2015年03月31日

統計の罠と日本の貧困

『中央公論』4月号の特集は「ピケティの罠〜日本で米国流格差を論じる愚」。ピケティ氏の著作が高額大部にもかかわらずバカ売れし、メディアはもちろんのこと国会でも取り上げられるに及び、経済右派が反撃を試みているのだろう。だが、その「反撃」の基調は「フランス人に日本の何が分かる!」という類いのお粗末なもので、「こいつらよく恥ずかしげも無く学者面できるな〜」というのが率直な感想だ。

同誌特集における議論の基調は、ピケティの統計調査を補佐した一橋大・森口教授の「日本の所得上位10%は年収580万円」という主張で、米国の「1335万円」(1ドル119円換算)に比べると日本の格差状況は非常に緩いという主旨になる。
だが、厚労省の「国民生活基礎調査(2012)」を見ると、平均所得は548万円、中央値は432万円で、所得上位10%は1千万円強、所得600万円以上は33.6%となっている。
これは森口氏の数字が税務調査に依拠していることによるらしいのだが、どちらが肌感覚で現実に即しているかは一目瞭然だろう。どう見ても「ピケティの罠」ではなく、「統計の罠」だ(笑)

「格差」を見る場合、個人的には所得よりも保有資産を重視すべきだと考えている。例えば、貯蓄ゼロ世帯の割合を見た場合、2000年には12.4%だったものが、2014年には38.9%へと3倍以上に増えている。ところが、2014年「家計の金融行動に関する世論調査」見ると、2人以上世帯の平均貯蓄額は1182万円と前年比81万円増で過去最高を記録している。これも、金融資産を保有している世帯だけに限ると、中央値は500万円で前年と変わらない数値になっている。
さらに続けると、金融資産を保有している世帯において、金融資産残高が1年前と比較して「増えた」と回答した割合は41.3%、逆に「減少した」と回答した割合は24.5%となっている。これはアベノミクスによる株高による影響が大きいと考えられるが、老後・将来不安に起因する貯蓄衝動の高さも影響している。

他の指標も見てみよう。家計環境が厳しい家庭の小中学生に、学用品や給食代などを援助する「就学援助制度」の支給対象者の割合は、2000年には8.8%だったものが、2012年には15.6%へと増えている。この数字は大阪市に限ると28%にも達しており、子どもがいる家庭の4分の1以上が文具を買えず、給食費も満足に払えない状態にあることを示している。

もっと分かりやすい数字として生活保護受給世帯数がある。2000年に75万世帯だったものが、昨2014年末には161万世帯へと激増している。政府などの説明では、高齢化の進展に伴う無収入高齢層の増加が主要因とされることが多いが、就学援助受給世帯数の増加を考えれば、貧困化が高齢層に限った話でないことは明らかだ。
また現実には、生活保護の捕捉率(生活保護水準以下の人に対して実際に受給している人の割合)は、25%前後と言われている(もっと低い数字もある)。これはつまるところ1千万人近い人が生活保護受給ライン以下の生活を余儀なくされ、700万人近い人が「生活保護受給水準以下の収入しかないけど生活保護を受けないで我慢している」ことを意味する。
米国ではフードスタンプの受給者が5千万人を超したと言われるが、日本もその一方後ろを歩んでいるに過ぎないと言えるだろう。

「格差」と言うと定義や解釈が難しくなりがちだが、日本で貧困化が急速に進むと同時に階級の固定化が進んでいることはほぼ間違いない。
posted by ケン at 12:24| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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