2017年05月19日

通信の秘密について

通信傍受法の改正により、いまや警察は事業者の立ち会い無しで盗聴やネット監視ができるようになったが、憲法21条により「通信の秘密」が保障されているため、警察は郵便封書だけは(少なくとも合法的には)開封できない。
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2  検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
(第21条)

メールや電話などは、原理的にはAIが全て傍受し、記録することができるため、かつて必要とされた膨大な人員は必要とされなくなっている。警察側も、人員削減によりAIによる監視に頼り、AIを導入するため巨額の予算が必要となり、ますます人員を削減するというスパイラルに陥っている。
現代では、最もアナログな方法が、最も秘匿性が高いという興味深い状況にある。封書を用いて私書箱でやり取りするのが、最も「安全」なのだ。
 本法案は,電話のみならず,ファクシミリ,コンピュータ通信等,電気通信であって,伝送路の全部又は一部が有線であるもの又は伝送路に交換設備があるものを対象としています。
 個々の捜査において傍受の対象となる電話,電子メール等は,電話番号やアドレス等により特定して令状に記載され,それについてだけ傍受が許されます。
(通信傍受法について、法務省HPより)

 憲法第21条第2項は,通信の秘密を保障しており,これについて最大限尊重すべきことは言うまでもありません。他方,憲法第12条及び第13条は,公共の福祉による制約を規定しており,通信の秘密の保障も,絶対無制限のものではなく,公共の福祉の要請に基づく場合には,必要最小限の範囲でその制約が許されるということは,憲法解釈の常識です。
 通信傍受法案は,犯罪捜査という公共の福祉の要請に基づき,通信傍受の要件を厳格に定めるなど,必要最小限の範囲に限定して傍受を行うものであり,決して憲法に違反するものではありません。
(同上)

興味深いのは、犯罪捜査の目的で電子メールの検閲を行うことは憲法の「通信の秘密」に違背するものではないとしながら、郵便封書は犯罪捜査目的での開封を除外している点にある。これは、封書まで開封できるとなると、「憲法違反」は免れないという認識を政府が持っていることを傍証している。郵便検閲まで行うとなると、自由主義社会や民主主義社会の根底を覆してしまうからだ。霞が関官僚や警察官僚は、敗戦による民主化を今までに無く呪っているようにも感じられる。

もっとも、帝政期の軍人たちも、可能な限り憲兵に検閲される軍事郵便は使わず、市中のポストに投函するようにしていた。中国戦線に従軍した人も、何らかの理由で後方の大都市に行った時に、上海や青島などから国際郵便で日本に送っていた。
これは帝国憲法が、
日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ秘密ヲ侵サルルコトナシ
(第26条)

と定め、必要な法律を定めなかったことに起因している。もちろん現実には、大正期の頃から特高が郵便の検閲を行っていたが、法律の根拠を持たないため、大々的にはできず、表向きは内務省も「検閲はやっていないし、できない」と言わざるを得なかった。法律上の根拠ができるのは、臨時郵便取締令が発せられた1941年10月のことだった。つまり、帝政期ですら憲法は「紙に書かれただけ」では無かったのだ。
posted by ケン at 12:22| Comment(0) | 教育、法務、司法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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