2019年06月01日

年金の自助努力を謳った政府が大炎上?

【人生100年時代の蓄えは? 年代別心構え、国が指針案】
 人生100年時代に向け、長い老後を暮らせる蓄えにあたる「資産寿命」をどう延ばすか。この問題について、金融庁が22日、初の指針案をまとめた。働き盛りの現役期、定年退職前後、高齢期の三つの時期ごとに、資産寿命の延ばし方の心構えを指摘。政府が年金など公助の限界を認め、国民の「自助」を呼びかける内容になっている。
 報告書案「高齢社会における資産形成・管理」として、金融審議会で示した。

 平均寿命が延びる一方、少子化や非正規雇用の増加で、政府は年金支給額の維持が難しくなり、会社は退職金額を維持することが難しい。老後の生活費について、「かつてのモデルは成り立たなくなってきている」と報告書案は指摘。国民には自助を呼びかけ、金融機関に対しても、国民のニーズに合うような金融サービス提供を求めている。
 報告書案によると、年金だけが収入の無職高齢夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上)だと、家計収支は平均で月約5万円の赤字。蓄えを取り崩しながら20〜30年生きるとすれば、現状でも1300万〜2千万円が必要になる。長寿化で、こうした蓄えはもっと多く必要になる。
 まず、現役期は「少額からでも資産形成の行動を起こす時期」と説明。生活資金を預貯金で確保しつつ、長期・分散・積み立て投資を呼びかけた。具体的な方法として、年40万円まで20年間非課税で投資できる「つみたてNISA」や、個人型の確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」などをあげた。出産や住宅購入などの生活設計に応じた預貯金の変化や家計収支を「見える化」することも、効果的な対応として触れた。
 定年退職者のほぼ半数は、退職時点か直前まで退職金額をわかっていないのが実情だ。このため、退職前後の時期は、退職金がいくらかや使い道などのマネープランの検討を勧める。
 高齢期は、資産の計画的な取り崩しを考えるとともに、取引先の金融機関の数を絞ったり、要介護など心身が衰えた場合にお金の管理をだれに任せるかなどを考えたりしておくことを、課題としてあげている。
(5月23日、朝日新聞)

どうやら本記事が元になって、「保険料納めさせておいて、後は自分でやれとは何だ!」といった類いの怨嗟が溢れかえり、金融庁の電話も一時鳴りっぱなしだったと聞く。
これはご愁傷様としか言い様がなく、率直にご同情申し上げる。
エリートがエリートらしくデータに基づいて率直に現状を述べたところ、ロクに報告書も読まずに逆ギレされたような話だからだ。
こんなものは多少社会保障をかじったものなら当然の話で、逆ギレが恐くて触れないだけのことなのだ。

そもそも年金制度が確立した頃(1960年、岸内閣の国家社会主義的政策)、男性の平均年齢は68歳、60歳時の平均余命は約15年だった。つまり、60歳で定年して15年間年金を受給するというモデルだった。65歳以上の高齢人口の割合は7%しかなかった。
これに対して、現在はといえば、男性の平均年齢は78歳、65歳時の平均余命は約19年である。つまり、年金受給開始年齢を5年繰り上げてなお、4年分の受給額が増えている。これが女性になると、65歳時の平均余命は24年で、平均して24年間年金を受給する計算になっている。それ以上に問題なのは、65歳以上の高齢人口の割合が35%に達していることだ。

単純計算すると、総受給額で25%の増加、現役負担は5倍(7%から35%)になっていることを示している。
平均余命は今後さらに伸びると考えられ、高齢人口の伸び率は抑えられつつあるが今後20年間で高齢化率は40%に達する見込みだ。
これまでは、少子高齢化も経済成長も「甘い見通し」で語られてきたが、現実を直視した場合、従来のモデルを維持するのはとっくの昔に無理になっていた。
現状でも例えば2016年度を見た場合、国民年金の歳入は45%が税金で占められ、厚生年金も19%が年金になっている。この割合は今後も増えると見られるが、税投入が増えれば増えるほど財政赤字が増え、他の一般行政にしわ寄せがいくと同時に、国債の暴落が近づくことになる。仮に年金制度が維持できても、国家財政が破綻して大インフレが発生した場合、年金などあっという間に雀の涙になってしまうだろう。その姿は、ケン先生自身、ソ連崩壊後のロシアで見てきたものだ。

現行の受給水準を維持するためには、年金額を抑えるか、現役層の保険料負担を増やすかのどちらかしかない。
しかし、現役層が過度に少なくなっている現状で、その負担を増やした場合、少子化が加速し、大衆消費が減少するところとなって、そこには絶望しかない。
苦しい選択ではあるが、比較的マシな選択肢は年金額を抑える、ないしは受給開始年齢を上げるという話にしかならないだろう。結果、「70歳まで働け!」ということになるわけだが、私も個人的には「俺に死ねというのきゃ!」と言いたいが、理性的、客観的に検討して「他に選択肢はない」くらいの状況にある。
年金受給額も今後は少しずつ目減りしていくだろう。

恐らく政府の主張は「最低限度の生活費分くらいは何とか維持するよう頑張るから、残り分は各自で頑張って欲しい」くらいのものだったと思われる。
確かにここまでの少子高齢化を招いてしまったのは政府の失策ではあるわけだが、今さらそこを責めても仕方あるまい。かといって、激高するリベラル派が主張するように、政府のクビをすげ替えたところで、年金財政はいまさらどうしようもない。何せ現役層が負担して高齢層が受け取る、足りない部分は税金という構造は変えようがないのだから。せいぜいできることは、株に投じてしまった基金を引き上げて、国債などに戻すことくらいだが、それもタイミング次第では株価大暴落を引き起こし、「元も子もなくなる」可能性もあるのだ。

とはいえ現状、子どものいる中低所得層は絶望的状況にある。住宅と学費で巨額の負債を抱え、貯蓄はゼロに近く、その上年金は「受給開始年齢は引き上げます」「受給額も今後減ります」「足りない部分は予め何とか努力してください」と言われては、逆ギレするのも宜なるかな、ではある。
もっとも、逆ギレに対して逆ギレするなら、「貧乏のくせに家を買ったり、子どもをつくったりするな!」という話になってしまうわけで、やはり水掛け論になってしまうので、ここは諦めるか、海外に活路を求めるほか無いと考えられる。
posted by ケン at 12:00| Comment(6) | 財政、社会保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
確かにそうですが、責任者は罰せられない。

となると「革命じゃ!!」日本以外では・・・


まあ、この悪辣な日本政府って気づかない日本人の自業自得。



この「無責任逃げ切り万歳体制」を治さんと年金が仮に奇跡的に改善しても、どこかで破たんしますよね。


良い文章ありがとうございます。
Posted by 遍照飛龍 at 2019年06月02日 14:12
いまの政治はババ抜きになっていまして、「ゲーム終了時にババを持っていたら負け」なので、とにかく誰にババを引かすかという話になっているわけです。
リーマンショックの時は自民党は上手に民主党にババを引かせて逃げたわけですが、次は無さそうですよね。
年金基金を株に突っ込む話も、とりあえず今ゲーム終了になったら困るから、一時的にバブルを起こして延長戦だ、というところなんだと見ています。
Posted by ケン at 2019年06月03日 16:16
わかりきった確認的な内容ですが、
海外分散投資まで勧めたのは驚きです。
まあ日本株にはごく一部除いて先が無いんですが。
ここで海外に投資させて国債の入札大丈夫なのでしょうか?
このタイミングで発表して選挙は?
官僚の良心が発表させた?まさか!!

うーん……
Posted by taka at 2019年06月04日 00:57
タイミング的には、消費増税の必要性を強調するためと考えるべきでしょう。
海外分散投資を勧めているのは、おっしゃる通り、大蔵官僚の(せめてもの)良心のなせる業かもしれません。
ここまで来ると、もはや国債の大暴落か超インフレのどちらかを想定せざるを得ませんから。
Posted by ケン at 2019年06月04日 20:49
 国際分散投資は機関投資家の間では90年代から行われてたわけで、国内資産のリスクが高まったわけではなく、純粋にポートフォリオ理論のリスク分散を一段階拡張したまでと思います。背景としては個人投資家の外貨建資産への投資手続きのハードルが下がってきたのと同時に、金融ブローカーに新たな手数料を落としてもらうことを期待しているのでしょう。

 国際分散もグローバル化のためリスク分散効果が低下しており、文字通り聞いたこともないジャンクを掴まされるリスクも生じるので、私は主要国国債以外には手を出さないことが望ましいと考えます。
Posted by ybtommy at 2019年06月07日 00:16
日本の20年遅れはいつものことですが、「儲かる空間」が狭まりつつある、あるいはこれ以上拡大しないことが明白である以上、より利益を上げるためには、よりリスクのあるものに手を出さざるを得ないのが現状です。

これらは市場の成長神話に基づいているわけですが、今後は低成長時代、あるいは停滞を前提とした制度設計にする必要があるわけです。
しかし、誰も恐くて言い出せないというのが現状でしょう。
Posted by ケン at 2019年06月08日 11:14
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