2016年06月03日

消費増税を延期するコストについて

【<消費増税再延期>財政再建、目標困難 厳しい歳出削減必至】
 安倍政権は消費税増税の再延期を決める一方で、2020年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を黒字化するという現在の財政健全化目標は維持する方針だ。20年度の収支には増税分の税収が上積みされることを見込んでいるためだが、実際には年間の税収増加分の一部は20年度に反映されないこともあり、ただでさえ厳しいとみられていた目標の達成はより困難になったとの見方が強まっている。
 財政健全化の指標であるPBの赤字額は15年度で16.6兆円に上るが、政府は消費税増税などによる黒字化を目指してきた。安倍政権が19年10月を延期後の再増税実施時期に選んだのは、20年度には1年を通じて増税効果が得られるようにして目標達成を狙ったとみられる。しかし、消費税は消費者が支払った分を企業がいったん預かってから国に納付するため、増税時期と、実際に税収に反映される時期にズレが生じる。企業によって納付時期も回数も異なるため、20年度の税収には増税分がすべては反映されず、満額より数千億円目減りするとみられる。
 また、14年4月に消費税率を5%から8%に引き上げて以降、個人消費の低迷が続いている。次回の増税までに個人消費が上向く環境を整えられなければ、再増税で消費がさらに冷え込み、思うように税収が伸びない可能性もある。ただでさえ政府の財政健全化目標の達成はハードルが高かった。内閣府の試算では17年4月に増税したうえで、国内総生産(GDP)の成長率が名目で3%以上、実質で2%以上だったとしても、20年度に6・5兆円の赤字が残る計算だ。麻生太郎財務相は31日の閣議後の記者会見で、20年度のPB黒字化目標について「最大限努力していく姿勢に変わりはない」と表明。財政の信認を維持するために目標達成を目指す意向を示したが、再延期で健全化の道筋がさらに不透明になったことは間違いない。
 政府は、消費税増税分の税収を年金や介護など社会保障政策に充てる予定としているが、今回の延期でそれらの政策に充てる財源の確保も課題となる。介護や子育て支援などを盛り込んだ「1億総活躍プラン」など安倍政権が掲げる重要政策の実施についても、財源問題が重くのしかかりそうだ。
(5月31日、毎日新聞)

現状、歳出が税収の2倍近くになっていて、基礎的財政収支でも16兆円以上も赤字という中で、増税を先送りするということは、現役層の苦痛を逃れるために将来の安寧を抵当に入れてしまうことを意味する。
今回の増税を2年半延長すると、10兆円以上の財政赤字になるが、安倍政権は、赤字国債を発行しない方針。だが、自民党権力の源泉である公共事業と軍事は削減できないため、社会保障や教育を切り詰めるほかない。

政権側は「国民の7割が増税延期を支持」と正当化するが、増税を喜ぶ者は誰もおらず、延期することで起こりうるマイナス面を説明せずに、「国民の支持」を掲げるのは衆愚政治でしかない。言うなれば、借金のデメリットを説明せずに、学生に「奨学金」を貸し付ける大学と同じだ。
増税先送りを喜ぶ代償が、国債暴落のリスクと緊縮財政であることは、マスゴミは指摘しない。この点、増税先送りを支持する我が社も同罪だろう。日本の国債評価は、消費増税を前提にギリギリの水準が維持されてきたが、今回の延期で一気に格付けが下げられると見るべきだ。その国債は今や日銀が大量に抱え込んでおり、「死なばもろとも」状態になっている。
さらに安倍政権は、秋の臨時国会で大型補正予算を組んで財政出動する方針を示しているが、同時に物価が下落しないように日銀がさらに国債を「大人買い」すると見られ、国債暴落のリスクはますます高まってゆくだろう。

ソ連学徒としては、市場経済化が必須であることを知りながら、パン一つ値上げできず、自由価格率わずか5%で政権を崩壊させてしまったゴルバチョフが思い出される。
ペレストロイカは、指導層の掛け声や、西側社会からの評価に比して、全く進んでいなかった。具体例を挙げると、1989年時点で企業の民営化率は1%、90年時点で商品の自由価格率は1割に遠く及ばなかった。1990年予算で歳出に占める食糧価格調整金(補助金)の割合は20%、コルホーズを始めとする国営企業補助金が20%、軍事費が15%超という有様だった。
ミクロで見ても、1954年から90年に至るまでパンの公定価格は一切変わらなかった(70コペイカから1ルーブル)にもかかわらず、独立採算制の導入や政治的理由から労働賃金を上げ続けた結果、貨幣の過剰滞留現象が起き、潜在的インフレーションを表面化させていった。また、生産価格を無視した公定価格を維持するために、国庫から際限なく補助金が出された結果、歳出に占める食料価格調整金の割合は20%にも達していた。このことは、ゴルバチョフ政権が食糧の公定価格制度に全く手を付けられなかったことを示している。大御所が指摘するところの「社会主義離れ」とは裏腹に、現実は全く「社会主義離れ」ができなかったのだ。
(【事前ノート】ペレストロイカを再検証する

ペレストロイカ末期のソ連を見た場合、計画経済から市場経済に移行する中で、原油価格の低下もあって歳入が低下し続けた一方、歳出の中で大きな割合を占める食糧価格調整金、国営企業補助金、軍事費の削減は急務の状況にあった。にもかかわらず、ゴルバチョフ政権は国内世論(支持)に拘泥して、パン一つ値上げすることもできず、財政破綻を招いて政府機能を停止させてしまった。改革を強行するために強権を発動しようと、右派と手を組もうとしたところ、逆にクーデターを起こされたというのが、1991年8月19日の真相だった。ゴルバチョフの失敗は、「宿題」を先送りにすると、手痛いしっぺ返しをくらうことを示している。

だが、社会主義経済の体制転換は全て失敗したわけではなく、例えばハンガリーの場合、1990年時点で、自由価格率は80%を達成しており、企業民営化も「遅い」との非難を浴びつつも20%に達していた。そのため、ハンガリーでは、他の東欧諸国で見られた大行列の類いは殆ど起きること無く、市場経済と民主化を達成している。
また、中国では農産物の自由価格・流通を先行させて、90年時点で農産物のほぼ全てが自由化されていたため、やはり行列の類いは発生していない。

ゴルバチョフ政権は歳入不足を西側からの融資で賄ったが、その数少ないチャンスを消費財ではなく、生産財の増産投資につぎ込んでしまい、結果的にそれらは経済に全く寄与せず、無駄にしてしまった。
今回の日本も同じ過ちを犯そうとしている。歳入不足を日銀に国債を買わせることで補い、その資金を大型の公共事業に投じるわけだが、現行のインフラを維持することすら難しくなっている中で、さらに固定維持費を増やすだけで、まず経済に貢献することはないだろう。

安倍政権になって、年金基金の株式運用比率が2倍に増え、今では約5割が株に投じられた結果、上場株の約8%が「国家保有」となってしまっている。このことも、誰も指摘しないが、ケン先生的には「国有化が進んでいる!」とニヤニヤしながら見ている。
にもかかわらず、「リーマンショック並みの危機が近い」ということは、株も年金も同時に失われてしまう恐れがあることを、自ら暴露してしまっている。しかし、政府の従属下にあるマスゴミは全く報じない。当然ながら、株式運用比率を上げた責任は誰も追及しない。
民間株を国家が保有するということは、国家が株主となって会社に対して影響力を行使できることを意味するが、現実に年金機構が株主としての責任を果たすとは考えられず、「経営の自律性を疑わない、経営側に都合の良い株主」になってしまう恐れが強い。これは、ソ連型社会主義下における国営企業と同様、放漫経営を放置する温床になることを意味するが、この点も誰も指摘していない。

増税先送りは、私のように子どもがおらず、健康も優良なものにとっては有り難い限りだが、そのツケは巨大な財政赤字と国債暴落のリスクとなり、さらに社会保障と教育予算の大幅カットとなって遠くない将来、現れるだろう。敗戦直後の日本やソ連末期を他人事のように考えている老人どもは、子や孫の世代から永遠に恨まれてバカ扱いされるに違いない。

もちろん、ケン先生は、先祖の例にならって、自分の資産をゴールドに換えて防衛するのだが。何より権力者たちが率先してタックス・ヘイブンを利用していること自体、彼らが現状維持すら困難であるという認識を持って、逃亡準備していることを示している。少なくともスターリンは、最終的にモスクワから退避しなかったのだから。

【参考】
預金封鎖は他人事じゃありません 
日本人と財産権 
posted by ケン at 12:39| Comment(0) | 財政、社会保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: