2018年10月24日

プーチン提案を拒否した代償は?

【<露大統領>「今後も領土問題話し合う」 日露平和条約巡り】
 プーチン露大統領は18日、9月に安倍晋三首相に提案した年内の日露平和条約締結について「問題を棚上げにしたり、拒否したりするのではない。今後も領土問題を話し合っていく」と述べた。提案を受けた安倍首相が「今の日本では受け入れがたい」と拒否したことも明かした。ロシア南部ソチでの会合で語った。
 プーチン氏はロシアが1960年代から中国と交渉してきた過程で善隣友好条約を結び、その後、国境の画定で合意に達した経緯に触れ「我々は信頼できる環境を作ってから、(領土)問題を解決した」と言明。日本に対しても領土問題解決に先立ち、2国間の信頼醸成を求めていく考えを繰り返した。
 プーチン氏によると、平和条約締結の提案を受けた後、安倍首相は「領土に関する原則的な問題を解決してから、平和条約を話し合う」との立場を伝えてきたという。プーチン氏はこの返答について「我々は70年間も足踏みをしており、終わりを見渡せない」と批判的な考えをにじませた。安倍政権は11〜12月に開かれる国際会議を利用し、最大2回の日露首脳会談を開きたい意向だが、双方の隔たりを改めて示した格好だ。
(10月19日、毎日新聞)


プーチン大統領の提案を拒否するのは良いが、では他に何か手があるのかと言えば何もなく、従前どおり「四島の日本貴族を決めてから平和条約」を主張するのであれば、交渉は完全にストップするだろう。
何度も述べているが、日露関係は、国内世論を抑えるだけの権威を持つプーチン氏と安倍氏がトップに居る間にしか打開できないと考えられる。それだけに、安易に拒否してしまったのは惜しい。

ケン先生的には、択捉と国後の共同利用、開発や漁業権に関する大まかな合意だけ行った上で、「領土問題は後回し」にするのが「相場」だろうと思われる。現状は、対露関係の改善こそが優先すべきであり、中米に挟まれて首が回らなくなる状況こそ回避すべき課題だからだ。ロシアとの敵対関係は早急に終わらせる必要があり、安倍総理もそこは十二分に理解していると思われるのだが、安倍氏の権威をもってすら打開できないほど、「日米マフィア」が強いことを想像させる。

もっとも、プーチン氏もいきなりそんな提案をすれば、反発の方が強いことは想像できなかったのだろうかと思わなくもない。もっとも、彼的には「何をグダグダやっているんだ!総裁選に三選した今やらなければ、間もなくレームダック化するだろうに」という判断があったのかもしれない。
現状では安倍氏の規定を変えての四選はさすがに困難と見られ、さらに自民党が単独で改憲案を出した場合、政権内の合意が難しくなって来年中の改憲は失敗に終わる可能性が高い。さらに参院選で消費税を争点にされて自民党が敗北した場合なども考えられ、安倍総理はレームダック化する可能性がそれなりに高い(現状では3割から4割くらいか)。だからこそ、プーチン氏もせっついているのではなかろうか。

これらを安倍氏やプーチン氏の責任にするのは安直である。
ロシアからの満韓交換の提案を蹴って、満州の権益を求めて開戦を選択、奇襲攻撃をかけた明治帝政の末裔は、身の程を知るべきであろう。強欲は己を滅ぼすのみである。

【参考】
日露開戦の代償−開戦経緯を再検証する


posted by ケン at 12:00| Comment(7) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
領土=国力の時代はすでに過去の話なんですから、北海道付属の2島返還でさっさと決着をつけて、サハリンからのガスパイプラインを通した方が日本のためですわ。

こう歴史の流れに乗ったり、大局感を持って外交を展開するということがどうしてもできない国ですよね、日本って国は。

安易に強度の近視眼的愛国心を煽った結果、自縄自縛になってしまったのには、笑えますわ。

衰退国家ってこういう風に没落、破滅していくのだと感じる秋の夜ってとこですかな。

枝野氏があえて平和条約と2島返還で決着し、日露新時代を切り開くべきと提案したら尊敬するけどなあ。

共産党みたいに票ほしさに変に領土に拘るよりも国民の未来の生活が大事だと割り切る政治家はいないか?

できるのは小沢くらいなんだよな、やっぱり。




Posted by はなはな at 2018年10月24日 20:01
アメリカとの密約がどうなっているのかわかりませんが、返還となった島には基地を作らないという条文は入れられるのですかね。ダレスが密約を結んでいたという話もありますが。

>択捉と国後の共同利用、開発や漁業権に関する大まかな合意

歯舞・色丹の返還だけでなく、択捉・国後でそこまで譲歩されたらもう十分、どころか大喜びですね。

「北方四島」とすり込まれ、洗脳された人たちがどういう反応をするのか、それを押さえ込めるのはケンさんが書いたように安倍氏の今しかないと思っています。
しかし、今日の所信表明演説を聞いていると長門会談と地元盛り上げ意識先行で領土問題にちゃんとケリを付ける気があるのか謎です。
Posted by TI at 2018年10月25日 00:20
正直、日本国は、明治から、もしかしたらそれ以前から延々と夜郎自大な国でしかないのかもしれません。

天皇などあるから、自分の身の程がわからん。

あるいは世界の流れと「道義」など、眼中にない。

天皇制の廃止と教育の改善。これしかないです。

でもそもそも今の日本帝国の指導層は夜郎自大であるのが誇りなり使命なのですから・・

やっぱ、滅びるしかないでしょう。

ではまた。
Posted by 遍照飛龍 at 2018年10月25日 17:54
ロシア側から安倍首相や日本政府の嘘を指摘する流れはちょっと違和感あります。

話をまとめたいなら、交渉相手の面子を潰すのは不味いのでは。
Posted by taka at 2018年10月25日 18:13
アルゼンチンのようにならないことを祈るばかりですが、どうでしょうねぇ。

中国では安倍氏は意外と「外交上手」との評価がありますよ。まぁ対米一辺倒とも見られていますが、ギリギリのところでバランスを取ろうとしているところはあります。カネをばらまくこともプラスに見られているところは、中国らしいかもしれません。

明治帝政を称賛する時点で権威主義を宣言しているわけですから、権威主義国からはシンパシーが感じられる面もあるかもしれません。
もっとも。どこと戦争しても勝てないところは戦前と異なるので、わずかながら安心できますが、中国と戦争しているのに米英に宣戦布告する国であり、それを称賛する連中が権力を握っているのですから、何が起こっても不思議はないとも言えます。

ロシア側はロシア側で痺れを切らしているのでしょう。散々あれだけ付き合ってやったのに、話がほとんど進んでいないのですから、「業を煮やす」のも致し方ないのかなと思います。
まぁあちらが上手にやっているとは思えませんが、他に手段もないのでしょう。
Posted by ケン at 2018年10月25日 19:17
改憲一番、日ソは二番、三時のおやつは文明堂。
改憲がギリギリなので優先順位一位に注力し、二位以降にはあえて素っ気なくしているのでは。改憲に失敗しても平和条約が残れば歴史的には充分だと思いますが、それでは物足りない欲張りさんなのでしょう。
改憲の野心がなければ合意していたなんて歴史秘話として面白くありませんか?
Posted by yb-tommy at 2018年10月26日 23:20
改憲プラス日ソ国交回復は、鳩山一郎氏の悲願だったわけで、その意味では安倍氏はその遺志を継いでいるとすら言えます。
なにぶん政治なので、簡単には割り切れないところもあります。かくいう私も本質的には改憲論者なのですから。
Posted by ケン at 2018年10月27日 22:49
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: