2019年07月31日

参院選2019に見る左派の課題

今回の参院選では、与党票はほぼ得票を減らすこと無く、野党内で票の再分配が行われた格好となった。
結果、旧民進、共産、社民の票が減り、それが「れいわ」に流れた。
また、直前の世論調査を見ても、自民党の支持率は30%強でそのまま自民党に投票されたが、野党は筆頭の立民ですら6%程度に過ぎず、「支持できる野党が無い」中で、「他に無いかられいわ」となった可能性を示している。
つまり、「有力な野党が存在しない」現状は今も変わらない。近々また世論調査が行われるだろうが、「れいわ」の支持率が急速に伸びるとは考えがたい。

「れいわ」が伸張した理由は、「安倍批判が強烈だから」というよりも「明確な経済政策」にある。
その主な主張は、

・消費税廃止
・最低賃金1500円
・奨学金「チャラ」
・公的住宅拡充
・正規公務員の増員


だ。これらは旧式左翼が言いたくても言えなかった(言わなかった)政策で、本来は左翼政党が主張すべきものだ。
「れいわ」のHPを見れば分かるが、意外なことに反原発、安保、憲法問題は下の方に記載されている。
ここがポイントなのだ。

欧米で起きている社会民主主義・リベラル政党の凋落は、本来彼らが発揮すべき再分配と階級闘争の主張を忘れ、エリート化(支配階層化、知識人化)してしまったことにある。
日本のNK党や社民党も、憲法、安全保障にはうるさいが、経済政策になると、途端に主張が弱く見える。そこが問題だった。

貧困が急速に進み、中流が没落する中、本来は社会主義的政策が求められるはずだが、その需要を満たす政党が存在しないことが、ポピュリズムにつながっている。貧困層がトランプ氏やル・ペン氏を支持する構図がそれだ。
ところが、日本では貧困層が自民党を支持しており、NKや社民を支持する貧困層は決して多くない。
野党内におけるその受け皿が、「左翼では無い」「れいわ」に流れる現象は、ギリシアやスペインのポピュリズムに近いかもしれない。

恐らく今後、左派に求められる政策はリベラリズムではない。
憲法、安保、人権、原発などの主張は再検討、ないし優先順位を下げる必要がある。
そして重要となるのは、

・消費減税(廃止)
・資産課税
・法人課税強化(税率アップではなく優遇廃止と課税強化)
・教育無償化
・公共住宅の整備(居住住宅の非課税化)
・最低賃金上げ
・非正規職員に対する社会保障強化
・公共部門へのてこ入れ
・労基法の徹底遵守(ブラック企業対策)
・部活動の全面廃止

・外国人労働者反対
・保護貿易


などだろう。移民、外国人労働者に反対するのは、賃金の低下を避けるためである。
本来、労働力不足は生産効率の上昇で対応すべきものであり、生産性の向上に応じて賃金が上がり、内国市場が発展するのが、「あるべき市場」の姿だった。
しかし、日本の場合、低賃金労働が定着、労働運動も殆ど機能しないため、賃金が上がらず、資本側は生産性を向上させる必要がなかった。
その結果、他国であればとっくに淘汰されているはずの低収益企業がゾンビ化、ブラック企業とともに存続してしまっている。
日本の経営層が無能なのは、無能であることが許される環境が存在しているためだ。その象徴が低賃金と超長時間労働であり、そうした風潮を育成しているのは学校教育であり、部活動であると言える(その上に天皇制もある)。

西側諸国で社会民主主義政党が衰退したのは、戦後和解体制の中で階級政党を脱し、国民政党化して政権まで担った「成功体験」が災いして、戦後和解体制が崩壊した後(90年代以降)も国民政党の枠組みから脱することができず、階級分化が進み、再び階級闘争が先鋭化している21世紀の政治状況の中で、労働者層や貧困層の支持が得られなくなっているためだった。
日本の場合、自民党と霞ヶ関が低賃金労働を推奨することで、低収益企業を存続させ、低失業率を維持、「大衆の大半がギリギリ貧困を自覚しない生活環境」を作り上げることで、自民党による一党優位体制が存続している。

こうした社会構造が理解できず、将来像を描けない既存の左派政党やリベラル勢力が中途半端な形で存続しているため、いつまで経っても有力な野党が誕生しないという側面もある。
その意味では、「れいわ」には、既存のリベラルや旧式左翼を淘汰する役割が求められるわけだが、現状ではそこまで推測するのは難しい。
posted by ケン at 09:35| Comment(7) | 憲法、政治思想、理念 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
結局のところは、ブログ主様が再三主張してこられた「日本の学校教育でデモクラシーについて学び考える機会が殆どない&そもそも市民にデモクラシー参加の意欲がない」ことに繋がっているんだろうなと。

旧式左翼を淘汰、についてはそもそも山本氏が(既成)野党と連携していくと言っちゃってるんで、これは無理でしょうね。その連携にしても、「あいつのせいで票が逃げた」と主に共産シンパの人たちが怒ってて、これまた厳しい道のりのように思います。
Posted by スパルヴィエロ大公 at 2019年07月31日 18:00
連携するとなると、やはり自前の強固な組織を持つ共産党が有利なんですよね。でも、連携によって票が減るのも確かですし、社民も共産も高齢化によって長続きはしない体ですから、長期的にはどうなるか分かりませんよ。そこまで日本社会とデモクラシーが持ちこたえられればの話ですが。

日本のデモクラシーは大半の人が自覚がないので、旧ソ連における共産党や社会主義みたいなものなんだと思います。一度独裁者が出てきて、禁止してしまえば、「あ、そうですか」と誰も特に抵抗しないで崩壊する程度のものなのかなと。もちろん、私も抵抗しませんが(爆)
Posted by ケン at 2019年08月01日 12:49
そもそも国民を生活を守ってこそのリベラルでしょうに。

日本のリベラルってゾンビと死人が支持の想定でしょうかな。


ではまた。
Posted by 遍照飛龍 at 2019年08月01日 20:15
ケン先生の次の指摘はきわめて重要だと思います。

>欧米で起きている社会民主主義・リベラル政党の凋落は、本来彼らが発揮すべき再分配と階級闘争の主張を忘れ、エリート化(支配階層化、知識人化)してしまったことにある。日本のNK党や社民党も、憲法、安全保障にはうるさいが、経済政策になると、途端に主張が弱く見える。そこが問題だった。

しかしなぜ(少なくともいまだに私の心を打つ)、戦後的諸価値――平和、自由・人権、民主主義などが多くの人々――とりわけ若者や貧困層の心に響かないのでしょうか。安倍政権の下で、こうした戦後的諸価値が解体されようとしているのに……。
その答に深く関係するキーワードが左派の「エリート化」「知識人化」だということは、私にもうすうすわかります。大衆の「反」あるいは「嫌(左派)メディア」の背景も「(左派)メディアのエリート化」「(左派)メディアの知識人化」があるだろうと思います。もっとも、これらは戦後の早い時期からずっとそうだったと思いますが。
昨年などよくいわれた「反知性主義」の実態も実は大衆の「反知識人」なのでしょうね。
Posted by 福永宏 at 2019年08月01日 23:18
リベラルの本質は「王権からの私権保護」であって、基本的には資産を持つ非貴族ブルジョワジーの財産と権利を守るためのイデオロギーなんですね。だから、国民の生活全般を保障する発想は、本来は無いんです。リベラルが権利保全、私権保護にはうるさくても、再分配や生活保障に興味が無いのはそのためなんです。

1960年代までは左派は大衆を動員できていました。1950年代の右派社会党の系列には中小企業の社長級も少なくなかったと聞きます。ブルーカラーの動員に加え、部分的に中産階層も取り込んで部分的に国民政党化していたのが1950年代の社会党だったわけですが、民社党との分裂や社民連の分裂などを経て、弱い側が分裂、大衆の遊離を加速させると同時に、労働組合もエリート社員化が進んで、ただでさえ減少傾向にあったブルーカラー層の支持を失っていったわけです。

現在では貧困層はむしろ自民党や公明党を支持しているくらいです。自民党はバラマキ政策で貧困層を取り込む一方、平和、自由・人権、民主主義などの分野では後退を進め、それに対抗して左派がリベラル色を強めた結果、左派が少数のエリートの支持を得る一方、自民党が幅広い支持を得続けています。

社会民主主義・リベラル政党が貧困層の支持を失う一方、右派が貧困層の支持を得る現象は欧米で顕著に見られますが、日本の野党は全くそれに学んでいないわけです。

平和、自由・人権、民主主義は、それ自体では「飯は食えない」わけで、経済的繁栄に依拠していますが、それが危機に陥ると、誰も見向きしなくなるわけです。大恐慌期の欧州がそれです。
Posted by ケン at 2019年08月02日 10:58
ケン先生の文中の指摘はこれまで何百回、何千回と言われてきたことで、結果が今である以上、要するに無理なのでは。政権交代は20年後くらいでしょうか。
Posted by at 2019年08月03日 09:55
全くおっしゃる通りで、何百回言っても分からない連中相手に何か言うのが疲れたんで、秘書も辞めました。
野党にしても、失敗してその反省も無い連中が、「地元に強い」というだけで何度も当選してしまう選挙制度ってどうなんだと思います。

政権交代はその時の経済状況次第でして、リーマンショックで麻生政権が倒れ、東日本大震災で民主党政権が倒れたことを思えば、今の自民党も意外と簡単に倒れるかもしれません。もっとも、その代替が今の野党に務まるかは別の話ですが。
Posted by ケン at 2019年08月05日 11:30
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