2017年04月17日

資本の論理と血統主義の呪縛

【経団連会長、人手不足への対応「日系人に日本で働いてもらう」】
 経団連の榊原定征会長は10日午後の記者会見で、人手不足について「今後さらに深刻になる。いまの外国人労働者の規模では足りなくなる」と認識を示した。そのうえで「海外の労働力の活用を長期的に検討していく必要がある」と述べた。外国人労働者の活用の一例として「日系人に日本で働いてもらう」ことを挙げた。榊原会長は東京電力ホールディングス(9501)の川村隆次期会長(日立製作所名誉会長)に関し「日立が苦境に陥った際に経営改革を実行して立て直した」と評価した。「東電には福島第1原発の廃炉や被災者への賠償など大きな課題があるが、力を発揮してもらえると期待している。経済界としても可能な限り応援していきたい」と述べた。
(4月10日、日本経済新聞)

あまりにも剥き出しの資本の論理と御都合主義的な血統主義に圧倒される。リーマンショック後、日系人労働者が大量に解雇され、経団連の圧力によって「強制帰国事業」が政策化されたのは、ほんの7年前のことだった。文字通り「舌の根も乾かぬうちに」またぞろ「日系人」を徴用したいという。

この話は詰まるところ、「安価な労働力」としての外国人と、「忠実で上に楯突かないだろう」「見た目的に外国人度が低い」日本人の血統を有するという条件が合致したことに起因する話で、要は「いつでも解雇可能で、待遇に文句を言わず、ただ同然で働かせられ、人権を侵害してもあまり文句を言われない」労働力を望んでいるだけなのだ。これは、戦前期において朝鮮人や台湾人を「帝国臣民」と規定しながらも、実際には「二級市民」として扱い、「権利の弱い安価な労働力」として過酷な超低賃金労働につかっていたことと根を同じくしている。
その意味では、巷間指摘される安倍政権による「戦前回帰」は、財界からの要請もあると言えるのかもしれない。

(こういう表現が適切かは別にして)日本人、日本国籍保有者ですら、現状では雇用が守られているのは大企業だけで、労働時間は実質無制限、残業代は支払われればマシな程度、有給休暇制度はあっても好きには利用できない、低賃金、パワハラ・セクハラは放置状態という、欧州人からは想像も付かない地獄的環境にあるが、日本の資本家どもは「日本人労働者は恵まれすぎて利益を出せない」と考えている。クロネコのような大企業ですら、不払いだった残業代のうち払うのはたった2年分だけであるのは非常に象徴的だ。

こうした資本家どもの横暴が放置されているのは、日本の労働運動や社会主義勢力(社会民主主義者とマルキストを含む)がいかなる影響力も無いことに起因している。
労働運動の最大勢力である連合は、全労働者の12%程度を組織しているのみで、それもエリート労働者ばかりで構成されている。連合幹部の家を見てみれば分かるが、そこら辺の中小企業の社長などよりも余程贅沢している。つまり、「官製ではない」というだけで実質的には「赤い貴族」なのだ。その結果、労働時間規制を議論する時でも、「規制が無いよりはマシ」程度の理由で、ストライキを打つこともなく、「残業月100時間」で合意してしまった。これでは、旧東側の官製労組や戦中期の産業報国会と何ら変わらない。

国会(衆議院)を見てみれば、社会主義を奉じている政党(NK党と社民党)の議席は5%にも満たない。これは、日本の労働者が恐ろしく収奪されているにもかかわらず、自らの労働者性を全く認識していないため、自分がいかに虐げられている環境に置かれているかすら気づいていないことが大きく影響していると考えられる。これでは、レーニンの前衛党理論が再評価されても致し方あるまい。逆に考えると、社会党が消失したにもかかわらず、NK党が伸び悩んでいるのは、2000年に前衛党ドクトリンを放棄して「(物わかりの)良い子」になってしまったからかもしれない。

一方、日本の資本家は資本家で相当に頭が悪い。デフレからの脱却が進まず、出生率が上昇しないのは、過酷な労働環境と低賃金・低所得に起因している。同時にいつまでたっても労働生産性が改善されないのは、低賃金の労働者を長時間にわたって酷使できる環境が放置されているため、業務の効率化や機械化を進める必要が無いことに起因している。生産性が上がらないため、賃金も上げられず、消費が増えずに景気が低迷する悪循環だ。
この状況下で、さらに無権利、低賃金の外国人労働者を動員してみたところで、労働生産性をさらに悪化させ、競争力の無い企業を温存させるだけであり、その行き着く先は「資本主義の緩慢死」でしかない。連中の言は、まさに無能な指揮官が上級司令部にひたすら増援要請を行い、「勝てないのは司令部が増援をよこさないからだ」と言うのに等しい。

マジで「バカばっか」

「私が魔法の壺を持っていて、そこから艦隊が湧き出てくるとでも奴は思っているのか?」(ラインハルト・フォン・ローエングラム)
posted by ケン at 12:09| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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