2018年06月28日

安全では無くなった仮想空間

【Hagexさん刺殺、犯行声明か 「低能先生と呼ばれ」】
 福岡市内であったIT関係セミナーの男性講師を刺殺したとして、福岡県警は25日、福岡市東区筥松(はこまつ)1丁目の無職、松本英光容疑者(42)を殺人と銃刀法違反の疑いで逮捕し、発表した。松本容疑者は「ネット上(のやりとり)で恨んでいた男性を死なせてやろうと思い、腹と首を刺した」などと話しているという。
 殺害されたのは、「Hagex」の名前で活動するインターネットセキュリティー関連会社「スプラウト」の社員、岡本顕一郎さん(41)。ネットには事件への関与をほのめかす投稿もあり、県警は松本容疑者が投稿した可能性もあるとみて関連を調べる。
 ネットで出回っている投稿に表示された時刻は、松本容疑者が出頭した24日午後10時50分の直前。福岡県警が松本容疑者を逮捕して、名前や年齢を発表する前だったが、「42歳」と正しく記述されていた。投稿では、自身がネットで複数の人から「低能先生」と呼ばれてきたなどと主張しつつ、「これから近所の交番に自首して俺自身の責任をとってくるわ」などと書き込んでいた。
 事件が起きた起業家支援施設は繁華街・天神の近くにあり、一時騒然となった。福岡市は25日、施設を一時的に閉館した。
(6月25日、朝日新聞)

ロシアでは、反政府系のジャーナリストが殺害される事件がたびたび起きているが、ついに日本でも始まったようだ。
警察は怨恨の線で収める意向のようだが、この手のケースの場合、全体主義学徒としてイメージされるのは、当局が殺害したい人物に対し怨恨を持つ人間を唆し、暗示・心理操作を行って怨嗟を増幅させるパターンである。自分で手を下す必要が無く、失敗したとしてもリスクは殆ど無いため、頻繁に使われているとみられる。『フンタ』にも「精神異常の暗殺者」が登場するが、あれである。
ソ連学徒的には、「不倫による怨恨が原因」で片付けられた政治局員セルゲイ・キーロフ暗殺事件が思い出されるが、日本史では明智光秀による信長殺害がある。いずれも単なる怨恨で片付けるには闇が深すぎるケースだ。特にキーロフ暗殺は、スターリン期の大粛清の端緒となった事件であるだけに、非常に興味深い。

権威主義体制に移行しつつある日本においても、当局がロシアやソ連の手口を学習したとしてもおかしいところは何も無い。そもそも財務大臣が「ナチスの手口に学べ」と言っているくらいなのだから。

被害者が殺害された理由は判然とせず、十分に分析する必要はあろうが、「三十六計逃げるにしかず」でもある。
本ブログでは、機密情報は扱わないし、スキャンダルも滅多に取り上げず、政府批判も控えめにしているはずだが、「○○先生に対する批判は止めた方が良い」とアドバイスされたこともあり、どこで何が恨みを買っているか分からないところは、ネットの怖いところでもある。
また、1937年に起きた人民戦線事件では、諸先輩方の大半はごく些細な理由から検挙されているし、戦時中に起きた横浜事件では、出版社の温泉旅行を共産党再建のための謀議と見なした特高によって治安維持法違反で60人以上を逮捕、拷問で4人が獄中死している。

こうした事件を想定した上での「共謀罪」導入だったと考えた場合、私の安全は、もはや一刻の猶予も無いと考えて良いだろう。
posted by ケン at 12:57| Comment(3) | 政治、社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 
 >当局が殺害したい人物に対し怨恨を持つ人間を唆し、暗示・心理操作を行って怨嗟を増幅させるパターンである。自分で手を下す必要が無く、失敗したとしてもリスクは殆ど無いため、頻繁に使われているとみられる。


 いわゆる、「犬笛政治」ですか?
あれほど権力側に都合の良いモノも
なかなか無いですね。
Posted by ムラッチー at 2018年06月28日 16:57
暗殺の政治史〜権力による殺人の掟〜というなかなか面白い本があります。この書籍の中で書かれていた英国王ヘンリ2世のカンタベリー大司教トマス・ベケット殺害というのは直接的命令ではなく示唆を汲んだ騎士による暗殺行為でした。ヘンリ2世は21世紀半ばの日本とは異なり、直接的に命じたわけではないとして許されることなく、懺悔せざるを得ない羽目になりますが、翻って日本では忖度はする方も承る方も勝ちというのが、社会的無意識に刻み付けられるようなご時世ですからね。公安の収集癖は全体主義非全体主義問わず、その種の組織の持って生まれた性(さが)ですからSNS上の人格も実名と相当程度の同定作業がもう10年以上も進捗していると踏んでいますが、そのデータが活用されたら嫌だなあと思います。半世紀前のインドネシアではCIAのリストがインドネシア国軍に提供されたところ、半年でびっしり×印を着けて返却されたという逸話を知るだけに。私なんかは手遅れもいいとこ。金融資本主義の与太でたまたまどん底ブルーワーカーから三転して悪くない収入を得られる立ち位置にあるもののいずれ断ち切られるものと少々の覚悟を決めてはおります。
Posted by arkanal1 at 2018年06月29日 02:46
犬笛政治、まさにそうですね。社会的不平等を解決する意思も方策も無い以上は、そこに行き着くのが自然でしょう。

『暗殺の政治史』おもしろそうですね。スターリンもプーチンも、自ら暗殺を指示することはまず無く、あくまでも示唆して忖度を求めるだけなんですよね。今のところは、まだまだ情報収集と実験の段階なのでしょうが、社会的不平等が放置されている現状、体制内不満の増大は不可避な情勢にあり、いつ権力が牙をむくか分かったものではありません。
Posted by ケン at 2018年06月29日 13:58
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