2015年11月16日

大阪の選挙協力が意味するもの

【共産・志位委員長、大阪ダブル選での自民共闘「矛盾なし」「住民自治優先」と強調】
 共産党の志位和夫委員長は7日のテレビ東京番組に出演し、府知事・市長の大阪ダブル選で自民党推薦候補を支援していることについて「大阪の民主主義と住民自治を取り戻すことが最優先だ。その大義で協力することは矛盾でもなんでもない」と述べ、国政で対峙する自民党との共闘で大阪維新の会の公認候補と対決することに問題はないとの認識を示した。
(11月7日、産経新聞)

国政選挙では「反自公」で選挙協力と連立政権を前面に掲げるNK党が、大阪では自民党と組んで「反維新」に勤しんでいる。戦略的には十分「アリ」なわけだが、倫理的あるいは政策的、ないしは長期的にはどうなのだろうか。民主党としては、このような政党と組むことが果たして良いことなのかどうか。

歴史的に見た場合、「倒幕」を理由に同盟した薩長は、維新後に内紛を起こし、西南戦争に繋がった。内治派の長州と薩摩・大久保に対し、薩摩・西郷らが外征論(革命輸出)を唱えたことに起因する。それ以前に、倒幕を唯一絶対の目的とした結果、武力行使が優先され、外交交渉による解決を唱えた坂本一派が粛清される事態を招いている。戊辰戦争と西南戦争を軍事力で解決した結果、明治体制下における軍部の地位が相対的に上昇し、軍事志向が強まったことは否めない。

「野合」の最大のケースは第二次世界大戦のそれかもしれない。反共の英米と反資本主義のソ連が、「反ファッショ」を理由に同盟した結果、戦後の国連と冷戦体制を生み、東西対立に起因するドイツ・朝鮮の分断を実現した。日本はたまたま国土・国民を分断されること無く、西側陣営に属することができたため、戦後の繁栄を謳歌したが、歴史的には極めて偶然性の高いことだった。
そのソ連が過剰な軍事国家となったのは、ロシア革命時に日本を含む列強諸国が「反革命」で野合して軍事介入したことに起因しており、ソ連は崩壊までの70年間、そのトラウマから脱却できず、ついには現代ロシアまで引きずっているところがある。
同じく「反ファッショ」で野合したスペイン内戦の場合、「フランコ軍と戦うため」と称して共産党が他陣営に対する粛清を開始し、陰惨な結末を迎えている。

大阪の話に戻そう。大阪の場合、もともと「自公共・解同」による癒着・汚職構造が強固に存在し、政治・行政改革を許さない状況が長く続いていた。そこに橋下氏が登場して「アンシャン・レジーム」の打破を訴えたところ、利権構造外にあった中間層・無党派の支持を得て当選した。橋下派は議会対策上、KM党を取り込んで、その利権には手を付けずに、自共・解同の「既得権益」にメスを入れるが、それに対して「自共・解同」が協同して「反橋下」掲げて対峙、現在に至っている。
「自公共・解同」による癒着・汚職構造を放置したまま、「橋下ケシカラン」と言ってみたところで、大阪市民や大阪府民の理解を得るのは難しいだろう。逆に「自公共・解同」という枠組みを支持するということは、単純に「反橋下」を意味するのでは無く、「アンシャン・レジーム」を黙認するものでもある。故に、政策的あるいは政治倫理的には、「橋下改革は支持できないが、アンシャン・レジームもイヤだ」というなら、「第三の道」を掲げるべきなのだ。
それを、NK党の「民主主義と住民自治を取り戻すことが最優先」という主張に乗っかって協力してみたところで、橋下体制は打倒できるかもしれないが、それは決して府民・市民の幸福を約束するものではない。

それは国政でも同じである。確かに今の自公政権は著しく権威主義的で、デモクラシーを破壊しつつあるとすら言える。だが、そのために同じく本質的にデモクラシーを否定し、権威主義体制を志向するNK党と手を組むことは、短期的には一定の成果を上げるとしても、長期的にはマイナスにしかならない。
私的に全く理解できないのは、「民主党はNK党と協力しないと市民の支持を失うだろう」という「有り難いアドバイス」である。ナゾ過ぎるのは、こういう主張をする人たちは素直にNK党に投票すれば良いだけの話であるはずなのに、わざわざ民主党員に「協力」を呼び掛けている点である。
民主党の支持率が伸びないのは、党のスタンスと政策が不明瞭で、菅・野田路線を引き継ぐ岡田路線が「自民党の二軍」でしかないからであって、決して「NK党と協力しないから」ではない。そもそも、「左翼全体主義者と手を組まないと右翼権威主義に勝てない」党なるものは、有権者からその必要性を十分に認められていないだけの話ではなかろうか。
野党共闘するにしても、党の戦略方針を確立し、目標を明確にしなければ、ただの野合になってしまう。それが表面化したのが2009年の総選挙と鳩山内閣だったことを思い出して欲しい。ただ、今の民主党には、07年の参院選や09年の総選挙を推進するような動力源(例えば小沢氏)もなければ、支持する世論も無いだけに、現実には市民運動家が期待するようなものは実現しないとみられる。

私は別に難しい話をしていない。「安倍はイヤだ」「民主党は頼りない」と言うなら、「どうぞこぞってNK党に投票してください」と応じているだけだ。我々は、あくまで中道政党として自力救済の道を模索するのみである。
posted by ケン at 12:46| Comment(5) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大阪市長選で自民党候補を支援しているのは共産党だけですか?
違いますね、民主党も支援しているんじゃないですか?しかも、国政では自公政権と対立しながら地方選では自公と相乗りすることに関しては、共産党より民主党の方がはるかに多くの事例があるはずですが。私の住む東京でも、民主党はだいたい自民党と相乗りしていませんでしたかね。

大阪に関しては、維新と安倍政権は明らかに近い関係であり、むしろ安倍政権と大阪の自民党の間のほうが隙間風が吹いている。それを考えれば、「反安倍」を基準に考えれば、自民候補相乗りは選択肢としてそんなに外れてはいないと思いますしね。
Posted by 旧式左翼くずれ at 2015年11月16日 17:53
自力救済を首を長くして待っています。核になる人はどの人なんでしょう。どのあたりの動きを見ていれば良いのでしょう。ご教示いただけると投票者としては助かります。
Posted by hakoniwa at 2015年11月17日 08:53
大阪市長選における民主党の対応は曖昧で、本部は中立を掲げ、府連は「無言で支援」というものです。
府知事選にしても、市長選にしても、反橋下候補は苦戦しているようですが、いくら共産党でも党員に自民党の市議や県議に投票しろと言っても難しいのでは無いかと思われます。逆も同様でしょう。
つまり、大阪の世論の大勢は「都構想はどうでもいいけど、アンシャンレジームはイヤだ」というものだろうと見ています。

「自力救済」については核になれる人がいないのが最大の難点で、だからこそ殆ど進んでいないわけです。動きがあれば、本ブログでまた報告させていただきます。
Posted by ケン at 2015年11月17日 13:05
冷戦脳に凝り固まったヒトには見えてないと思いますが、橋下も翁長も、その原動力はナショナリズムでしょう。民主党は、自ら一丁目一番地と位置づけていた地域主権をかなぐり捨てて、財務省の走狗となってしまいましたから。
Posted by 犬公方 at 2015年11月25日 21:15
橋下氏と翁長氏のナショナリズムでは、発露の仕方がかなり異なるように見えます。また、橋下氏の場合、地域ナショナリズムを利用しているだけのようにも見えます。

民主党は変に「よい子チャン」を演じて、グローバリズムを訴えるので、大衆に対して訴求力が全く無いんですよね。
Posted by ケン at 2015年11月26日 12:52
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