2019年03月31日

EU離脱協定案で瓦解する英国の議会制民主主義

【「裏切るな」怒る英市民 EU離脱協定案、3回目の否決】
 英国が欧州連合(EU)から抜ける条件を定める協定案が29日、英議会下院で三たび、否決された。当初、同日午後11時(日本時間30日午前8時)に離脱するはずだった。離脱支持の市民は「約束が違う」と怒る。英政府・議会は、あと10日余りで英国が向かう道の最終決断を迫られる。
 下院は29日の採決で、メイ氏がEUと合意した離脱協定案を賛成286、反対344で否決した。58票差となり、1回目(1月15日)の230票差、2回目(3月12日)の149票差より負け幅は縮まった。
 今回、将来の通商関係の大枠を示す「政治宣言」を対象から外し、離脱後の移行期間などを定めた協定案に絞って採決。メイ氏は「可決されれば辞任する」と退路を断ち、反発する勢力の支持を得ようとした。それでも可決できなかった。協定案にある北アイルランドの国境管理の規定への反発のほか、EUとの合意なしの離脱でもいいという勢力が動かなかった。
 英国会議事堂周辺は29日、離脱を実現できない政治に、怒りと不満をぶつける人であふれかえった。「民意を尊重しろ」「裏切るな」などと書かれたプラカードを掲げた参加者が英国各地から集まった。
(3月31日、朝日新聞)

もう一つの問題は、国民投票自体の難しさである。「EUを離脱するか、残留するか」という重大な社会的選択を、「イエス、オア、ノー」二択で決めてしまい、しかも超僅差で決定しまったことは、今後の意思決定に重大な禍根を残す恐れがある。具体的には、スコットランドの独立が再燃したり、他のEU諸国でも離脱が加速したりする懸念がある。
国民投票は、デモクラシーを構成する重要な要素かもしれないが、その運用はごく慎重であるべきだと考える。
英国でもエリート不信、2016/06/25)

概ね私が指摘した通りになっている。
イギリスの場合、そもそもEUに加盟するメリットが小さかったにもかかわらず、「バスに乗り遅れるな」的なノリで加盟した結果、過大な供出が求められる一方で、移民やら難民やらを押しつけられ、安価な労働力を使用する資本家はボロ儲けしたが、それ以外の層は圧倒的に赤字超過に陥ってしまった。

本来、EUは「欧州大陸で戦争を起こさない」ためのシステムで、本質的には「独仏同盟」だったはずだが、フランスが衰退する中で、実質的に「ドイツ帝国」と化してしまっている。
また、安全保障面ではアメリカの影響力が大きすぎるNATOへの対抗手段としてEUに価値が求められた。だが、アメリカの権威を利用するイギリスにとってはNATOにさえ入っていれば、EUに入るメリットは無かったはずだが、そこを見誤ってしまった。

こうした問題は本来英国議会で調整されるべき課題だが、議会での調整が不可能になり、議会で主導権を得ようとした保守党のキャメロン氏が国民投票に踏み込んだ結果、完全に収拾が付かなくなってしまった。
今回の離脱案にしても、国民投票に従うなら、否決するのは「主権者に対する離反」になってしまうし、離脱案の内容に不備があるのであれば、議会内で調整すべきものであるはずだが、どちらも不可能になっている実情は、議会制民主主義の破綻を意味している。

もっとも、EUはEUで民主的正統性を持たないEU官僚が財政に絶対的権威を持っており、こちらはこちらでデモクラシーの根源が侵されつつある。東欧に権威主義政権が続々と誕生し、南欧が統治不全に陥りつつある現状は、日本では十分に報道されていないものの、非常に深刻な事態にある。

日本の場合は東欧型の権威主義政治をもって、危機の打開を図ろうとしているわけだが、排外主義の高まり、財政危機、政治的無関心と腐敗の蔓延など、それはそれで困難を抱えている。
英国の問題については、下記の記事で言い尽くしているので、参照して欲しい。

【参考】 英国でもエリート不信
posted by ケン at 10:33| Comment(0) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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