2019年07月05日

一生懸命日米安保の価値を称揚する喜劇

【防衛相、日米安保は片務的でない トランプ米大統領発言で】
 岩屋毅防衛相は2日の記者会見で、日米安全保障条約を「片務的」「不公平な合意」としたトランプ米大統領の指摘は当たらないとの認識を示した。日本は基地を提供していることを踏まえ「両国の義務は同一ではないが、全体として見れば双方の義務のバランスは取れている」と述べた。
 日本による在日米軍駐留経費負担について「米国の同盟国の中では、最も高い割合で負担している」とも語った。
 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」配備計画を巡る防衛省調査で不手際が相次いでいる問題を巡り、岩屋氏は配備候補地がある山口県の村岡嗣政知事らと県庁で3日に会談する予定。
(7月2日、共同通信)

政府としては特に対応しないと言いながらも、気になって仕方が無いご様子。
喩えるなら、ソ連軍の撤退を打診された東独のような状態なのだろう。
自民党と霞が関の権力基盤はアメリカにあり、その物理的担保として在日米軍が駐留しているためだ。
ソ連の支援を失った東欧諸国が体制を崩壊させたのと同様、アメリカの支援を失った日本の戦後体制は東欧圏ほど劇的ではないにせよ、瓦解すると見て良い。

政府関係者は日米安保を「日米同盟」と言い換えることによって、その片務性を補ってきた。
日米安保は、もともとアメリカを宗主国とする西側陣営が、極東地域において中ソを封じ込めるためのシステムとして成立した。
アメリカは日本、韓国、台湾を極東の防波堤と見なし、日本に親米政権を樹立して、中ソ封じ込めのための軍事力と親米政権を守護する武力の二重の意味で、在日米軍基地が設置された。これは今となっては理解が難しいが、例えば昭和帝などは自国軍に対する圧倒的不信と武装蜂起を狙う共産党などに対する抑えとして、米軍の駐留を懇願している。
また、日本政府としては在日米軍があることによって、軍事費の支出を抑えられ、国内のインフラや社会保障の整備に回すことができ、高度経済成長の要因にも繋がった。

ところが、1990年代に冷戦体制が瓦解すると、「中ソを抑える」「極左勢力対策」としての在日米軍の価値が急低下した。そのため、日本政府は自衛隊を海外派兵してPKO活動などに従事させることにより、極東地域外における米軍の活動を支援する方策を模索し始めた。いわゆる「思いやり予算」が現在の形になったのは1990年前後のことだった。これらは「日米同盟のコストが上昇した」ことに対する日本政府の対応とみて良い。

今日では、アジア地域における中国の覇権確立は避けられない情勢にあり、アメリカとしてはいつまでも「封じ込め戦略」を続けることは難しくなっている。朝鮮半島の和解と在韓米軍の撤退は、さらに拍車を掛けるだろう。
日本にとっては、「沖縄に在日米軍基地があれば、万が一中国がミサイル攻撃してきた場合でも、アメリカが自動参戦する」メリットがある。これに対し、米国大統領としては中国のミサイル攻撃を受けるような場所に、米軍基地や米兵の家族を住まわせておくこと自体が「非人道的」ということになる。技術革新が進んだ現在、最前線に大規模な米軍を駐留させておく必要は非常に低下しており、デメリットばかりが大きくなっている。

まして米国内では、オフショア・バランシング戦略のように「地域の安全保障は地域の当事者間で担わせ、アメリカはあくまでアドバイザー的役割に徹する」考えが強まっている。つまり、アメリカが主体、日本が従属国として、「中露を封じる」戦略など完全に時代遅れのものとなっている。
この辺のアメリカ側の意図が読み取れない、または故意に無視しようとしているため、日本側の対応は完全に喜劇となってしまっているのである。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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