2018年10月09日

中国から見た中米貿易戦争

【米中外相が会談、貿易や外交問題で非難の応酬】
 中国を訪問したポンペオ米国務長官と王毅国務委員兼外相は8日、北京で会談した。会談の冒頭で行われた共同会見では、米中の外相が両国の協力の重要性を強調する一方で、貿易戦争や台湾などの問題について公の場で非難し合うという異例の展開となった。
王氏は、「米国は最近、中国との貿易摩擦を激化させており、台湾問題で、中国の権益を損なう行動を取り、中国の内外政策について根拠のない批判を繰り広げている」と強調。「これはわれわれの相互信頼に対する直接的な攻撃で、米中関係に影を落としている」と指摘。その上で「米国にこうした誤った言動を直ちに止めるよう要求する」と抗議した。
中国外務省の声明によると、王氏は、台湾への武器売却をやめ、公式訪問や軍事的連携も断ち切るべきだと主張した。
ポンペオ氏は、王氏が説明した問題について、米中間に「根本的な意見の不一致がある」と述べ、「中国が取った行動を非常に懸念しており、それぞれの問題をきょう協議する機会を持てることを楽しみにしている。米中関係は非常に重要な関係だ」とコメントした。
ペンス米副大統領は4日、11月の米中間選挙を控え、中国があらゆる手段を講じ、米国に内政干渉していると非難した。
ポンペオ氏は中国の外交担当トップ、楊潔チ共産党政治局員とも会談した。一方、習近平国家主席とポンペオ氏の会談は見送られた。
(10月9日、ロイター)

 今回の中国赴任に際しては、有力な在日華人の推薦があったため、現地のインテリ層と予め交流パイプを持っていることが強みになっている。いかんせん初年度は講義ノートの作成に追われてしまって、なかなか時間が取れそうにないのだが、それでも意見交換する機会は大事にしている。
 赴任して一ヶ月なので、「まだまだこれから」としか言いようはないのだが、何度か意見交換した中で、現地の学術エリート層が中米貿易戦争をどのように捉えているかについては、私も主要な関心事であったし、私が聞かずともやはり議論のテーマに上がることが多かった。早く自分も議論の大まかな内容くらい理解できるようになりたいところだ。

 ケン先生が得た感触としては、中国のエリート層は西側で報じられているほど動揺していない。米欧日の報道では、米中貿易戦争に中国側が過剰に反応して、大騒ぎになっているような話になっているが、少なくとも国際関係、安全保障、国際経済などの研究者の間には動揺は見られず、大きく構えていると言って良い(例外もいるが)。

 中国側としては、ある程度のところ「織り込み済み」な話で、それは1980年代の日米貿易戦争を見ているだけに十分予測可能なことだった。それもあって、中国側では内需拡大と一帯一路によるユーラシア・内陸開発を進める政策を採っている。
 中国は、対米輸出を規制されたとして当面は苦しいかもしれないが、他に販路を求めるだけで、国際競争力は維持できると踏んでいる。これに対して、アメリカは中国政府と中国人による米国債の購入が止められると打つ手が無くなってしまう。結果、長期米国債の金利が上がり、現在でも政府の閉鎖と再開を繰り返している連邦政府は遠からず財政破綻するだろう。
 また、中米貿易の減少と代替貿易の加速は、ドル決済の減少に直結、天然資源のドル決済減少も相まって、ドルの価値が低下、金融危機が近づいてくる。これらの被害を最大限受けるのは、日本でしか無い。だからこそ、中国は日本に一帯一路やAIIBへの参加を呼びかけているが、外務省の反対が強すぎて上手く行く気配は無い。

 中国人は概ね楽観的だが、ケン先生的には厳しいと感じるところもある。中国国内は、少しずつ景気が悪化する傾向にあると言われている。私は来中したばかりなのでその実感は無いが、どうやら1990年代の日本と同じで、「欲しいもの」は概ね手に入れてしまったので、消費が一段落している状態なのかもしれない。ただ、とにかく日本の10倍の人口がおり、そのスケールメリットから見えにくいし、問題の進行が遅い。
 言えるのは、明らかに供給が過剰な状態にありながら、日本のようにデフレが進んでいるわけでもなく、物価はまだまだ上昇傾向にあるということだ。中国政府は、ただでさえ低く設定されている個人所得税を、実質的にさらに低下させる措置を講じて、国内消費を喚起する方針だが、他方でインフラ整備を中心にさらなる供給強化を進めており、その強気すぎるスタンスには大いに疑問を覚えている。この点、誰かにじっくり疑問をぶつけてみたいと思っている。
posted by ケン at 12:04| Comment(5) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ミクロでもマクロでもある程度時間が経たないと見えてこない事が多い中でやいのやいの言う情報源には斜に構えるが吉なのでしょう。

実装機の様にモデルチェンジサイクルが短い類には一部で買い控え傾向が見え始めている様です。電子基板製造は景況の影響を受け易く且つ中小規模業者が多い業界ですので、足下には顕著な影響が無くとも先行きが見えてくるまでは新規投資や刷新には慎重になるのだろうと思われます。まあこれも今後続く傾向なのかどうかは言い難いので経緯を見たい。

中国が握る米国債は結構ポイントと思うのですがこれを軸にしたオピニオンはあまり目にしません。米中間の物資・貨幣の取引量流通量の減に於いては、中国側には他市場開拓という手が有る一方で米側には穴埋め策に乏しい点にもあまり言及はされず、輸出品目や二国間での取引高の大小だけで論じられているものが殆ど。まあ、連邦財政の『破綻』に至る話かは分からぬにせよ米ドル建て資産の目減りリスク要因には成り得る訳で、これも経緯を見たい。
Posted by mashimo.koichi at 2018年10月10日 13:01
トランプ政権は当初、親ロシア路線かなと思わせるところがあって、これは、大変なことになったと思ったものです。米露が組めば、中国は押し込められちゃいますからねえ。

ところが、その後、ロシアはもとより、EUやイラン、メキシコ、カナダ、中国と手あたり次第に敵に回し始めて、大安心。いくら米国が最強覇権国とは言え、世界相手には無理ですからねえ。

むしろ、トランプ政権が米国の世界覇権の終了と地域覇権国並立の新時代への原因となりつつあるのではないでしょうか。

アメリカの対中制裁のからみで言えば、アメリカへの輸出が制限される分、日本市場を囲い込みに入るのではと思ったりもします。現に、サムスンを押しのけて、HuaweiやOppoが最近、目につくようになりましたし。

対米従属一本の外務省は別としても、既に国内市場より中国市場の方が販売台数が多い、トヨタ、日産等財界主流は中国に靡き始めている様子。
トランプ政権の目的は日本の対米黒字の大幅削減ですが、黒字の大半は自動車輸出が原因なので、ここを止められたら日本はニッチもサッチも行かず、必然的に対中接近せざるを得ないでしょう。

10年後、どっちが勝っているか、私は中国だと思ってますけど。
Posted by はなはな at 2018年10月10日 21:52
どの新聞社も中国に少なくない特派員を送っているはずですが、まぁ本国に都合の悪い記事は採用されないようで。いつの時代でも同じということですかね。
ソ連も国庫がカラになって行政がストップして自壊したわけで、連邦政府の閉鎖と再開を繰り返しているアメリカを見ると、超大国の行き着く先というのは、大体想像できるものです。

ただ、中国は中国で問題を抱えているわけで、その一つが巨大な人口と高齢化です。そして、自国の市場を上回る生産力。これがどうなるか、多くの中国人は非常に楽観的ですが、私はさほど楽観できないですね。
Posted by ケン at 2018年10月11日 22:33
丁度株価が芳しいですね。買うは遅く売るは早くの格言、気が付けばいつもその逆をやってしまっています。
Posted by mashimo.koichi at 2018年10月12日 12:55
まぁそんなものです。素人はギャンブルでも株でも儲かりませんよ。
Posted by ケン at 2018年10月12日 19:05
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