2011年10月28日

暴力団排除条例のリアル

「暴力団排除条例の何故?」が相当な人気でリンクを貼られて読まれてしまったが、いささか一面的過ぎると自分でも思い直し、今さらながら補足したい。
裏事情は表に出ない点で重要なのだが、そこだけに焦点を当ててしまうと、それはそれで本質を見誤ってしまう。
ここで言う「本質」とは、暴力団そのものの問題である。
先の稿で私は、「暴力団の規模や被害が急増してるワケでもない」と述べたが、それはやはり東京という治安の良い首都に居住するものならではの見方らしい。
内々に警察庁の方から聞いた話は深刻だった。
まず福岡県警のHPを見て欲しい。

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「手りゅう弾を使用した犯罪が急増」
「手りゅう弾を発見した場合、絶対に踏んだり、触ったり、蹴飛ばしたりしない」


はい?ブービートラップ?バグダッド?
いやいやいや、ここジパングですよネ?

福岡は今年に入ってから凄いことになっていた!

3月5日、大手企業役員宅に対する連続爆発物投擲事件
4月6日、元暴力団員2人が乗った車で手榴弾が爆発、2人とも爆死
4月15日、暴力団事務所前の路上で手榴弾が発見
8月26日、暴力団組長宅に対する手榴弾投擲事件


他にも九電工敷地に対する火炎瓶の投擲事件などがあり、マンション駐車場や通学路における手榴弾の発見は何度もあり、住民避難も日常化しつつあるという。
さながら日本版『ハート・ロッカー』である。
なお、発見される手榴弾は米国製からソ連製まで様々だという。
中にはダミーの模造品が落ちていたのを小学生が発見・通報したケースもあって、住民の恐怖と混乱に拍車をかけている。

福岡は指定暴力団だけで5つもあり、事件の数もトップを競う。
8月までに起きた発砲事件17件のうち9件が福岡だという。
だが、今年に入ってからの事件の特徴は、九電や西部ガスといった普通の民間企業がテロ攻撃の対象になっていることだ。
もともと電力会社やガス会社などは昔からヤクザとの関係が深く、専門の担当者が置かれているほどだが、近年は警察の指導を受けて、暴力団との関係を見直す動きが加速していたものと思われる。この辺りの事情は、年末にでも地元入りした時に関電の人から話を聞きたいと思っているが……

他にも、用心棒代を払わないクラブを放火、みかじめ料を渋るパチンコ店を銃撃、下請けを拒否したゼネコンの建設現場に火炎瓶を投げ、暴力団排除運動のマークを掲げる飲食店に手榴弾を投げ込むといった事件が頻発している。
もはや『仁義なき戦い』ではなく『ハート・ロッカー』の世界である。
あまりもの事件の多さに県警の対応も後手に回ってしまい、手口の巧妙化も相まって、証拠が挙がらず、なかなか検挙に至らないのが実状だという。

問題は暴力化にとどまらない。
1991年に制定された、いわゆる暴対法によって、暴力団がショバ代や用心棒代を要求・徴収することは禁じられた。
だが、現実には直接的な要求をしなくなっただけで、暴力団のダミー会社が例えば観葉植物や絵画を不当な高額でリースし、飲食店から間接的にカネを搾り取る手法が定着している。
また、巧妙に細工されたダミー会社は、普通に金融機関から資金を調達できるので、それが暴力団に流れてしまう事態になっている。
暴力団排除条例は、こうした手口・経路を封じると同時に、暴力団が新たに事務所を構えることも抑え、あるいは自らが所有するマンションなどの賃貸を行えなくした。
先日引退表明した某芸能人のように、暴力団の威光をかさに業界を牛耳ることも難しくなったし、今後は芸能界の浄化も進んでいくだろう(紅白に出られる人が半分以下になるという話もある)。

ボスの地元近くでは、最近、行政書士会の会長まで務めた大物が逮捕されたが、それは警備会社の安全衛生担当者を偽装(虚偽)登録したという容疑だった。問題は、その警備会社を経営するのが女性社長で、どうやらその夫ないしは内縁の夫が暴力団員で、さらにはその社長は地元の県会議員のすぐ近くに住んでいて、その有力な後援者だったらしい。そして、この事件を挙げたのは、県警の組織犯罪対策課だった。
私のように東京に生まれ育ったものとしては、にわかに信じがたい話だったが、市議会議長からして入れ墨もので、市町村議員の研修会を開くとホテルの大浴場では華やかな絵柄を飾った背中がいくつも見られるという土地柄であれば、現代においても「当たり前」なのだろう。
警備会社なんて東京人からすると「警官の天下り・再就職先」というイメージしかないが、考えてみれば、戦前・戦後は用心棒の延長上にあるヤクザの領域だったのだ。
なお、福岡県警が県内の中高生に対してアンケートをとったところ、「暴力団は身近な存在か」との問いに対して、「とても身近」「どちらかといえば身近」と答えた生徒が39%に上ったという。これも東京ではちょっと考えられないイメージである。

だが、暴排条例は「警察vs.暴力団」の決戦の端緒に過ぎないともいう。
先鋭化した暴力団は、警察官の懐柔・買収に始まり、警察官の個人データベースを作成しつつある。そこには、本人の顔写真はおろか、行動範囲、家族の写真、住所、所有車の車両番号、ローンや借金の情報、人間関係などまで記録されているケースもあったと聞くから凄まじい限りだ。
言うまでもなく、かつてのKGBよろしく、警察の捜査員を「落とし」て協力させるためのネタである。香港の『インフェアナル・アフェア』そのものではないか。

やはり治安関係の闇は表も裏もあまりにも深い。
「暴力団排除条例の何故?」と読み比べて、どちらが「真実」だと思われるかは、読者の皆さんの判断に任せたい。
posted by ケン at 12:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 教育、法務、司法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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