2017年08月27日

日本の鵜飼いと中国の鵜飼い

「働き方改革」を象徴するものとして鵜飼い文化が挙げられる。現代日本では、鵜を用いた漁法は完全に伝統芸と化し、いまや観光者向けのショーとなっているが、中国では現役の漁法で、むしろ「効率が良い」と評価されているらしい。こう言うと、「日本と中国では市場環境が全く違う」という脊髄反射が返ってきそうだが、まずは何が違うのか見てみよう。

日本の場合、鵜使いが10羽ほどの鵜をヒモで繋いで漁をさせ、採れるだけ採らせて鵜が厭きてきて効率が落ちると、漁を止めて帰還し、鵜たちに餌を与える。採るのはアユに限られている。

中国の場合、鵜はヒモで繋がれず、自由に漁をし、鵜使いのところに戻ってきて魚をはき出すと、鵜使いはその場でその鵜に餌を与える。しかも、捕ってきた魚の種類や大きさによって餌の種類や大きさが異なる場合もあるという。つまり、市場価値の高い魚を捕ってくると、鵜がもらえる餌も良いものになる。結果、士気の高い鵜は、もっと餌をもらおうと、より良い魚を求めて潜ってゆく。ところが、この方法の場合、サボる鵜や、一匹持ってきただけで満足してしまう鵜がいるため、鵜使いは棒で鵜を小突いたり、水面を叩いて脅したり、餌を見せたりして、何とか鵜を働かせようとする。面白いのは、鵜の中には魚を捕っていないのに鵜使いに餌をもらおうとするものがおり、鵜使いが誤って餌を与えると、真面目に仕事している鵜が怒って鵜使いをクチバシで突いて抗議するのだという。

蛇足かもしれないが、解説しておこう。
日本の鵜使いは、鵜を管理さえしていれば、鵜が勝手に魚を捕ってきてくれるが、「それだけ」の話で、漁の成果は漁場の質と鵜の素質と気分に左右されてしまう。鵜に対する扱いはみな平等で、漁の成果に関係なく餌を与えられる。非常に社会主義的だ。そして、日本の鵜匠は鵜たちから好かれ忠誠を得ることが求められる。「鵜との信頼関係」「家族的雰囲気」が重視される。

これに対して、中国の鵜使いには、高度なマネジメント能力が求められる。獲物の種類を見て、鵜に評価を下し、適切な報酬を与えなければならない。また、働かない鵜に対しては罰を与えたり、報酬をちらつかせて何とか働かせるように仕向ける必要がある。どこまでも自由主義的というか資本主義的だ。そして、中国の鵜匠は高いマネジメント能力を発揮しないと務まらない。「公正な評価」と「信賞必罰」が重視される。

確かに見た目的には、中国の鵜漁は「非人道的」かもしれないが、果たしてどちらの鵜の方が「幸せ」なのだろうか。少なくとも、日本の鵜漁がビジネスモデルとして絶滅した一方、中国のそれはいまだ現役であり続けていることは、正当に評価されてしかるべきだろう。
posted by ケン at 12:00| Comment(5) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
鵜飼を小突く鵜は日本にいませんものね、諦めなのか怠惰なのか。
Posted by ひろき at 2017年08月27日 16:35
>そして、日本の鵜匠は鵜たちから好かれ忠誠を得ることが求められる。「鵜との信頼関係」「家族的雰囲気」が重視される。

絶対な忠誠心が大事な割に、首に輪を付けて管理する日本のやり方って?
な感じもあります。


ではまた。
Posted by 忠武飛龍 at 2017年08月27日 17:41
戦国時代までは「主張したもの勝ち」だったみたいですが、江戸時代の安定した封建体制と明治以降の権威主義体制で牙を抜かれてしまったみたいで。明治も初期のころは、西南戦争、秩父事件、自由民権運動など、暑苦しかったんですけどねぇ。

「家族的雰囲気」を括弧付きにしたのは、現代のブラック企業ほど「家族的雰囲気」を主張する傾向を揶揄してのものですよ。経営効率よりも安定的支配を重視するというのはあると思います。
Posted by ケン at 2017年08月28日 12:44
でどちらが社会主義国でしたっけ?
Posted by ケンケン at 2017年09月01日 16:28
社会主義というよりは権威主義なんでしょうね。
Posted by ケン at 2017年09月04日 11:11
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