.41から2以上にすることを掲げた。目標の達成に向け、地域少子化対策強化交付金の継続や、婚活支援や街コン(大規模な合同コンパ)を行う事業者に対し、政府が優良認定を行う制度を創設することなどを挙げた。党後援のパーティーは、4月20日に横浜市緑区で開く予定で、二十歳以上の男女各20人の参加を募って実施する。
(時事通信、3月14日)

【「子供産むのは国家への貢献」 公明指摘で自民代表質問から削除】
 自民党の二之湯智参院議員が12日の参院本会議で、「子供を産み、立派に育てることが国家に対する最大の貢献」としていた代表質問の内容を公明党の指摘を受け、事前に削除・修正していたことが分かった。二之湯氏の代表質問原稿案は少子化問題について「結婚しているのに子供を持つことが社会人としての義務だと考えない人たちが増えている」とも指摘。二之湯氏の質問は公明党を含む与党としての代表質問だったため、公明党が11日に党の政策と相いれないとして修正を申し入れ、自民党が応じた。この結果、二之湯氏は12日の代表質問で「国家に対する貢献」の部分を削除。「子供を持つことが社会人としての義務」との表現は「子供を持つことを望まない人たちが増えている」と修正した原稿を読み上げた。
(産経新聞、3月13日)

自民党はどこまでも権威主義的で、「自由民主」の看板の裏に国家主義を隠し秘めている。
結婚も出産も市民個々人の意思に基づいて行われるのが自由主義社会の大前提であり、市民の意思や選択に国家の意思を介在させるのは国家主義あるいは全体主義に他ならない。
正確には国家主義は国家を至上のものとし、国益は個人の権利に優越するという考え方であり、全体主義は国家方針を一本化して異論を排除しその国家目的を達成するために全資源を動員する考え方である。それを考えれば、公共福祉や国家目的のために中央統制を導入して個人の権利の抑制を認める集産主義と言うべきかもしれない。そのいずれも「日本人は、我ら選ばれた優良種たる自民党に管理、運営されてはじめて永久に生き延びることができる」というエリート主義に直結している。

つまり、自民党議員たちが主張するのは、人口の維持・増加は国家の至上目的であり、国民はその目的に奉仕せねばならず、個人の権利や主張は慎むべきであり、そのために国家資源を投入することを厭わない、ということであろう。
彼らの主張の結果出てきたのが「出産手帳」の交付であり、女性を中心に一定の反発が出たために規模こそ縮小されたものの、強行されている。これは妊娠・出産を国家管理の下に置こうという自民党と霞ヶ関の野望を具現化したものであり、ジェンダー分野でも著しく全体主義化が進んでいることを示している。

これらの自民党の政策は戦時中の優生政策に酷似している。
1940年、「悪質な遺伝性疾患の素質を持つ者」の強制断種に象徴される国民優生法が制定され、同41年厚生省は内地総人口一億を達することを目標とし、そのために避妊、堕胎等の人為的産児調節を禁止、さらに優生結婚指導ガイドラインを策定した。同42年には妊産婦手帳制度が導入され、妊娠の届け出を義務化、妊産婦手帳が交付された。これらの政策は全てナチス・ドイツの優生政策とレーベンスボルン計画を参考にして策定された。

国家が結婚や出産を奨励し、国家意思を市民の自由意思に優越させようとする自民党の姿勢は、個人の権利を尊重する自由社会を害するものであり、戦後日本が獲得した貴重な価値観を否定するものでしかない。自由に対する挑戦という危機意識が薄いのは、結局のところ市民が自力で獲得したものではなく、GHQ改革によって付与されたものに過ぎないからなのかもしれない。この意味でも安倍総理の言う「戦後レジームからの脱却」は着実に進んでいる。

【参考】
繰り返される「子供製造機」認定 
婚活支援に2億円? 
婚活?Nuts! 

【追記】
国家が国民の婚姻を推奨するのは倫理的問題もあるが、実施したところで成功しないだろう。そもそも現状の婚活市場が「専業主婦になりたい女性あまり」にあり、彼女たちが希望する「経済力+コミュニケーション能力+家事育児能力」を兼ね備えた男性なぞ圧倒的少数しかおらず、市場として成立しないためである。
単純に人口を増やしたいなら、「結婚しないと子どもが産めない」という規制こそが問題なのだから、結婚制度を廃止してその規制を撤廃すれば済む話なのだ。「結婚制度は残したい、でも人口は増やしたい」という保守反動の無理が、無駄な税の投入を招いていると言えよう。
posted by ケン at 12:35| Comment(5) | 恋愛、結婚、魔術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
自民党はあまりにも人間をバカにしすぎですし、バカにされてヘラヘラ笑っている国民もまた問題ですね。江戸時代末期、飢饉で出生数が減少した時には、藩によっては子どもを産んだ母親に米を支給したところがあったそうですし、戦時中の産めよ増やせよのときには一時金が支給されたそうですが、江戸時代や戦時中の策にも自民党の政策は達していないですね。
そもそも自民党の一連の政策は少子化を促進するものばかりです。
低所得者の徴税強化→低所得者は子どもを育てられない。
教育費の高騰→低所得者は子どもを育てられない。
純潔教育の強化→性欲すらわかなくなる。
アニメ・漫画の規制強化→性欲すらわかなくなる。
 自民党の一連の政策は「18歳までは性欲を持たず、18歳になったら18歳以上の人間を相手に性欲を持たずに婚活して結婚して子どもを作って自己負担で育児しろ」というものです。ジョージ・オーウェルの1984年の世界ですね。(自民党だけでなくマスコミにも純血主義者が多いのも問題かと)
Posted by hanamaru at 2014年03月18日 13:10
>「結婚しないと子どもが産めない」という規制

実際ありますよね。安藤美姫が五輪出場不可となったのは、それが大きかったと思います。

実子・養子にかかわらず、何人の子供を養育したかにスライドして将来の年金受給額が変わるようにすれば、少しは少子化対策に役立つのでは。

不妊治療に関しては、そこまで実子に拘るか?という感じですし、一方では中絶件数が20万件/年ですからね。もっと、養子を育てるのを普通のことにすべきと思います。
Posted by ミキティ・ファン at 2014年03月18日 13:47
自由民主

ボリシェビキみたいなものですか?

名は体を表さない。
Posted by ケンケン at 2014年03月18日 13:53
やろうとしてることは、中国共産党の施策と同じレベルにあるのに、そのことに気付かない(気付いていないってほんとか?とも思うけど)というのはすごいことだよなと思います、ほんと。

コメントのコメントになりますが、本稿に関わる話なのでご容赦を。

>>実子・養子にかかわらず、何人の子供を養育したかにスライドして将来の年金受給額が変わるようにすれば、少しは少子化対策に役立つのでは。

これはすでに所得税を世帯で計算するような方法への変更が検討されているようです。

所得税の富裕層への増税をするんだと思ったら、算出方法を変更するって言うんだもん、変な話。

「独身貴族」対策であり、若年層や非正規雇用者世帯(税率はそもそも低く、扶養家族が多くても恩恵は無い)はスルーしての、安倍自民党の掲げる「改憲案」に含まれる「家族の助け合い義務」と合致するもの。

この話、あまり取り上げられていませんが(それ以上に問題発言が多いのでマスキング効果なのか・・・)、結構大きな問題だと思っている次第。

そうそう、護憲集会を拒否するような最近の風潮、そもそも憲法を護らねばならぬ公務員が平気の平左でそれを無視する風潮、どんどん強くなっていることにも『「戦後レジームからの脱却」は着実に進んでいる』と感じます。


日経電子版
所得税の抜本改革を議論 政府・与党、子多いと負担減
2014/3/6 2:00
www.nikkei.com/article/DGXNASFS2805N_V00C14A3EA2000/

所得課税を抜本的に見直す構想が政府・与党内に浮上してきた。少子化対策として子どもが多いほど所得税が少なくなるよう課税対象を今の個人単位から世帯全体にする案を検討。一方、女性を支援するため、働く意欲をそぐとされる配偶者控除の廃止・縮小も目指す。



 少子化対策として取り組む世帯課税は、夫や妻、子どもら家族全員の所得の合計から世帯の課税額を計算する方式を検討する。所得の総額を家族の人数で割って1人当たりの所得をはじき出し、この額の税率を適用して家族全員分の税額を出すやり方だ。

 すでに導入しているフランスでは、大人を1、子どもは0.5(第3子以降は1)として世帯の人数を計算する。夫婦と子ども2人の4人家族なら3で所得総額を割った額が課税対象になり、個人の所得に課税する場合より低い税率が適用される。

 例えば夫がサラリーマン、専業主婦、所得のない子ども2人の世帯をみると、今は所得控除を考えなければ、夫の課税所得が1000万円なら上限税率が33%で、税額は約180万円。フランス方式の世帯課税にすると、所得総額を3で割り課税対象になる1人当たりの所得は333万円に下がる。かかる税率の上限は20%で、世帯の税額は72万円に抑えられる。

 さらに子どもが3人なら、4で割るため、1人当たりの課税対象所得は250万円まで下がる。税率は10%が適用され、世帯の税額は60万円になる。子どもが多いほど所得税が軽くなる仕組みで、子育て世帯の税負担が減り少子化対策に役立つとされる。
Posted by TI at 2014年03月18日 18:45
自民党では独身に対する懲罰税制を検討していますし、消費増税分は高齢者福祉の維持に回されるわけですから、若年層の生活育児環境は悪化するばかりでしょうね。
独身税なんて貧困な独身者をますます追い詰めるばかりですから、自民党は本当に貧困層から収奪することしか考えていないということです。
Posted by ケン at 2014年03月19日 13:20
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