2016年04月28日

焼け石に水の保育士給与増

【<保育士>月給2%増、総活躍プラン明記へ…政府・与党】
政府・与党は、保育士の給与について月額2%の引き上げを盛り込む方針を固めた。5月中にまとめる「ニッポン1億総活躍プラン」に盛り込む方向だ。さらに、給与水準を他産業並みに引き上げることを念頭に、「競合する職種との賃金差をなくす」と明記する。保育士の給与を改善することによって保育士不足の解消を図るのが狙いだ。保育士の平均給与は約22万円で、全産業平均の約33万円より約10万円低く、特に物価の高い都市部では、低賃金を理由に保育士を離職する人が多い。一方、保育士資格を持ちながら離職している人は約70万人に上るとみられる。政府は2017年度末までに、保育施設を50万人分増やす目標を掲げており、保育士は約9万人不足するとされる。給与改善策により保育士が離職するのを防ぎ、資格のある人には保育職場に出ることを促したい考えだ。政府・与党は月給を2%(4000〜5000円)上げるために約400億円の財源を確保する方向で調整している。ただ、消費税率10%引き上げが見送られた場合は再検討する。
(4月16日、毎日新聞)

保育士の給与が22万円から5千円増えたところで、「5千円増えたから、また保育士やろうかな」と思う者がどれだけいるだろうか、という話である。この給与であれば、派遣社員をしている方が労働環境的にはるかに楽であり、むしろ全体的な人手不足の中で派遣単価が上がっているだけに、「派遣の方がずっと良い」という状態になっている。

保育士の資格取得者が70万人も同職に就いていないのは、「給与の低さ」の他に労働環境の劣悪さがある。特に近年、早朝保育や延長保育が普及しており、早番だと朝5時出勤や6時出勤で15時まで、遅番だと10時から20時、11時から21時という勤務体系になっている。しかも、恒常的な人手不足から定時では退社できないケースも多く、かつ残業してもサービス残業にされてしまうことが非常に多いといわれる。この辺は、十分に実態調査されていないため、そのブラック性が殆ど知られていないことも、資格者の離職を促進している。「都合の悪いことは調査しない」というのは、東西を問わず権力に共通するものだが、日本ではその傾向が著しい。

要は保育時間を「9時〜5時」で限定して、勤務時間の安定を図れば、たとえ給与を22万円に据えたとしても、保育士の安定確保は可能だろうと考えられる。
逆に早朝保育を実施するなら、「早朝労働」の市場価格に対応した保育料を設定して、保育士の給与に反映させる必要がある。だが、現実には保育料は実質的に公定価格であるため、早朝や延長保育の価格は相場よりも著しく低く抑えられているため、結果的に保育士の給与にも反映されず、そこを公費負担で補おうとするため、税金で400億円補填するという話になっている。

この問題を解決するには、二つの選択肢がある。一つは、6〜9時と17時以降の時間外保育の保育料を5割増しとか10割増しにするというもの。これによって、時間外保育の利用者そのものが減り、保育士の時間外勤務を減らせると同時に、給与増の原資ができる。もう一つは、時間外保育そのものを大きく規制し、同時に子育て中の勤労者に法律で「保育時間」を保障、キャリア上の不利とならぬようにすることである。
そもそも長時間保育を余儀なくされている、日本の労働環境そのものが著しくブラックである上、小さい子どもを長時間、閉鎖空間で複数の他者と同室させることも、情操教育上大いに問題がある。

焼け石に水の改革はむしろ害悪でしか無い。
posted by ケン at 12:20| Comment(3) | 財政、社会保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
役所で9時から17時まで働いて有給も使え手厚い福利厚生得ている職員の給料を考えると、お金のかけるべき所が違うとおもいますね
Posted by 石田 博 at 2016年04月28日 19:34
これは保育所だけの問題では無く、夜半や早朝、あるいは病児をも預けるしか無い、日本人の労働環境にも問題があるのです。
Posted by ケン at 2016年04月30日 09:40
確かにそうだと思います、ある意味企業側に及ばないように保育所だけに鉾をそらしているのではと勘ぐってしまいます
Posted by 石田 博 at 2016年05月06日 12:37
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