2017年05月12日

第一次世界大戦が日本にもたらしたもの

ボスが憲法記念日に出す声明文の原稿をチェックしていたところ、「日本の(が参戦した)4つの戦争」という表現を見つけ、ダメ出しをした。単純に第一次世界大戦が抜け落ちていたのだが、一般的には見落としがちなのかもしれない。学校の日本史でもあまり重要視されないため、よほど自主的に近代史を学び直さない限り、能動的な知識にならないのかもしれない。
確かに、日清・日露戦争や日中あるいは太平洋戦争のような主役での参戦ではなかったものの、日中戦争、特に太平洋戦争の主たる原因は、一次大戦の結果生じたものと考えるべきだからだ。

日本が一次大戦に参戦したのは、ドイツの東洋艦隊に対する抑え役が欲しいイギリスが、日英同盟に基づいて日本に参戦要請したことに起因している。
日本はまずドイツ東洋艦隊の根拠地である青島と膠州湾を攻略、占領するが、後に中国の袁世凱政権に対して「対華二十一箇条要求」を行い、ドイツの中国利権の委譲を始め、新規利権を含めて様々な特殊利権を、軍事力を背景に求めた。袁政権がこれに屈すると(「汚い取引」の側面もあるが)、五四運動や中国内戦の原因に転化(点火?)していった。三次にわたる山東出兵の原因にもなっている。
これ以降、日本の対中利権が既得権益化し、そのさらなる拡大を求めて帝国主義的進出(侵略)を加速化させてゆく。上海事変、山東出兵、張作霖爆殺、満州事変は全てその延長線上にある。
また、日本の中国進出が、特に自由貿易(門戸開放)を掲げるアメリカの態度を硬化させ、日米対立の遠因になってゆく。

さらに、戦勝によって日本は南洋諸島の委任統治を継承するが、財政や資本の裏付けの無いまま広大な領地・領海を獲得し、その維持負担が重荷となる。それだけならまだ良いが、アメリカは植民地たるフィリピンやグアムなどの連絡線を日本によって遮られる形となり、いわばその生命線を握られるところとなった。ひとたび関係が悪化すると、そのリスクは際限なく上昇するわけだが、逆に日本は対米関係の悪化を想定して軍拡に走らざるを得なくなり、どう見てもマイナス要素の方が大きかった。

実際、アメリカは一次大戦後、日本を大きなリスクと考えるようになり、まず「四カ国条約」を提唱して日英同盟を解消させ、中国との関係を強化し、対日包囲網を想定しての外交を進めた。これに対して、日本は国際連盟の常任理事国にはなったものの、日英同盟を失い、日露協商も反故にされ、日中関係は悪化の一途、日米は常時緊張状態という外交的孤立に追い込まれていった。この孤立が顕在化した時、日本は日独伊三国同盟に活路を見いだし、第二次世界大戦に突入してゆくことになる。

そして、ロシアで革命が勃発すると、火事場泥棒的にシベリアに傀儡政権を打ち立てるべく、宣戦布告無しで内戦に武力介入、これが「シベリア出兵」となる。日本軍は7万3千人を出兵し、白軍(反革命軍)などと連携して4年にわたる内戦に参加、ロシア側は住民含めて40万人とも言われる被害を出した。これが切っ掛けとなり、ソ連は日本を極東地域最大の脅威と見なし、二次大戦末期の満州侵攻に繋がっていった。

一次大戦の経緯を無視して、二次大戦の原因だけ見ると、どうしても陰謀論に傾いてしまうので、真摯に学び、慎重に検討する必要がある。

【追記】
一つの事象にのみ囚われると全体を見失いやすい。例えば、ソ連のアフガニスタン介入にしてもチェコスロヴァキア介入にしても、事象だけ見ると「悪の帝国がまた・・・・・・」という話になりがちだが、原因と結果を丹念に追えば、全く異なるものが見えてくる。また、日露戦争の原因のように、従来の研究が日本側の視点に偏っていた結果、かなり客観性を欠いてしまうケースもある。いずれも本ブログの記事を参照して欲しい。

・ソ連のアフガニスタン介入における意思決定過程 
・「プラハの春」とカーダールの苦悩 
・「プラハの春」−ソ連の対応と誤算 
・日露開戦の代償−開戦経緯を再検証する 
posted by ケン at 12:52| Comment(2) | 日本語、日本史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なるほど
一次大戦の経緯を無視するから、コミンテルンやルーズベルトの陰謀論などにとらわれやすくなるってことですか
ソ連の参戦やアメリカの警戒も日本の行動を考えれば当然ですね
Posted by at 2017年06月13日 17:44
日本の政策担当者、政治家の最大の弱点は、自分の立場に固執しすぎて相手が何を考え、何を望んでいるか全く考慮しない点にあると思います。日華事変で和平できなかったのも、中国側の事情を全く考慮しなかったことに起因しています。

あとコメントは大歓迎ですが、せめてHNくらいは記入してください。
Posted by ケン at 2017年06月14日 12:56
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