2018年03月30日

自民党内ですら難航する改憲・続

【9条改正案から「必要最小限度」削除へ 自民、自衛隊定義で調整】
 自民党憲法改正推進本部(細田博之本部長)は19日、憲法9条の改正案に関し、自衛隊の定義として書き込む予定にしていた「必要最小限度の実力組織」という文言を削除する方向で調整に入った。党内では、「必要最小限度」の範囲をめぐる新たな憲法解釈の論争を巻き起こしかねないとの批判が出ていた。
 推進本部は22日の全体会合で、戦力不保持などを定めた9条2項を維持し、「必要最小限度」の文言を入れずに自衛隊を明記する案を説明したい考えだ。その上で、憲法改正案を示す25日の党大会に向けて意見集約を図り、細田氏への一任取り付けを目指す。
 推進本部の細田氏や根本匠事務総長らは19日、党本部で9条改正案の取りまとめ策を協議した。出席者によると、過去の国会答弁から「『必要最小限度』と書かなくても『戦力でない』という自衛隊に関する解釈が変わるわけではない」と判断した。
 推進本部は15日の全体会合で、9条改正に関する7案を示した。このうち、9条2項を維持した上で「9条の2」を新設し「必要最小限度の実力組織として、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する」と明記する案をベースに意見集約する方向だった。「必要最小限度」の文言を書き込むことで2項が禁ずる「戦力」ではないと明確化する狙いがあった。
 しかし会合では、2項の削除を主張する石破茂元幹事長が「『必要最小限度』(の範囲)を誰が判断するのか」などと執行部案に異を唱えた。
 2項維持に賛同する別の議員からも「また、(自衛隊は)何ができる、できないと(いう論争を)ずっとやることになる」と反論が続出した。このため細田氏は15日の一任取り付けを断念した。
(3月20日、産経新聞)

先に本ブログで指摘した通りの展開になっている。
結局のところ、解釈改憲をはるかに超えて海外派兵の既成事実化や集団的自衛権の法整備を進めてしまったので、憲法改正についても「ちょっと書き足す」くらいでは事実に追いつかなくなっているのだ。

だが、9条2項「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」を削除した上で、新たに設ける項目に「必要最小限度」などの明記を避けた場合、「最小限度の実力とは何か」「攻撃兵器は違反では」などの議論はなくなるかもしれないが、今度は無制限の軍拡が可能になり、全て政治の裁量下に置かれてしまうことになる。

例えば、1918年のロシア革命干渉戦争(シベリア出兵)において、日本は日英同盟に基づく集団的自衛権を発動して、革命勃発中のロシアに軍事介入、7万4千人を極東ロシアに上陸させて、イルクーツクまで進出、約40万人からのロシア人等を殺戮している。
現状でも、仮にNATO軍がウクライナに進駐、ロシア軍と衝突して、日本に出兵要請がなされたとしたら、良く似た情勢に陥るだろう。ウクライナが日本と「密接な関係」を持つと判断され、北海道の防衛に重大な影響が出るとの分析が出され、ウクライナとNATOから正式な要請があり、総理が「総合的に判断」して国会が承認すれば、「自衛隊」が宗谷海峡を越えて樺太に上陸すると同時に日本海を渡って浦塩に上陸、ハバロフスクに向けて進撃を開始する、ということになるかもしれない。第二次シベリア出兵である。原発を再稼働できずエネルギーの安定供給に不安を抱える現代日本としては、シベリアの天然ガスを独占する好機となろう。また、北方領土の奪還は日本政府の「悲願(笑)」である。その誘惑を自ら否定できるほど日本の政府や政党は成熟していない。

安全保障政策は、国際情勢によって大きく左右するだけに、非武装中立を宣言するのでもない限り、憲法で規定するのは避けた方が良い。本来であれば、国防法と国防方針で規定すべきもので、現状の自衛隊法は以下のように定めている。
第三条 自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。
2 自衛隊は、前項に規定するもののほか、同項の主たる任務の遂行に支障を生じない限度において、かつ、武力による威嚇又は武力の行使に当たらない範囲において、次に掲げる活動であつて、別に法律で定めるところにより自衛隊が実施することとされるものを行うことを任務とする。
一 我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動
二 国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与その他の国際協力の推進を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動
3 陸上自衛隊は主として陸において、海上自衛隊は主として海において、航空自衛隊は主として空においてそれぞれ行動することを任務とする。

これを読んでも、「武力の行使に当たらない範囲」で集団的自衛権の行使や海外派兵が可能になっており、「武力の行使とは何を意味するのか」という神学論争が起こる余地を残していることが分かる。定義が無いのだから、第二次シベリア介入を強行して「住民保護であって武力行使には当たらない」と言い張ることも不可能では無い。

言ってしまえば、憲法問題は義務ではなかった宿題を先送りにしてきた結果、宿題が山のように積み上がってしまって、途方に暮れているような状態にある。
posted by ケン at 12:13| Comment(2) | 憲法、政治思想、理念 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私大文系志望で数学サボってたら、親から経済的にくるしいから国立行けと言われた感じ?

まずは真珠湾攻撃がパリ不戦条約違反の侵略戦争であるという、国際法の根本規範を履修しないと。
Posted by taka at 2018年03月30日 14:00
開戦に関するハーグ国際条約もそうです。対米最後通牒の内容も読まないで議論する人の何と多いことか!
Posted by ケン at 2018年04月02日 13:04
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