2019年07月27日

参院選2019を分析する・下

(前回の続き)
 もう一つの問題は、比例代表の制度上の不具合である。今回の選挙から比例代表に「特定枠」制度が新設された。これは政党が当選者の優先順位をあらかじめ決めることができる制度で、特手枠に指定された候補は、個人の得票に関係なく、名簿の順に当選が決まる。但し、特定枠を設けるかどうかは政党の裁量に委ねられている。もともと参議院の比例代表制は拘束名簿式で、政党の得票率に従って名簿順に当選者が決まる仕組みだったが、2001年の参院選から非拘束名簿式が導入され、比例代表の当選者は名簿順では無く、個人の得票数に応じて順位付けされるようになった。つまり、制度改変が屋上屋を建てるように行われた結果、非常に分かりにくいシステムになってしまったのだ。
 その結果、例えば「れいわ新選組」の山本太郎候補は99万票からの個人票を獲得したにもかかわらず落選する一方、特定枠の候補者は全く選挙運動せずに(公選法で個人の選挙活動が禁止される)当選している。また、公明党の最終当選者は1万5千票余りで当選している。これは、「多数者の支持を得た者が主権の代行者となる」「複数の候補が主張を競い、有権者の選択を仰ぐ」という代議制民主主義の原理が問われる事態だと言える。

 最後になるが、今後の政局の動きにも触れておきたい。今回の選挙で与党と維新が3分の2を得られなかったこと、そして今年10月に消費増税が行われることで、今後憲法改正はますます難しくなってくるものと考えられる。また、安倍晋三氏の自民党総裁の任期は2021年の9月までで、今のところ規約で4選が禁じられているため、再選もない。そのため、安倍氏の権威は今後レームダック化し、自民党内の後継争いにシフトしてゆく可能性がある。これを回避し、総理総裁としての指導力を維持するためには、衆議院を解散して総選挙に打って出る選択肢があるが、消費増税後には景気が悪化する蓋然性が高く、非常に難しいだろう。
 野党は野党で、弱小政党が乱立する状況が続いており、自民党に対抗するだけの理念も政策も打ち出せていない。政権党に対する支持が盤石な中で、乱立する野党内で政権批判票を奪い合う構図は当分続きそうだ。中でも「れいわ」がその動きの中心となって、さらにNKや社民の票を食うのか、立民や国民と合併あるいは吸収してゆくのかがポイントとなるだろう。立民と国民はともに影響力を弱めてゆく中で、連合との関係も悪化、さらに衰退して行く可能性がある。もっとも、「れいわ」も山本太郎氏が「四番ピッチャー」を務める政党である上、理念も組織も無いので、一過性のポピュリズム運動に終わる可能性も十分にある。いずれにしても、野党側には殆ど展望らしいものが無い。
この状況は与党にとって都合が良いため、現行の衆議院の任期満了となる2021年までは、政局上の大きな変化は生じない可能性が高そうだ。

【追記】
ポピュリズムとは、既成政党が民意の受け皿になり得なくなった時に発生するもので、新たな政治運動や政党が生じて、既成政党から支持が流れる現象を指す。本来的には、価値中立的な概念だが、「既存の体制に対する疑義あるいは挑戦」という意味で、ネガティブな評価を込めて使われるケースが多い。20世紀で言えば、イタリアのファッショやドイツのナチスがそれに相当する。近年では、アメリカのトランプ大統領や、フランスにおけるル・ペン氏やメランション氏らの左右の運動、ギリシアやスペインにおける左翼運動などが挙げられる。いずれも既存の政治家やインテリ層からは酷評される傾向にあるが、「既成政党が民意の受け皿になっていない」という視点が無いと、本質を見失うだろう。

【参考】
立憲民主党の限界(2017.11.4)
posted by ケン at 00:00| Comment(2) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ポスト安倍:石破氏は元より非主流派&白眼視、岸田氏は宏池会ズタぼろで求心力低下で菅官房長官が最有力か?
共産:2017以降野党共闘体制の割りを食っているも、サンクコストの呪縛でこのまま進む他なく長期低迷続く。
旧民進:もういいから早く滅んで(それは分析になって(ry

こんなとこでしょうか。
山本太郎氏には知人に頼んで「選挙後はじっくり党組織づくりに取り組んで」とtwでリプを送ってもらいましたが、はてさて。
Posted by スパルヴィエロ大公 at 2019年07月27日 01:55
旧式左翼は本来あるべき階級政党に回帰しない限り、支持を増やすことは難しいでしょう。それは以前から言われていることです。

旧民主は傍流エリートとエリート正社員組合の合作ですが、「エリートはもう結構」なんですよね。

「れいわ」は「組織に属さない人」の仮想空間的存在ですから、組織化しようとした瞬間に支持者が逃げ出すかなと。
Posted by ケン at 2019年07月29日 09:13
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