2019年06月05日

従業員に年200万も出せない「先進国」

【最低賃金、時給1千円は「全国から悲鳴」 日商が要望書】
 日本商工会議所が28日、最低賃金の引き上げを推し進める政府方針に反対する要望書を厚生労働省や自民党に提出した。経済財政諮問会議では早期に時給1千円にする意見も出ているが、「大幅な引き上げは中小企業の経営を直撃し、事業の存続を危うくする」と訴えている。
 6月にまとめられる政府の「骨太の方針」や、今夏の中央最低賃金審議会に向けて働きかけていく考え。
 政府は2015年、最低賃金を年3%程度引き上げる目標を掲げ、3年連続で3%を超える引き上げを実施した。日商の調査では「最低賃金を下回ったため、賃金を引き上げた」と回答する企業が毎年増え、今春は38・4%。しかし、この数年の中小企業の賃上げ率は1%前後にとどまる。
 日商は「支払い余力の乏しい中、実力以上の賃上げを強いられている」「全国から悲鳴にも近い声が寄せられている」と指摘した。
(5月28日、朝日新聞より抜粋)

日本の企業(事業者)の99%以上は中小企業であり、被雇用者に占める割合は約7割。そのうち約4割が「最低賃金を下回ったため、賃金を引き上げた」とのこと。最低賃金は地域や業種で異なるが、おおむね850円から950円程度。月20日労働で換算した場合、年収200万円に遠く及ばない。ほとんど生活保護水準であり、世帯人数にもよるが、「健康で文化的な最低限度の生活」とはかけ離れた生活を余儀なくされる。
この数字だけ見ても、政府統計の「給料は上がっている」「国民は生活に満足している」が虚飾にまみれた大嘘であることが分かるだろう。

これは常々言っていることだが、本来資本主義社会では、こうした低採算の企業や事業は淘汰されて、淘汰されたことで余剰した資本と労働力が、新たな産業や事業に投入されることで、経済成長を遂げるというモデルが想定されていた。
これに対して、ソ連型社会主義では、失業や倒産そのものをイデオロギー的に「悪」と見なし、雇用と企業を完全保護した結果、国民経済と市場の成長が止まり、企業の採算や生産効率は殆ど改善されることなく、長期停滞が続き、国家そのものが頓死してしまった。
実は、日本は果てしなく後者のソ連型社会主義に近づいている。しかも、労働者に対する保護は殆ど無いのだから、「企業社会主義&労働者自己責任」という、企業家天国と言える。

「健康で文化的な最低限度の生活」という憲法理念を具現化させるためには、少なくとも時給1500円と雇用形態に関係なく社会保障の適用を行うべきだが、これを主張するNK党と社民党は殆ど支持されていない。この点は、曲がりなりにもホームレス以外は投票権が認められているだけに、有権者の自己責任と言える部分だろう。

超低賃金で労働環境が劣悪な中小企業が圧倒的多数を占めている現状では、いつまでも低採算の企業が残り、資本と労働力に余剰が生じない。
いわゆる「労働力不足」が生じているのも、この手の低収益企業がゾンビ化して生き残っているためで、超低賃金で労働集約的に働かせるため、生産が効率化されず、労働力に余剰が生じず、賃金が低迷して消費が増えないという構造になっている。
日本は中小企業の割合が他の先進国に比べて大きいと言われるが、それは自民党の基盤が地方の中小企業家に依拠しているところが大きい。その結果、歴史的に中小企業の優遇が行われてきて、制度として固着している。中小企業に対する優遇税制は非常に充実している上、各種補助金も整備されているが、例えばスウェーデンなどの北欧諸国では、中小企業に特化した優遇税制や補助金制度は無いというし、そもそも企業に対する優遇税制や補助金自体が非常に少ないと言われる。
逆に1980年代のソ連では、国家財政の約2割が国営企業の赤字補填に充てられており、ペレストロイカにおける重点改革項目だったが、ついぞ実現できずに終わった。日本は同じ轍を踏もうとしている。

日本の政治家(国会でも地方でも)にとって、最も重要なのは献金してくれる支持者に対して、優遇税制や補助金の適用を斡旋することであり、それが政官業の癒着と腐敗を生むと同時に、地域と国家の低収益構造を構築している。実はこの構造はNK党も当てはまる。

仮に最低賃金のことは脇に置くとしても、規模を問わず企業に対する税制優遇と補助金制度、そして公的融資制度は90%以上撤廃して、低収益・非効率な企業を全面的に淘汰する必要がある。
ソヴィエト学徒からの警告である。

【追記】
5月29日、日経新聞より。
「日本の競争力は世界30位、97年以降で最低 IMD調べ」
「日本は判断基準となる項目別で、「ビジネスの効率性」が46位と低く、ビッグデータの活用や分析、国際経験、起業家精神は最下位と厳しい。IMDは企業の生産効率の向上に向け、働き方改革や人材開発を一層進める必要があると指摘した。「政府の効率性」も38位で、巨額の政府債務や法人税率の高さなどが重しになっている。」
posted by ケン at 12:00| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
<中小企業に特化した優遇税制や補助金制度
この点にもっと我が国のネオリべ勢力が踏み込んでメスを入れられれば、もう少し評価してやってもよかったのですけどね。
地方創生に関わる話でも、補助金にわけのわからぬコンサルが群がってわけのわからぬプロジェクトにカネが浪費される惨状とか。
Posted by スパルヴィエロ大公 at 2019年06月05日 17:54
2000年代に猛威を振るった日本のネオリベは結局のところただの利権屋だったわけで、例えば派遣労働者を使ってくれる事業者が減ってしまうと困るわけですよ。
別に日本の経済市場を合理化することが目的じゃ無かったってことです。
Posted by ケン at 2019年06月06日 21:06
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