2017年03月29日

クロネコの残業問題

【ヤマト、巨額の未払い残業代 7.6万人調べ支給へ】
 宅配便最大手ヤマトホールディングス(HD)が、約7万6千人の社員を対象に未払いの残業代の有無を調べ、支給すべき未払い分をすべて支払う方針を固めた。必要な原資は数百億円規模にのぼる可能性がある。サービス残業が広がる宅配現場の改善に向け、まずは未払い分の精算をしたうえで、労使が協力してドライバーの労働環境の正常化を進める。
サービス残業が社内で常態化していることを大手企業が事実上認め、全社的に未払い残業代を精算して支払うのは極めて異例。サービス残業や長時間労働が常態化している企業の労務管理に一石を投じる動きだ。
 宅急便を手がける事業会社、ヤマト運輸で働くフルタイムのセールスドライバー(SD、約5万4千人)と営業所の事務職員(約4千人)、ヤマトHD傘下のグループ会社で働く社員(約1万8千人)が対象。フルタイムのドライバーは全員が対象になる。
 ヤマト運輸は昨年8月、SDだった30代の男性2人に残業代の一部を払わず、休憩時間を適切にとらせていなかったとして、2人が勤めていた横浜市の支店が、横浜北労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けた。インターネット通販の普及と人手不足を背景に、この頃からドライバーの労働環境の悪化が深刻になってきたという。
 是正勧告を機に、全社的に未払い残業代の調査に乗り出すことを決めた。遅くとも今夏までに、全社で支給を終える方針だ。
 関係者によると、川崎市全域と横浜市の一部の営業エリアではすでに調査に着手しており、3月下旬の給料日にあわせて支給する予定。最大で過去2年分について調べ、1人あたりの支給額が100万円を超えるケースもあるという。
 SDの勤務時間は出退勤の時間を記録するタイムカードと、配送の時に使う携帯端末のオン・オフの二つで管理している。原則として、給与は携帯端末で記録された勤務時間から、自己申告の休憩時間を除いた時間をもとに計算しているが、携帯端末がオフになっているときに作業する▽忙しくて休憩時間が取れないのに取ったと申告する――といったサービス残業が増えているという。
 ヤマトHDの2017年3月期の営業利益は約580億円の見通しで、未払い残業代の支給が経営に及ぼす影響は小さくない。「当然ダメージはあるが、まだ体力はある」(首脳)として、労働環境の改善に優先的に取り組む構えだ。
(3月4日、朝日新聞)

前々から指摘されていたことだが、事実が明らかになると、その膨大な人数と金額に目がくらみそうだ。対象人数にして7万6千人。1人あたり10万円でも76億円に上るが、恐ろしいことに同社横浜市内の支店で起き、記事でも触れている最近調停が成立した事案では、セールスドライバー2人が2年分で計577万円の支払いを要求していた。和解額は不明だが、数百万円であることは間違いなさそうだ。つまり、全体を見ても1人あたり10万円で済むような気配は無い。

こうした「違法残業天国」が放置されてきたのは、経営陣の無能や不道徳もあるが、労働組合の無力によるところが大きい。そもそも最大の原因は、ブラックぶりで知られる佐川急便すら投げ出したアマゾンの荷を、ヤマトの経営陣がロクに価格交渉もせずに安価のまま引き受けてしまったことにある。そのしわ寄せが違法残業となって現れている。佐川の惨状は最初から明らかだったのだから、労働組合側に十分な交渉力があれば、経営側に引き受けないよう圧力を掛けられたはずであり、組合の力である程度は回避可能な事案だった。

アマゾンを引き受けて残業地獄が始まってからも、本来であれば労働組合が職場を監督し、正規の残業手続きを行って、一分たりとも「サービス残業」をさせず、厳格に労働時間管理を行っていれば、現在のような「把握不能な残業」など生じるはずもなかったし、最初から数百億円もの残業代が計上されるのであれば、アマゾンとの契約を解消する選択肢が浮上した可能性もあるだろう。
資本に対する労働者個人の力は、まさに「象と蟻」ほどもある。労働者が提供できるのは、労働力しか無く、労働者が個人で対応する限り違法残業=無報酬労働を受け入れるか、退職するかの二択になってしまう。
だからこそ労働者が団結して、資本の横暴に対抗し、労働者が唯一提供できる「労働力」を結集して提供拒否するストライキが唯一の武器となり、その武器をカードに交渉するのが労働組合の重要な役割となる。とはいえ、伝家の宝刀は抜いてしまえば「それきり」という側面があり、抜かずに済めばそれに越したことは無い。だが、ヤマトの残業地獄は「ストをやらなかったこと=宝刀を抜かなかったこと」が招いた惨事であることも確かであり、「ストライキをやらない労働者は一方的に収奪される」というマルクスの指摘が正しかったことを示している。
1970年代以降、ストライキが減少したのは「戦後和解体制」が機能して、労使協調路線が成立したためだが、ソ連崩壊を経て同体制が解体されつつある中、労使の利害が一致しなくなっているわけだが、「平和」の時代が長かったため、労働組合は自らの役割を忘れ、戦力として機能しなくなっている。

なお、ヤマトの問題は「氷山の一角」に過ぎず、製造業などを除いて、特にサービス業では違法残業=賃金未払いの問題が、エベレストを超えるような規模で存在し、隠蔽されていると見られる。さらに言えば、現行の労働基準法が残業代の未払いについて2年の時効を設けているため、資本側は仮に10年間の違法残業を労働者に強いたとしても支払うのは2年分で済むだけに、「残業させ得」になっている。このザルのような労働法制を改正するのもナショナルセンターの最重要課題であるはずだが、連合からそのような要望を受けたことは一度も無い。
【47事業所で違法時間外労働 長崎労働局 県内88事業所を調査】
 長崎労働局が昨年11月に長崎県内88事業所を抜き打ち調査したところ、53・4%に当たる47事業所で、違法な時間外労働があったことが分かった。労働者を残業させるための労使協定(三六協定)を結んでいなかったり、協定があっても上限時間を超えたりしていた。14事業所では月100時間を超える残業が確認された。月80時間を超す残業で過労死リスクが高まるとされる。国は現在、月45時間を上限の目安としている。抜き打ち調査では、ほかに、賃金を支払わないサービス残業を10事業所で確認。過重労働による健康障害を防ぐ措置を取っていなかった事業所もあり、全体では81・8%に当たる72事業所が何らかの労働基準関係法令に違反していた。それぞれに是正勧告しており、改善されない場合は書類送検も検討するという。調査は、全国的な「過重労働解消キャンペーン」の一環で毎年実施。外部からの情報提供などを基に調査対象を選んだ。
(3月29日、長崎新聞)
posted by ケン at 12:01| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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