2016年06月25日

英国でもエリート不信

【英、EU離脱へ=欧州分裂、大きな岐路に―残留派に僅差で勝利・国民投票】
 英国の欧州連合(EU)残留か離脱かを問う国民投票は、23日午後10時(日本時間24日午前6時)から全国382カ所の開票所で開票作業が行われ、BBC放送によれば、離脱支持票が僅差で残留支持を上回り、過半数に達する見通しとなった。この直撃を受けた東京外国為替市場は大混乱に陥り、「安全資産」とされる円に投資家の資金が逃避。一時1ドル=100円を突破した。英ポンドは売りが売りを呼ぶ暴落状態となった。日経平均株価も一時1300円を超えて暴落した。
(6月24日、時事通信抜粋)


先にフランスにおけるエリート不信の問題について書いたが、英国でも同様の問題が噴出している。
今回の国民投票では、保守党も労働党も党内で議論が分かれ、残留派と離脱派に分かれて双方がののしり合いを展開、党員や市民の政党離れを加速してしまっている。
政党に関係なく、主にエリート層が残留を主張し、「EUを離脱すれば英国は経済破綻して、生活はドン底に」的な脅迫じみたプロパガンダを展開してはみたものの、十分に浸透せず、逆に「金持ちがあれだけ残留を主張しているということは、貧乏人にとっては離脱の一手だ」というエリート不信を加速、離脱派をむしろ後押ししてしまったように見受けられる。

実際、貧困層からすれば、EU加盟に伴って東欧出身の労働者が急増して賃金が低下、さらにアラブからの難民が増えて、低賃金雇用すら危機にさらされている。貧困層を直撃している危機に対し、エリート層は十分な対応策を打ち出せず、むしろ緊縮財政を進めることで、同層をますます追いつめてしまっている。
結果、貧困層からすれば、「EUから離脱したからといってすぐさま生活が良くなるわけではないかもしれないが、少なくともEUに残留し続けるよりはマシだ」ということになっている。これに対し、エリート層は、「離脱すれば、GDPが10%低下し、物価は10%上がる」などと呼びかけるが、貧困層からすれば、「困るのは金持ちであって、財産の無い俺らじゃない」と応じるだけの話で、コミュニケーションが成り立たなくなっている。

ところが、現実には英国はユーロを採用しておらず、独自通貨であるため、混乱はあるにせよ、政治要因であるため一過性に終わるものと考えられる。関税については、新たに条約を締結するコストは掛かるものの、EUが英国を排除する特段の理由もなく、現行に近い低関税になるだろう。エリートが忌避するのは、新たに発生する交渉コストであって、それは貧困層には無縁のものだ。
実は、デモクラシーの点で、EUが難しいのは、民族国家の主権をEUに移譲するも、EU議会の権限は限られていて、顔の見えないEU官僚が大権を握っているため、個々の市民の主権の影響力が著しく小さいものになってしまう点にある。実際、英国市民は、東欧などからの低賃金労働者や無尽蔵に来る難民に対し、いかなる主権も行使できない格好にある。離脱派が「市民に主権を取り戻せ」と主張するのはこのためだが、エリート層にはそれが理解できず、説得不能な状態に置かれている。結果、エリート層が騒げば騒ぐほど、貧困層が不信を強める構造になっている。

もう一つの問題は、国民投票自体の難しさである。「EUを離脱するか、残留するか」という重大な社会的選択を、「イエス、オア、ノー」二択で決めてしまい、しかも超僅差で決定しまったことは、今後の意思決定に重大な禍根を残す恐れがある。具体的には、スコットランドの独立が再燃したり、他のEU諸国でも離脱が加速したりする懸念がある。
国民投票は、デモクラシーを構成する重要な要素かもしれないが、その運用はごく慎重であるべきだと考える。

【参考】 原発国民投票に見る社会的選択のあり方について

【追記】
今回の参院選では野党を中心に「自公が3分の2をとったら大変なことになる」とプロパガンダを打っているが、有権者に十分浸透していないのも、基本的には同じ理由から説明される。平和な現行憲法下で、急速に貧困化が進んでいるのに対し、「平和を守れ」「改憲反対」と主張してみたところで、貧困層からすれば、「その憲法や平和が、オレらの生活を苦しめているのでは?」という反応にしかならず、むしろ「憲法を改正すれば、全て良くなる」式の安倍一派の支持を増やしてしまう可能性がある。ケン先生的には、「貧困解消」と「過剰労働の解消」をこそ争点にしなければ、支持が広がらないと進言しているのだが、全く聞き入れられないのが実情だ。

【追記】
イギリスのEU離脱について、エリート評論家たちがこぞって「ポピュリズム」だの「愚かな選択」だの述べているが、仮に日本がEUに加盟していたら、一方的に緊縮財政を求められ、消費税が即20%になるか、社会保障給付費が半分近くになってしまい、主権者たる国民は蚊帳の外に置かれたまま苦悶していたはずだ。おそらくは数カ月と持たずに怨嗟の声が上がり、「EU離脱」が過半数に及ぶだろう。あの連中は、EUの本質を指摘せずに、ある種の世論誘導を行っているに過ぎない。
posted by ケン at 13:00| Comment(0) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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