2015年01月06日

ジェネレーション・ウォー

2013年に制作されたドイツのTVドラマだが、そのクオリティは完全に映画水準。
『バンド・オブ・ブラザーズ』『ザ・パシフィック』に続く系譜と銘打たれてはいるものの、ドイツ人の視点である上、兵士以外の従軍看護師や弾圧されるユダヤ人など、銃後の人間像も十分に描かれているため、同様の作品を期待すると外す可能性はある。

1941年の6月から45年5月までの4年間を、歩兵として出征する兄弟、従軍看護師となった少女、歌手を目指す少女、ユダヤ人であることに誇りを持つ仕立屋の若者の、5人の幼なじみの視点から独ソ戦と戦時中のベルリンが描かれている。90分×3話で4時間半という長さだが、5人分の視点から4年が描かれるため、むしろ展開が早く感じられる。やや「盛り過ぎ」の観はあるものの、見終わってみれば見事なバランスとも思われるので、その辺は岡本喜八の『沖縄決戦』みたいな感じかもしれない。

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『ジェネレーション・ウォー』(原題は「我らの母、我らの父」) フィリップ・カデルバッハ監督 ドイツ(2013)



以下、ネタバレ注意!

制作費に16億円という、ドイツでは「あり得ない」巨額が投じられているだけに、そのオープンセットは完璧に東部戦線の戦場とベルリンの街並み、そして廃墟を再現している。このセットを見ているだけでも凄いと思えるだろう。
戦闘シーンが全体に占める割合は少なめであるものの、その再現力は確かに『バンド・オブ・ブラザーズ』『ザ・パシフィック』に匹敵する迫力があり、ドイツ兵にとっていかに東部戦線が地獄であったかを「これでもか」とばかりに思い知らせてくれる。特にソ連の狙撃兵、地形を利用した地雷、誰が敵か分からないパルチザンといったものは、従来の映像にはあまり見られなかったものであるだけに興味深い。また、「スターリンのオルガン」を浴びたドイツ歩兵の恐怖も再現している。冬将軍や泥濘、低湿地といった東部戦線の「地獄」も良く描かれており、本で読んだことがあるだけの日本人にとっては大いに勉強になるだろう。
一般的には「ドイツと言えば戦車」なのだろうが、本作では「戦車の支援が受けられない歩兵」が主人公であり、日本軍ほどではないにせよ、ドイツ軍においても歩兵からすれば「戦車戦なんて別世界の話」だったに違いない。

本作のもう一つの圧巻は、パルチザン戦やユダヤ人狩りに象徴される東部戦線の描写だろう。二次大戦期、ソ連はジュネーブ条約に加盟していなかったため、戦時捕虜の待遇についての国際基準が適用されず、独ソの双方で凄まじい捕虜虐待が行われた。また、パルチザン戦では、「パルチザン狩り」と称して占領地の市民に対する殺戮が横行していた。
特に興味深いのは、作中の台詞などでは全く説明が無いものの、タバコを吹かしながら「ユダヤ人狩り」を命令する親衛隊長の下で、その手足となって働く民兵らしき者たちがウクライナ民警を示す腕章をしている点である。『ソハの地下水道』でも描かれているが、よく作り込まれている。
また、後半に出てくるポーランド国内軍(AK、パルチザン)のユダヤ人に対する対応も非常に辛辣に描かれており、東部戦線の複雑な事情を察するに十分であろう。ただ、一定の知識が無いと訳が分からない可能性はある。
全体の分量からすると、ユダヤ人やパルチザンを扱う部分が多いように思われるが、そこはドイツ人の良識と歴史的公平性が加味されているのかもしれない。確かに最前線の戦闘を見せるだけでは東部戦線の歴史を語るには全く不十分であるのは間違いないからだ。
その意味では、1945年におけるソ連軍の暴虐ぶりも描写されており、誰に対しても全く容赦の無い地獄絵図が再現されている。

総評としては、確かに盛り込みすぎではあるものの、決して過剰では無く、見終わってみれば見事なバランスの大河ドラマであったことに感動を覚えるだろう。映像も演出も申し分なく、独ソ戦の実態をどこまでも冷徹に描いている。日本の戦争映画の大多数のような感情過多、一方的視点というのは微塵も感じられず、逆に現代日本人の多くは「ドイツ人は自虐的だ」と思うかもしれないほどだ。日本の映画人やドラマ制作者は本作をこそ見習うべきだろう。
「現代版コンバット」のような『フューリー』を見た後なだけに、「ドイツ人偉すぎる!」と思った次第。何度でも、数十年を経ても視聴に耐えられる歴史的な作品と言えるのでは無いか。

【参考】
独ソ戦の裏面史 
食糧安保から見た独ソ戦 
・レーベンスラウムのツケ 
posted by ケン at 12:59| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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