2017年03月31日

自殺するくらいなら働けって話

【自殺による損失額は4594億円 厚労省が生涯所得算出】
 厚生労働省の研究班は23日、2015年中に自殺した人が生きていれば得られていた生涯所得が推計4594億円だったと発表した。失業率などを考慮して算出した。自殺者数は減少傾向が続いており、損失額は自殺対策基本法が施行される前の05年に比べて992億円減った。都道府県別では、東京都が最多で669億円、大阪府が365億円、神奈川県が364億円と続いた。厚労省の統計では、全国の自殺者数は05年が3万553人で、15年が2万3152人。研究班は、自殺総合対策推進センターの本橋豊センター長や一橋大の金子能宏教授らで構成した。
(3月23日、朝日新聞)

こういう数字を出すこと自体、国家が国民を労働力としてしか見ていない証拠と言える。要は「自殺するとは情けない。死なずに働いて国家に奉仕せよ」ということであり、その結果として「もし自殺者が思いとどまれば、数千億円の生産を増やせる(はず)」などという統計が出てくるのだ。そこには、自国民を精魂を有する生命として捉えるのではなく、収奪すべき労働力という視点しかない。失われた労働力を数値化しているに過ぎないのだ。
言い換えれば、現行政府は、尊厳ある生命の消失を悔やむのでは無く、本来活用できるはずの労働力を惜しんでいるだけであり、国民を労働力としてしか考えられない権力者どもの精神が、国民を自殺に追いやっている。

同じことは、「少子化対策」にも言える。政府は、幸福を感じることのできる国民が減っていることが少子化を招いているとは考えず、「少子化が進むと労働力が減少する」という視点から「少子化対策」を政策化するため、幸福や希望が存在しないディストピアの下、全く実効性が上がらない構造になっている。

また、政府は「自殺者数が減少」と喧伝しているが、この統計は非常に疑わしい。そもそも日本政府の「自殺」定義からして、「死後24時間以内に発見され、かつ遺書が発見されたもの」という非常に狭義に設定されている。つまり、3日後に発見された自殺者も、遺書を書かなかった自殺者も「自殺」とは認められず、「変死」「異状死(死因不明)」として処理されているのが事実だ。結果、警察が検視する「変死体」の数は、2007年に1万4千を、2011年に2万を超えて増加し続けているが、ここ数年は変死体数を発表しておらず、「自殺者を変死者に置き換える」統計操作の疑いがある。しかも、この変死体以外に、検視に処されない「死因不明の死体」(異状死)が15万体以上ある。このうち行政解剖に処されるのは1万体強に過ぎず、約14万人は「異状死」として処理され、遺族が死因を知ることは無い。
この変死者と「死因不明者」の合計数は、17万人を超えるが、このうち相当数が自殺と考えられるものの、限定するのは難しい。が、少なくとも、政府発表の2〜3万人という数字は交通事故の死者と同様、実態を反映しない「公式統計」であるのは間違いない。これは、「神国で自殺する臣民など存在するはずがない」という皇国史観に基づいているものと思われる。
posted by ケン at 12:13| Comment(10) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
自殺対策基本法、こんな法律があるんですねぇ。
「この法律は、平成二十八年四月一日から施行する」と附則にあるので、運用1年目の実績報告ってことなんでしょうか。
第十一条で政府に義務付けられている年次報告ですかね。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO085.html

まぁしかし人数が減ったよって報告なら解りますが、人数に見込み所得を掛けるという発想はどうにも・・・損失、損害はカネに換算して考えるものであるというような話は民法の勉強中にどこかで見たような気もしますが、そういうことなんでしょうか。
死亡時と同額の保険金を既に受領している自分的にも、人命を金額に換算するという考え方には少々抵抗を感じるものですが。
Posted by とよたつ at 2017年04月01日 20:51
そうだと思います。
確かに外科技術が戦時下における死亡率を下げて再戦力化を進めるために進化した歴史はありますが、昨今の自殺対策も同じで、若年死亡率を下げて再労働力化を図ることを目指しています。が、果たしてそれで良いのか、国民を数値化された労働力としてしか考えないような国で良いのか、問われてしかるべきでしょう。
裏でこっそり研究するのは分かりますが、こういう形で公表してしまうと、ナチと同じに見えてくるのですが、官僚は放置しておくとどうしても合理性あるいは組織の論理を追求するあまり人間性を失いがちなので、そこは政治家や市民のチェックが必要だと考えています。
Posted by ケン at 2017年04月02日 10:12
正社員の想定で、しかも失業率で補正したとのこと。突き抜けた感じがいいですね。
Posted by M at 2017年04月03日 23:00
どこまでもお役所なんですよ。
Posted by ケン at 2017年04月04日 12:39
 こんばんは。
 全く酷い話ですが、「個人」とか「権利」とか「人権」、「国民主権」を憎み教育勅語を愛してやまず国家総動員法マインドな安倍日本会議政権らしい話ですよね。田中さんや鈴木さんといった個人を消してしまえば、すべては測定可能な量と数字に成るわけで、奴等には824円/時/人とかに見えているのでしょう。もっとも皇国労働観だと奉仕の心でタダ働きが当然だそうなのでマダマダですね。

 さて、些末なことですが
>日本政府の「自殺」定義からして、「死後24時間以内に発見され、かつ遺書が発見されたもの」という非常に狭義に設定されている。
とありますが、そうなのでしょうか?
 ぱっと典拠を出せないのですが、反自殺運動をなさっている方が、それは誤りだと言っていましたので。
”警察庁では、死体発見時以後の調査等によって自殺と判明したときは、その時点で自殺と計上する。”http://ikiru.ncnp.go.jp/jisatu_a5.pdf

”警察庁統計では、解剖による鑑定において自殺と断定された案件においても遺書が残されている件は半数以下である。”https://ja.wikipedia.org/wiki/自殺

 とありますから、遺書がなくても自殺と判定することはあるようです。そして死後24時間を超えても、検視によって自殺認定するようですね。そうでなければ、青木ヶ原などで見つかった白骨死体や腐乱死体は全て自殺認定されないことになります。

 反自殺運動家の方は交通事故死の定義と混同してるんじゃないかと言っていました。

 民主党政権内閣府参与であったライフリンクの清水さんにでも自殺者の暗数や増減問題ともども確かめてみてはいかがですか?

 自殺防止政策は民主党政権の輝かしい成果ですからね。ケン先生もあの日、教育会館で鳩山首相以下閣僚たちの決意表明をお聞きになったのでしょう?私は胸が熱くなりました。夢のようですよ。
Posted by L at 2017年04月04日 20:33
Lさん、コメントありがとうございます。

さすがにただ働きだと生きていけないので、「生存の必要な最低限度の賃金」ということだと思います。

自殺の定義については、政府(警察庁)に確認したところ、一律の定義は無く、全て現場の判断に委ねられているということでした。どうも自分の思い込みで書いてしまったようですが、どこかで耳にした話で(元警察官だったような)、(現場の認識として)大きくは間違ってはいないと思います。ちなみに、青木ヶ原で発見される遺体は自殺としてカウントされているのでしょうか。

自殺は不況や失業と密接な関係にあるので、今後は急増する可能性もありますので、注視してゆきたいと思います。最大の自殺対策は景気策ですが、やはりセーフティネットの整備も重要だと考えています。
Posted by ケン at 2017年04月05日 12:42
 ありがとうございます。
 件の「自殺の定義」はグーグルのサジェストにも出てきますし、幾つかリンクを踏んでもちゃんとした根拠は出てこないので、都市伝説というか、2chデマ臭いです。暗数とか自殺についてはもっともらしいお話が横行しているようなので、清水内閣府参与のようなプロに当たってみた方が良いですよ。

 自殺の名所の青木ヶ原などにはクレサラ弁護団?が建てた自殺防止の看板が立ってるそうです。https://rr.img.naver.jp/mig?src=http%3A%2F%2Fimgcc.naver.jp%2Fkaze%2Fmission%2FUSER%2F20141104%2F67%2F6304877%2F7%2F276x397xdfd8bf6f12667eeda80d20f7.jpg%2F300%2F600&twidth=300&theight=600&qlt=80&res_format=jpg&op=r
 さすがにすべて殺人、行き倒れ、死因のわからぬ変死体扱いをして自殺認定0はないでしょう。
 確か、全国自殺統計で山梨が多いのは青木ヶ原があるからという説明を見たことがあります。http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/33.pdf
>本県の平成 23 年の自殺死亡率は、警察統計(発見地ベース)で 36.3 であり、平成 19 年から5年
連続で全国1位となっている。〜警察統計の数値が高いのは、県外からの自殺者が殆どを占める青木ヶ原樹海を抱えることにより県内での自殺者のうち、県外者・不明者が 30.1%を占めていることが原因である。
Posted by L at 2017年04月05日 17:04
なるほど、情報ありがとうございます。
もう少し勉強していたと思います。
Posted by ケン at 2017年04月06日 12:24
「異状死」は死因不明じゃなくて死因を調べるので大変なんですよ。
朝日新聞を日頃から読んでいるとそういうデマにだまされなくなるでしょう!!

http://www.asahi.com/articles/ASJ2S6FQSJ2SUBQU00H.html
「在宅死、半数が「異状死」扱い 在宅医調査、不本意な検視も
佐藤陽2016年2月25日07時00分

できれば自宅で安らかな最期を迎えたいと願う人が多いものの、実際には在宅で亡くなる人の半数ほどが「異状死」として扱われていることが在宅医の調査でわかった。病死の可能性が高くても、事件性を疑い、警察が検視に入るケースも少なくない。専門家は普段からの備えが必要だと指摘する。

迫る2025ショック with you
 一昨年春、がんを患っていた神奈川県の80代独居男性が自宅で亡くなった。かかりつけの在宅医の往診を受け、死亡診断書も出た。

 だがケアマネジャーが自治体のケースワーカーに連絡すると、「事件性があるかもしれない。警察を呼んで」と指示された。警察官に「普段から定期的に在宅医が診ていた」と説明し、引き揚げてもらうまで数時間の混乱があったという。

 昨年夏には横浜市鶴見区の済生会横浜市東部病院の救命救急センターに、重症肺炎の80代女性が搬送された。在宅医の紹介だった。気管を切開し、人工呼吸器をつけるといった治療が施され、女性は1カ月後に病院で亡くなった。

 だが女性は元々、延命治療はせず自宅で穏やかに死にたいと在宅医や家族に伝えていたという。家族は慌ただしい救急現場で短時間での判断を迫られ、「全力での治療」に同意した。センターの山崎元靖部長(45)は「本来、救命救急センターではない病院へ運ぶべき患者だった」と話す。

 医師法では、遺体に異状があった場合、医師に24時間以内の警察への届け出を義務づけている。事故や他殺、心疾患や脳疾患などによる急性死のほか、死因を特定できない場合も、異状死扱いになる。警察が事件性があるかどうかを調べ、遺体の検視をする。

 東京都立川市にある立川在宅ケアクリニックの荘司輝昭医師(50)が、訪問診療をする多摩地域で2012年に自宅で亡くなった1106人を分析したところ、56%にあたる615人が、異状死扱いだった。また異状死扱いの30%が、「老衰」「がん」「肺疾患」などの慢性疾患で、医師が定期的に診ていれば、「病死」として死亡診断書がもらえ、警察を呼ぶ必要はないケースだったという。横浜市や大阪府岸和田市の出水明医師(63)らの調査でも、異状死は自宅死亡者の約半数を占めた。

 

■「事前意思」書き示す試み

 全国在宅療養支援診療所連絡会事務局長の太田秀樹医師(62)らによると、行政や医療・介護職にも、「自宅で死ぬと、警察を呼ばなければならない」「24時間以内に診察をしていないと、自宅で死亡診断書を発行できない」といった誤解がいまだにあるという。

 家族が呼吸停止や容体急変に驚き、救急車を呼んでしまうことも少なくない。また在宅医から「夜中なら救急車を呼んで」と指示されることもあるという。

 こうした「不本意な最期」にならないように、地域の複数の在宅医がみとりをカバーし合ったり、事前に意思を示すリビングウィルを市民に配布したりする取り組みも進んでいる。

 横浜市鶴見区医師会の訪問看護を受ける松本孝彦さん(80)は、リビングウィルに「終末期の心肺蘇生はしてほしくない」「最期は自宅か施設で迎えたい」などと記している。「こうして書くことで、妻や娘とじっくり話し合うことができ、望んだ最期を迎えられるようになる」

 太田医師は「患者や家族、医師や看護師、介護職員らが何度も話し合い、意思の統一をしておくことが大事だ。特に疎遠な家族が突然来て、『何で救急車を呼ばないんだ』と言い出すケースが少なくない」と話している。」
Posted by at 2017年06月21日 22:54
なるほど色々な試みがなされているんですね。勉強になります。ありがとうございます。

コメントされるときは、HNだけでも記入していただけたら幸いです。
Posted by ケン at 2017年06月22日 12:26
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