2018年11月26日

上海D&G騒動の顛末

【中国でD&Gの不買運動か】
 中国でイタリアの高級ブランド「ドルチェ&ガッバーナ」(D&G)の広告動画に「差別的」との非難が殺到した問題で、中国の大手インターネット通販サイトには22日までに同ブランドの商品が表示されなくなった。中国人有名女優も商品のボイコットを表明。不買運動が広がれば、D&Gの業績にも影響が及びかねない。ネット通販最大手アリババグループや2位の「京東集団」(JDドット・コム)のサイトではD&Gの商品を検索しても、関係ない別の商品が表示されるようになった。同様に非難されるのを恐れたサイト側が、D&G商品の表示を取りやめた可能性がある。
(11月22日、共同)

【D&Gデザイナーが謝罪=「中国侮辱」動画へ批判拡大】
 イタリアの高級ファッションブランド、ドルチェ&ガッバーナ(D&G)は23日、インターネット交流サイト(SNS)に投稿したショーの宣伝内容が中国を侮辱したとして批判が広がっていることを受け、創業者のデザイナー2人の謝罪動画を公開した。
 SNSに投稿された中国語字幕付きの動画では、ドメニコ・ドルチェ氏とステファノ・ガッバーナ氏が「自分たちの言動が及ぼしたすべてのことを残念に思う。世界中の中国人に謝罪する」と表明。「私たちは中国文化を深く愛している」と強調し、最後に2人で改めて中国語で謝った。
 D&Gは、箸で不器用にピザなどを食べるアジア系女性の短い宣伝動画を投稿。中国ではネット上で商品のボイコットを呼び掛ける書き込みが相次ぐなど、騒ぎが広がっている。店舗は営業を続けているが、大手電子商取引サイトでは商品が検索できない状況だ。
(11月23日、時事通信)

ケン先生の知り得た範囲で騒動を再構成したいと思う。
もともと「ドルチェ&ガッバーナ」が11月21日に上海でファッションショーを開催することになり、予告動画を制作、ネットにアップした。



これが「差別的」「侮蔑的」ということになり、中国国内で炎上、主催者であるD&G中国支社(に相当するもの)が動画を削除したところ、デザイナーのステファノ・ガッバーナ氏が「中国クソ」「バカ」「マフィア」「中国なんてもういらねぇ」などとツイッターで全開したところ、早速中国国内に紹介され、大炎上。

ショーに立つ予定だったモデル、女優を始め、招待客、スポンサーが次々と辞退。「今後D&Gとは仕事はしない」などの声明を発表。
当日のショーは全く準備できず、何の予告も無いまま中止。

時を前後して、デザイナーが「あれはアカウントが乗っ取られて発せられた陰謀」などとツイッターで呟いたため、さらに火に油を注いでしまう。
そして、大手通販サイトからD&Gの商品が全て削除されていった。
デザイナー氏自らが望んだように「そして何も無くなった」のである。

予告動画が掲載されたのは3日前。ステファノ氏の問題ツイートが発せられたのは、中国時間で21日午前6時頃と見られ、ショーは同日夜に開催予定だったことを考えれば、事態は「日本のいちばん長い日」並の速度で展開されたことが分かる。
もちろん当局が指導したものではなく、それだけに全体主義・愛国主義教育の恐ろしさが際立っている。
もっとも、現代日本人がヘイトスピーチなど差別に対する感覚を麻痺させているだけで、むしろ中国人の敏感さのほうが本来は真っ当なものであるという考え方もあるから、一概には言えないのかもしれない。この春には「日本人なんかがうちのデザイナーになったら、ドルガバも終わり」とのツイートもあったというからだ。

結局、騒動が大きくなり、中国市場から全商品が撤去されてから、D&Gはいやいや「謝罪」会見を行い、「私たちは中国文化を深く愛している」などと述べているが、もともと炎上商法で儲けてきた連中が白々しいにも程がある。というのも、D&Gは売上の三分の一を中国市場で賄っているため、中国市場を失うことは「本来ありえない」ものだという。であれば、最初から慎重であるべきで、ここまで自体を悪化させてからの謝罪は、「今さら中国市場が惜しくなったのかよ」「やるなら最後までやり通せ」「恥知らず」などと中国側を激昂させているが、時間が経てば収まるのかもしれない。
いずれにしてもお粗末な結果であり、ファッションブランドなど「無くても困らないもの」であるだけに、むしろ欧米デザイナーからの自立を促す良いきっかけになるのかもしれない。

【追記】
平素キャピキャピしている女子学生までもが、このときばかりは「欧米人の人種差別は許せない!」「不買運動なんて生ぬるい!」「侵略者のくせに!」などと人が変わったように(ネット上で)いきり立っており、さながら『ひぐらしのなく頃に』を眼前で見せられたような衝撃があった。
posted by ケン at 12:00| Comment(8) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「料理を箸で食べにくそうに格闘する姿を映したもので、箸を木の棒と呼んだり、ナイフとフォークのようにうまく食べられないことを揶揄するようなナレーション」

これ聞いて、なんというかアナクロだなあ、「細目で出っ歯の黄色いアジア人」みたいなステレオタイプな偏見持っとる人ってまだいたんだなあとしか。
今回の中国側の対応は特に問題ないとは思います。確かにあまりの出際のよさにはビビりますがwww

https://news.nifty.com/article/domestic/society/12184-44145/

むしろこっちの案件の方が、全体主義、という点ではヤバいなと思ったり。もっとも記事にある通りネットユーザーは猛反発らしいですが。

Posted by スパルヴィエロ大公 at 2018年11月26日 14:22
近代百年の歴史を鑑みれば、中国人の気持ちは理解できますし、正しい抗議だと思います。日本のマスコミは一般の中国人の感情や世論抜きに、当局の操作を匂わしますが、尖閣紛争時の反日騒動も、実は下から沸き上がった庶民の憤激が核であったと思わせる、今回の事件だったと思われます。
Posted by はなはな at 2018年11月26日 16:02

 どうも、ケン先生。
いやいや、いくらなんでも中国の人達、怒り過ぎですよ。
「激昂する」振りをして、自分たちに有利になるように
相手を誘導しているのかもしれませんが・・・。
中国の愛国教育(排外教育?)も困った物ですなぁ。
全く、最近は猫も杓子もファシズム、ですね。
我が日本国も、静かにファッショが進行中です。

ところで先生、もうすぐ大陸に渡られて3か月が経過しますね。
お変わりはありませんか?
大陸の食事はお口に合っていますか?
特に、お米の違いに戸惑った・・と、ブログに書かれて
おられましたね。いっそお粥にしてしまう・・と言うのは
いかがでしょうか。

どうか、お体には気を付けてください。

Posted by ムラッチー at 2018年11月26日 22:05
差別意識とは本来アナクロなものだと思います。「近代的な差別意識」というのはちょっと想像できないですよね。
表現規制は緩めたり、強化したりの繰り返しです。

差別に対する抗議については、私も当然のことだと思いますし、私もD&Gを許すことはできません。ただ、その発露の仕方が義和団事変の頃から変わらないなぁと思っただけです。だからこそ、当局も非常に神経質になっているのでしょうが。
逆に日本人は寛容すぎて嘗められるところもあるのかなと。

幸いにして、東北地方でつくっている「あきたこまち」が手に入り、美味しくいただいています。こちらにいる間は、中国産日本米で十分です。
Posted by ケン at 2018年11月27日 14:25
中国語は、というよりも日本語以外はさっぱりわかりませんが、これがファッションショーの広告ですか。アジア系の女性が箸で不器用にイタ飯?をつついている映像のように見えましたが。
ま、偏見なんてものは人間誰しもが持っているものですし、この動画を作った人はそう思っているのだろうとしか思いませんが、しかしこれを見て自分たちが笑いものにされたと感じた中国の人々がブチ切れたということですね。

思うに、この動画の作者さんは自らのアジア人に対するステレオタイプを晒し、「そんなわけねーだろwこいつこんな偏見もってやがるwww」という笑いをとるつもりだったのではないかという気がします。
イタ飯を箸で食う映像とファッションショーとはどうにも私の脳内では繋がりませんし、ならば別の意図があったのではないか、と。

考えすぎですかね。

関係ない話ですが、大陸の箸はなんであんなに長いんでしょう。
調理で鍋やフライパンをかき回すなら長いほうが便利ですが、食事に用いるにはもうちょっと短いほうが扱いやすいのではないかと思ったり。
Posted by とよたつ at 2018年11月27日 18:42
自分もどちらかというと、貴兄の感触に近く、「お馬鹿な映像つくってんな、ふざけすぎだぞ」くらいに思ったのですが、かのデザイナーは常日頃から差別的言辞を繰り返し、件の映像に対して中国人が反発した際にも、火に油を注ぐ差別発言をしたことが、事態を最悪の物にしたのです。

この映像に対する反応ですが、「ジョーク」ととらえるか「人種差別」と捉えるかは人次第なのですが、差別と見られた以上は、危機管理上は差別として対処するほか無いのです。

大陸の箸は、たぶん遠いところにある料理を取るために長くなったんだろうと思います。
Posted by ケン at 2018年11月28日 16:04
言葉がわからないので視覚だけの感想なのですが、そもそも単純に退屈なんですよね。これの何処に購買意欲を喚起する要素があるのか理解できない。差別表現がツールにもなっていない様な。こりゃ不愉快にもなるわな。。。
Posted by mashimo.koichi at 2018年11月28日 23:48
怒るのは十分に理解できますが、問題はその後の火の広がりようと、対応の酷さとバカバカしい結末ですね。ちょっと日比谷焼打事件に通じるものがあります。本当にD&Gの店舗やショー会場が焼き討ちされたわけではありませんが、やりかねない勢いでしたから。
Posted by ケン at 2018年11月30日 14:19
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