2017年05月11日

フランスは今日もグダグダ

【ルペン氏「国民は変わらない政治に投票した」】
 7日に行われたフランス大統領選の決選投票で、極右・国民戦線のルペン氏は約34%を得票した。ルペン氏への支持は自国を優先する内向き志向がフランスに広がっている状況を示している。「国民はこれまでと変わらない政治に投票した」ルペン氏は7日夜、パリでの集会でこう語り、悔しさをにじませた。選挙期間中、ルペン氏は反グローバル化や欧州連合(EU)離脱を掲げ、EU統合を推進するマクロン氏と真っ向から対立した。マクロン氏の地元にある、国外への移転が決まっていた工場に乗り込んで存続を訴えるなど、地域や住民を二分しかねないテーマを争点化した。国民戦線はもともと移民が多い南部が地盤だが、産業が衰退した北東部で保護主義的な政策を訴え、支持を伸ばしてきた。市場の国際化が進み、激しい価格競争を強いられている農民らへの浸透も進む。
(5月8日、読売新聞)

【「マクロン氏辞めろ」仏で大規模デモ 大統領選一夜明け】
 フランス大統領選の決選投票から一夜明けた8日、次期大統領に決まったエマニュエル・マクロン氏に反対する大規模なデモがパリ市内であった。就任は14日だが、デモでは辞退を求める声もあり、今後の政権運営の厳しさをうかがわせた。デモは左派系の市民団体などが呼びかけた。パリ中心部のレピュブリック広場からバスチーユ広場まで、約1・5キロメートルの大通りいっぱいに並んで行進した参加者は「1日で十分。マクロン氏は辞めろ」「7日は(敗れた右翼・国民戦線の)ルペン氏と戦った。今日はマクロン氏に抵抗する」などと訴えた。デモ隊と警官隊が衝突する場面もあった。今回の決選投票の投票率は歴史的な低さで、マクロン氏は国民から広範に支持を得ているわけではない。パリに住むIT技術者のアメリエ・ゴーティエさん(43)は「マクロン氏が掲げる労働規制の緩和で、労働者は守られなくなる。市民の本当の生活を分かっているとは思えない」と話した。
(5月9日、朝日新聞)

当選したマクロン氏は決選投票で65%を獲得したものの、これは有効投票中の得票率であり、実は投票率そのものは74%で、投票数の11%(約400万票!)が白票・無効票だったことを考えると、全有権者の43%からしか支持されておらず、ルペン氏は同22%であったことが分かる。
そもそもマ氏が勝利したのは、本来の保守派候補がスキャンダルで脱落し、相対的に支持が上回ったためであり、議会に支持基盤を持たないことを加えても、相当に厳しい政権運営を余儀なくされるだろう。

一方、ル氏は決選投票を意識しすぎて、「脱EU」を撤回してしまうなど自らの主張を徹底できなかったことが徒になってしまった感じがある。ル氏としては、「フランス・フランの復活で金融政策の自律性を取り戻し、保護貿易で国内産業を独自に再建、国内雇用を確保して景気を回復する」「露仏同盟でドイツ・中欧同盟を包囲する」と堂々と主張した方が、勝てないまでも票を伸ばしたはずであり、「次」へのチャンスも残したはずだった。一回目の投票で反EU票はメランションや他の左翼票を含めて43%以上に上ったのだから、「脱EU」は十分な対抗軸になり得た。
ゲーム的に表現するなら、目の前のわずかな得点に固執して大局を見失った形で惜しいところだ。

マ氏の政策は、オランド氏の新自由主義路線を加速させるだけの話で、基本路線は従来のものを踏襲している。その意味でル氏の敗戦の弁は正しい。新自由主義路線は、さらなる移民や外国人労働者を呼び込んで、国内の労働条件を悪化させ、経済格差や地方の疲弊を加速させる可能性が高く、同時にフランスのドイツ従属(欧州銀行への従属)を強める結果にしかならず、「反EU」「排外主義」「保護貿易」支持層を増やすのは間違いない。EUというのは、域内での経済的自由を保障する一方で、地域の経済的自立を保障せず、かといって日本の地方交付金のような域内の格差を是正するシステムも無いだけに、圧倒的に「強い者が勝つ」システムで、敗者を救済する術を持たない。
つまり、「親EU」のマクロン氏の政策は、「敗者」を増やすと同時にフランスが弱者を救済する術を持たない(経済自律性の放棄)ことを宣言するものであり、構造的に「反EU」の支持層が増える形になっているだけに、ルペン氏は勝負を急ぐべきでは無かった。

それにしても、毎度のことだが、世界あるいは欧州情勢が混沌としている時は、フランス政治が真っ先にグダグダになってしまうのは、もはや「お家芸」と言えるレベルだろう。

【追記】
先日、フランスの専門家の先生がマクロン大統領に期待する旨の話をされていたが、「お前のエリート主義とリベラリズムがポピュリズムの源泉になっているんじゃねぇか!」と叫んでやりたかった。
posted by ケン at 13:42| Comment(0) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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