2018年11月30日

外国人技能実習制度さらに拡充へ

【技能実習に「宿泊業」追加=新在留資格の人材確保狙う】
 政府は外国人が日本で職業訓練を受けるための在留資格「技能実習2号」の対象に、宿泊業を追加する方針だ。
 政府が今国会成立を目指す出入国管理法改正案は、技能実習2号を修了した外国人が新たな在留資格「特定技能1号」に無試験で移ることを認めている。技能実習2号の対象拡大で特定技能1号の人材を確保する狙いがある。
 技能実習は日本の技術を途上国に移転するため、外国人に日本で働いてもらう制度。入国1年目の技能実習1号、2〜3年目の2号、4〜5年目の3号がある。一方、衆院で審議中の入管法改正案は、技能実習2号の修了者は特定技能1号取得に必要な試験を免除すると定めている。
 ただ、特定技能1号の対象14業種のうち、宿泊業と外食業は技能実習2号の対象になっていない。このため、与党内から「技能実習2号の対象業種を拡大し、特定技能1号の人材供給源にすべきだ」との声が上がっていた。
 観光庁の金井昭彦審議官は21日の衆院法務委員会で「技能実習2号の対象に宿泊業を追加すべく、検討を重ねている」と説明。理由として「わが国の宿泊業はきめ細やかなサービスや清潔感が特徴。観光が重要な産業である場合が多い途上国では技能習得のニーズが高い」と語った。
 政府は、5年間で最大34万5000人と見込む特定技能1号取得者のうち、45%は技能実習2号からの移行組とみている。野党は、新在留資格は技能実習制度と「密接不可分」で、新資格の導入よりも失踪者が相次ぐ技能実習制度の問題の解決を優先すべきだと主張している。
(11月24日、時事通信) 

この問題はすでに何度も繰り返し論じているが、過去ログを再掲しながら触れたい。
日本の場合、労働基準法が形骸化しており、超長時間労働や残業代不払いなどのブラック労働が放置されているため、供給を抑制する仕組みが働きにくい。
仮に欧州標準の労働規制がある場合、コンビニや飲食店あるいは様々な分野のブラック企業は成立し得ず、低収益となって廃業あるいは倒産し、余剰労働力が生まれる構造になっているが、日本の場合、不採算の企業でも超長時間労働や残業代の不払いで延命できるため、生産性の低い企業が市場から淘汰されない仕組みになっている。
結果、低収益の企業が労働力も資本も握り続け、成長可能性のある新興企業が労働力の確保に難儀し、成長が抑制される構造に陥っている。これは、まさに1970年代以降のソ連や東欧で見られた現象である。

こうした状況を放置したまま超低賃金の外国人労働者(実質奴隷)だけ導入したのが、外国人技能実習制度だった。その結果、地方の低収益の既存企業が延命したという点では成功したかもしれないが、地場の雇用には何のプラスにも働かず、超低賃金であるために消費にも全く貢献せず、言うなればアナログのオートメーション工場が地方にできただけの話に過ぎなかった。それでも高収益であるならば、自治体に納税することで一定のプラス効果もあったかもしれないが、そもそも外国人奴隷の導入を必要とする企業は、超低賃金の労働力無しでは成立し得ない超低収益構造にあり、納税に期待などできないのが常だった。
人手不足で外国人は必要か

政府や財界が主張する「労働力不足」というのは、「低賃金で長時間働かせられて、かつ社会保険等の負担が必要ない労働力」のことであって、人道上の概念に相当する人間のことではない。
本来であれば、必要な労働力は賃金や待遇などを改善することで確保できるはずだが、高賃金が保障できない低収益・低生産性の企業がこぞって政府に圧力をかけ、自民党やKM党が同調したことで、「外国人奴隷制度」が成立している。

中国に来て思うのは、人海戦術的な部分も根強く残っているが、他方でキャッシュレス化を始め、自動化がものすごい勢いで進んでいるということである。ロクにキャッシュレス化も進まず、低賃金の前近代的な労働力動員に依存する日本と比較した場合、生産性の差は今後拡大する一方だろう。

つまり、日本では超低賃金労働に依拠しなければ採算が確保できない低収益産業と企業がどこまでも淘汰されること無く生き残り、資本と労働力を囲い続けることになる。そして、技術革新や構造改革が起きない社会となる。これは、一面で1970年代のソ連と同じ状態であることを意味する。
本来であれば、低収益で労働力を確保できない産業は衰退し、余剰した資本と労働力が新産業に流入することで、産業構造が変化し、成長が維持される。日本は自らこのサイクルを否定する流れにある。

コンビニや飲食店、小売業などは過剰供給にあるだけの話で、本来であれば、数を減らせば良いだけの話だろう。
宿泊業については欧米諸国に比して低すぎる価格設定が従業員の待遇を悪いものにすると同時に、「働き手不足」にしているわけだが、デフレ下で誰も価格を上げようとしないから悪循環に陥っている。民泊などを導入して、その傾向はさらに悪化していると言える。
農業や漁業については、本来自動化や大規模化を進めるべきところを、外国人奴隷制度などがあるために、従来の生産性の低い業態が存続してしまっている。これらは、本来はAIやロボットを導入して効率化すべきところを、「安価な労働力」があるために構造変化がもたらされること無く、前近代的な業態が存続することを意味する。

結果、特に地方を中心に市場価格の半分以下で雇える外国人奴隷によって産業が維持され、労働価格が超低レベルで維持される上、新産業が育たず(起業が発生しない)、奴隷を雇っている企業主まで含めて全員定収入であるため、税収も上がらず、数少ない若年層は都市部に流出、あるいは地元に戻る機会も与えられず、ひたすら衰退の一途を辿ることになる。技能実習制度は、利用者の低収益が故に、同制度なくしては事業の存続ができず、地元政治家や官僚との癒着を深めるほかない。
同時に、その低収益性が故に、事業が継承されることは無く、今の世代でほぼ壊滅するものと思われる。だが、その頃には地方には事業を再生産するだけの体力が残っておらず、ソ連崩壊後の廃墟が如き様相が日本全国で見られることになるだろう。

日本は明らかに誤った政策を採って、自ら衰退を招いている。それを糊塗するために、五輪や万博などで「起死回生の一発」を打とうとしているが、これは明らかに「負けが込んできたダメな博打打ち」の姿なのである。
posted by ケン at 12:00| Comment(4) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
先日「おはよう日本」の「精密農業」特集で、イスラエルから技術提供を受けAIとドローンを活用している農家を取材していましたが、まあこんな資金力のある事業者は稀でしょうしね……。
大規模化に関してはどうやっても土地が有り余るアメリカやオーストラリアに太刀打ちできないということで、よほど高付加価値のある特産品の栽培に特化してあとは輸入で、ぐらいしか日本の農業の農業が生き残る道はないのかなと。(でもそれすらもできないから今日の事態があると……)
Posted by スパルヴィエロ大公 at 2018年11月30日 17:58
こないだ店員が皆外国人のたこ焼きチェーン店に入った際に息子から外国人店員をあちこちで見る理由について訊かれました。

似た様な店が乱立する→安くしないと客が来ない→店員に高い給料を払えない→低賃金を嫌がり店員が減る→低い給料でも働いてくれる外国人を雇う、という大雑把な事情を説明したところ、

『仕事が同じなら日本人も外国人も給料同じじゃなきゃおかしいじゃないか』

『それじゃあお客さんじゃなくて店員さんからお金を取っているということじゃないか』

『頑張って他のお店より美味しいたこ焼きを作ったら高くてもお客さん来るじゃないか』

と、尤もな突っ込み。

こんなの9歳の子供でも分かる理屈なのですよ。

それがもう現状の日本では色々とやらかしちゃって、ブラックの横行やら外国人技能実習制度という奴隷制度やら足元では入管法改正やら何やら。。。恥ずかしくて子供に説明出来ん。。。
Posted by mashimo.koichi at 2018年11月30日 21:33
まあ、隠してはいかんですから説明してますけどね。。。
Posted by mashimo.koichi at 2018年11月30日 21:36
大規模化って、土地の大小だけの話じゃないんですよね。個人営農の形態自体が時代にそぐわないわけで。例えば、戦後の農地解放で土地を小作人に与えた結果、土地が細分化されて、変な形で住宅化されたり、道路になったり、あるいは農業やらないのに売らなかったりで、逆に集約できなくなっています。

個人単位で最新の農業機械なんて導入できませんし、そのために存在したはずの農協は機能していません。
現代で言えば、個人レベルでロボットや無人機なんて買えませんよね。

いやはや子どもの観察力は大したものですね。
説明する方も苦しいですが、その世界でどう生きていくか、助言するのも大変です。
自分は子どもはいませんが、助言の一助くらいになればとは思います。
Posted by ケン at 2018年12月01日 20:34
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