2009年04月15日

少子化対策は規制緩和で

私は、少子化そのものは大した問題ではないと考えている。
少子化のリスクを過大評価する人たちの論拠は、主に「労働力の減少」と「社会保障制度が維持できない」にあるようだが、どうであろう。

今回の金融不況を見れば明らかなように、日本の労働力需要はすでに停滞しており、製造業はもはや衰退産業と化している。今、日本に必要なのは、本来の意味での(産業)構造改革であり、政府は労働力移転を政策的に進める努力をするべきだが、残念ながら日本の議員たちにそうした認識は希薄なように見られる。
日本には、女性や高齢者、あるいは若年層など、まだまだ潜在的労働力があるにもかかわらず、その発掘をしないまま、将来の労働力需要を過大に見積もっているのではなかろうか。

「社会保障制度が維持できない」というのも、一種のプロパガンダに過ぎない。
政府の収入が減るのであれば、過大な社会保障支出(特に高齢者向け)を抑制するか、あるいは増税するだけの話であり、「社会保障が国家を破産させる」というのは大ウソである。
過剰な増税は社会や企業の活力を奪いかねないので、最終的には高齢者福祉の切り下げで対応せざるを得ないと考えている。
ところが問題は、現代の日本では、若年層の投票率が極端に低い一方で(20代で20%台)、高齢者の投票率は非常に高い(60代で70%台)ため、常に高齢者層に手厚く若年層に手薄な政策措置がとられている。
今日の急激な少子化の遠因には、各世代の集団的エゴ(若者の政治的無関心と老人の自分チュウ)が存在し、むしろこのエゴが国家そのものを衰退に追い込んでいるように、個人的には思われる。ある意味では、民主主義の当然の帰結なのだが。
結論として、社会保障の質か市場の活力か、どちらかを犠牲にすれば、制度自体は維持可能である。

少子化の原因については、以前、「生活水準の向上」と「労働力需要の低下」から説明した。→ 人口経済学から見た少子化
が、どうも納得されない方が多いようなので、今ひとつ別の視点を提示しようと思う。

実はこれも以前に指摘したことなのだが
スウェーデン、ノルウェー、フランスなどでは、子どものうち婚外子の占める比率がすでに50%を超えている。
対する日本は、2003年で1.9%。ドイツは同年で26%、イタリアは02年で11%。
婚外子出生比率と出生率の相関関係は、かねてより指摘されている。
婚外子が多い北欧やフランスでは合計特殊出生率は1.7を超すのに対して、婚外子が少ないイタリア、日本、韓国では、1.4を下回っている。ちなみに日本は2006年で1.3、韓国に至っては1.1を下回る。

婚外子が少ないのは、伝統的価値観の強さから来る、社会的あるいは法的差別によるところが大きい。日本や韓国では、婚外子という理由で妊娠中絶を強要されるなどの事例が、いまだに後を絶たない。
日本の場合、まず戸籍に記載され、権利関係上で婚内子に比べ、大きく差別される。例えば相続では、婚外子は婚内子の半分しか権利がない。これは制度・政策上の差別である。
地域や学校などでの社会的(慣習的)差別も相当根強く残っている。
こうした差別が出産を抑制する大きな要因となっていることは、想像に難くない。
また、こうした社会では、「結婚しなければ、子どもがつくれない。まず結婚を。」という結論になるが、過酷な労働環境と賃金水準の低下が、結婚を抑制させると同時に、結婚年齢を上昇させ、それが出産数を低下させることになる。

「できちゃった結婚(でき婚)」の多さは、日本の婚外子差別がいかに幅広く、根強いかということを示している。裏を返せば、婚外子差別がなければ、そもそも結婚しなかったカップルは相当数いると考えられる。
これを経済学的に捉えるなら、現代日本では、子どものいない結婚は相対的にリスク高だが、子どもができた瞬間に結婚の(消極的)リターンがリスクを上回る、という説明になる。少なくとも、多くの日本人は感覚的にそう捉えているのではなかろうか。
分かりやすく言えば、子どもがいない場合、結婚するメリットがあまり感じられないものの、ひとたび子どもが出来ると、非婚のままでは様々な不利益を被るため、結婚に踏み切らざるを得なくなる、ということであろう。

「生産手段の共有と生活環境の効率化」という結婚の経済的価値は、資産や収入が多ければ多いほど高まるものであって、資産・収入の少ない者にとってはメリットが少なく、生産性の低いパートナーと結婚した場合、逆に負債にしかならない。
貧者が結婚すると、生活上の固定費ばかりが増え、パートナーが労働に従事できなくなると、一気にそのツケが回ってくることになるが、教育弱者はそうしたリスク計算や将来設計のできないために、感情にまかせて結婚し、破綻していく事例が多い。養育コストも上昇しているため、収支計算なしで子どもをつくると、一層財政破綻に近づいていく。

以前テレビを見ていて、派遣社員の夫が突然失職し、病気がちの妻を抱えて苦労するという話をやっていたが、市場価値の低い男性はより市場価値の低い女性としか結婚できないし、生産性の低い女性と結婚するために、ますます貧困が深化するという象徴的な話であろう。私的には、「こんなの男の自己責任じゃねぇか。ビンボーな女と結婚すりゃますます貧乏になるなんざぁ当たり前、自分一人のことならコンビ二バイトでもして何とか糊口をしのげたろうに……(サッサと別れりゃそれで終わりじゃん=男はフリーター、女は生活保護)」と思ったものだが、さすがに政治の現場ではそうも言えない。
また、人間がいかに不合理な生き物で、それ故に教育の充実が重要であるかを物語っているとも言える。文学的には、こうした不合理こそが人間性の発露であるということになる。

生活水準が向上するとともに、結婚の初期費用が高騰するとともに、生活費も上昇するが、生活費は固定コストなので、そう簡単には削減できない。また単身であれば、コスト削減も一人の判断でどうにでもなるが、パートナーがいるとコスト削減には交渉・協議が必要となり、より難しくなってしまう。

高等教育、特に経済学を修めた者は、容易にコスト計算できるので、結婚のメリット・デメリットを考え、子どもが出来た場合のコスト増と世帯収入を考慮した上で、出産調整をすることになる。また、高等教育出身者は相対的に収入が多いため、生活水準も高く、それを落としたくない、あるいは子どもにも自分と同等以上の教育を受けさせたいという希望が働くため、出産を抑制する傾向が強い。

ところが、中等教育以下しか修めていない者は、生活コストや家計を計算したり、将来設計したりする習慣がないため、結婚や子どもの長期的な収支計算を考えることなく実行に移してしまう傾向が強くなる。
また、高等教育を受けていないものは相対的に収入が低く、教育に投資する発想が弱いこともあって、出産に対する抵抗が弱くなりがちになる。
「でき婚」が圧倒的に教育弱者層に多いことが、これを証明している。
しかし他方で、結婚の初期費用や維持コストが高騰しているため、結婚できない層が増えると同時に、出産数も減少するところとなっている。

以上のことを考えた場合、政策的には2つの少子化対策が考えられる。
一つは、高収入層へのアプローチ。教育費負担の大きさや、出産に伴う女性(母)の就業機会の減少が、出産抑制につながっていると考えた場合、中等・高等教育における教育費補助の増額や、育児休暇取得後の地位・収入保障の厳格化などが考えられる。
しかし、私立の高校や大学に通う層に対して、さらに税金で補助する政策は、有権者の理解が得られないと思われる。

私が推奨したいのは第二の案。
「子どもは欲しいが、結婚は難しい」という層は今後もさらに増えていくだろう。
格差拡大と生活費上昇で、結婚の前提条件の整備がますます困難になっていくからである。
つまり、「結婚しなければ子どもが産めない」という規制が強すぎて、出産を断念しているわけだから、「結婚」という最大の規制を取っ払って、「誰でもいつでも好きな時に子どもが産めます!」という状況を政策的に創り出せばよいのだ。
「子どもは婚姻者の特権(非婚者の子どもは差別される)」という既得権益を廃し、出産市場の自由化を実現する、ということである。
さらに悪辣な政策を考えるならば、避妊具や中絶手術に課税することで、出産回避を抑制させることも可能だろう。もちろん推奨されるのは、保育所の整備や児童手当の充実であろうが。
社会的育児支援だけ充実しても、入口で「結婚しないとダメ」と言われるために、出産抑制が強いと、私はみている。

「結婚しなくても誰でも子どもを産めるし、差別もされない」という社会環境を整備しつつ、社会的育児支援を整備していけば、出生率は一定程度の回復を見込めるだろう。
「(若い人が)結婚しないから、子どもが増えない」という政府の見解は、「パンがなければケーキを食べればいいじゃない?」と言ったマリー・アントワネットと同じなのだ。
少子化対策はまったく難しくない。ただ結婚制度を廃止すれば良いだけなのだが、行政も立法も結婚の既得権益層が権力を独占しているために、規制緩和がなされないだけの話。
要するに、誰も本気で少子化対策に取り組もうなどとは思っていないのだから、既得権益層を優遇するような少子化対策はすべて中止して、通常の児童福祉と教育に予算を回すべきである。
そして、政府とマスコミは無用な煽動行為を慎まねばならない。
結婚はブルジョワジーの特権であり、貧者に結婚を奨励することは貧困と社会不安を一層深刻なものにするだけであろう。
posted by ケン at 22:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治、社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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