2017年06月22日

フランス国民議会選挙2017

【仏総選挙第2回投票 マクロン陣営、議席6割 二大政党は惨敗】
 フランス国民議会(下院、定数577)選挙の第2回投票は18日、開票が行われ、内務省の暫定最終結果では、マクロン大統領の新党「共和国前進」陣営が約6割に相当する350議席を獲得した。マクロン氏は安定的な政権運営に必要な議会基盤を固めた。
 フィリップ首相は18日、「議会を新たにしようと望む国民のおかげだ。明白な多数派だ」と勝利宣言。前進は連携する中道政党を除く単独でも過半数(289)を確保。欧州連合(EU)強化や国内改革などの公約実行に大きな弾みとなる。
 内務省によると、前進以外では保守系の共和党陣営137議席▽左派の社会党陣営44議席▽共産党を含む急進左派27議席▽極右の国民戦線(FN)8議席。FNのマリーヌ・ルペン党首は下院初当選を果たした。
 共和党は2012年の前回選挙時から議席をほぼ半減。社会党は8割以上を失う惨敗となり、両党が中心となってきた仏政治の勢力図は激変することになる。
 一方、前進陣営は第1回投票での善戦後、一部で予想された7割以上の議席獲得には至らなかった。他陣営が第2回投票に向けた選挙運動で議会のチェック機能維持のため、前進の「1強」回避を有権者に訴えたことが影響した可能性がある。
 投票率は約43%。11日の第1回投票の約49%よりも落ち込み、第2回投票としては過去最低に近い水準に低迷した。
(6月20日、産経新聞)

フランス国民議会選挙第二回投票が行われ、議席が確定した。一般的な報道だけでは見落とす部分が多いので、補足しておこう。
先にフランス下院選挙の投票制度をおさらいしておこう。学術的には「小選挙区単記2回投票制直接普通選挙」と呼ばれるもので、基本的には単純小選挙区制だが、一回目の投票で過半数かつ登録有権者の25%以上の得票が無かった選挙区では、上位二候補による決選投票が行われるというもの。実際、今回の選挙で第一回投票で確定したのは4選挙区に過ぎなかった。

その意味で、30〜40%程度の相対多数得票で当選してしまう日本の投票制度よりは民意の反映度が高いと言えるが、今回の選挙を見た場合、第一回投票で32%しか得票しなかった共和国前進が6割の議席を得ている。だが、その一方で不服従のフランス17、共産党10、国民戦線8、左派系諸派8、右派系諸派6など、決選投票付きの小選挙区でこれだけの多様性が保たれるのも非常に興味深い。詳細な獲得議席は下記。

また、国民議会の総定数は577。フランス本土から539人、海外県・海外領土から27人、在外フランス人から11人が選出される。「在外枠」という考え方も非常に面白い。棄民傾向が強い日本とは、「国民」に対する考え方が本質的に異なる。共和国ならではかもしれない。
では、党派別獲得票、得票率(第一回)と最終獲得議席数を見てみよう。

極左諸派:175,214票、0.77%、0議席
共産党:615,487票、2.72%、10議席
不服従のフランス:2 497,622票、11.03%、17議席
社会党:1,685,677票、7.44%、30議席
急進左翼:106,311票、0.47%、3議席
左翼諸派:362,281票、1,60%、12議席
エコロジスト:973,527票、4.30%、1議席
諸派:500,309票、2.21%、3議席
諸地域政党:204 ,049票、0.90%、5議席
共和国前進:6,391,269票、28.21%、308議席
民主運動:932,227票、4.12%、42議席
民主独立同盟:687,225票、3.03%、18議席
共和党:3,573,427票、15.77%、112議席
右翼諸派:625,345票、2.76%、6議席
立ち上がれフランス:265,420票、1.17%、1議席
国民戦線:2,990,454票、13.20票、8議席
極右諸派:68,320票、0.30%、1議席


まず、有権者総数4729万人のうち第一回投票者は2317万人で投票率48.7%、うち白票36万票、無効票16万票。第二回投票者は2016万人で投票率42.6%、うち白票140万票、無効票60万票。
見ての通り、フランスとは思えない投票率の低さと白票・無効票の多さがあり、これ自体が「国民全員参加」を大原則とするデモクラシーの危機を表している。同時に第一回投票における有権者総数に対する「共和国前進」の投票率はわずか13.4%に過ぎず、それが全議席の53%を占める結果となっている。言い換えれば、フランス人の8人に1人程度しか投票していない「マクロン大統領派」が議会の過半数を得てしまっている状況にある。「前進」と協力関係にある「民主運動」を加えれば6割の議席になる。
逆にルペン氏率いる国民戦線は299万票で得票率13.2%もありながら、獲得したのは8議席(議席占有率1.3%)に過ぎなかった。これは決選投票で敗北したためだが、ファッショを避けるための制度が議会に対する民意の反映を抑制し、棄権や無関心層を増やす結果に繋がっていると推測される。
メランション氏率いる「不服従のフランス」も同様で、250万票、11%も得票しながら17議席(同3%)に終わっている。もっとも、「不服従のフランス」は大統領選で共産党、エコロジスト、左派系諸派と合同してメランション候補を立てたが、今回は総選挙ということで個別に戦ったことが災いしている。「不服従のフランス」と共産党の選挙連合は、直前まで検討されたが実現しなかったことが大きい。とはいえ、下院選挙で政党連合を組んでしまうと、政党のアイデンティティが問われる事態になるため、そこは単純には評価できない。そうは言っても、「不服従のフランス」と共産党とエコロジストの三者の票を足しただけで共和党を優に超えるのだから、フランスの政治的多様性は面白い。

放置すると超多党制になってしまうラテン的な政治文化を抑制するために小選挙区制度が導入されているのだが、現実に民意が全く議会に反映されず、投票意欲が激しく低下する事態を招いている。「選択肢が無い」日本からすれば非常に羨ましくもあるのだが、フランスはフランスでデモクラシーの危機を迎えている。
少なくとも「マクロン派が勝利した万歳」とは行かないことだけは間違いない。
posted by ケン at 12:22| Comment(0) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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