2011年10月13日

アンダーグラウンド

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『アンダーグラウンド』 エミール・クストリッツァ監督 仏/独/ハンガリー (1996)

奇才クストリッツァ監督の幻の作品が再上映されている。
サラエヴォ生まれの氏が、「祖国」ユーゴスラヴィアの50年の歴史を、強烈な音楽とブラックユーモアを交えて幻想的に描いている。
A・ゲルマン監督の『フルスタリョフ、車を!』の祝祭的なカオスと暴力性、そして岡本喜八監督の『血と砂』の音楽性とユーモアが思い出される。少なくともクストリッツァ監督は『血と砂』を見ているに違いない。
内戦真最中の1996年に公開され、カンヌ映画祭でパルム・ドール賞を獲得した、知る人ぞ知る名作。
DVDも入手困難になっており、この機会にぜひ見ておくようお薦めしたい。
私が行ったのは土曜日の午後だったが、ほぼ満席でかなりの人気。
期間も延長になり、10月28日(金)までになった。渋谷のシアターN。
以下、ネタばれ注意!



物語は1941年4月、ナチス・ドイツによるユーゴスラヴィア侵攻に始まる。
共産党員の詐欺師、愛国的な電気技師、美人の舞台女優の3人を中心に、ナチス占領下のパルチザン期、チトー期を経て、ユーゴ分裂後の内戦までを描く群像劇。
ナチス・ドイツによる侵攻に直面した主人公の2人は、家族や隣人のブラスバンドとともに広大な地下空間に潜伏し、武器製作に従事しながら、パルチザン活動を始める。
様々な戦い(デタラメで笑える)を経て、ドイツ軍を追い出すことに成功するが、詐欺師は手柄と女優を独占せんとして、「戦争はまだ終わっていない」と地下住人たちを騙し続ける。
いつしかチトーが死に、地下世界も崩壊して、みな散り散りになっていくが、今度は血で血を争う内戦が待ちかまえていた。

正直なところ、この映画の魅力を口で説明するのは難しい。
もの凄い真面目なテーマを、デタラメなストーリーと設定で、過剰なブラックユーモアと音楽にて味付けした感じ。
真面目と悲劇と喜劇とブラックの境界線のないカオス、その凄まじいパワーと容赦ないブラックぶりが、もうたまらない。
ブラックも強烈で、ナチスと連合国とNATOによる空襲・空爆をダブらせ、チトーらのニュース映像に主人公らを融合させるといった具合。「ユーゴスラヴィア人」の監督からすれば、ナチスも連合国もNATOも同じようなものということなのかもしれない。
何故か常につきまとうブラスバンドが大音量でさらにカオスとブラックを強調し、アナーキーな空間を演出する。
しかし、ロシア映画と違って暗い部分は微塵もなく、底抜けに祝祭的なので、見終わった後も「凄かった……」としか感想が出てこない。

ちなみに基本はセルビア語のようで、ロシア語が出来る人なら3〜5割くらいは分かる。私などでも濃ゆい東北弁や九州弁よりも何となく分かっちゃう感じだった。
あ〜来年失業したら、ベオグラード大学に教えに行くのも一つの手かな〜〜
posted by ケン at 13:12| Comment(0) | TrackBack(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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