2019年08月22日

日露関係はまだ終わってない?

【日ロの平和条約交渉「行き詰まっていない」 ロシア外相】
 ロシアのラブロフ外相は15日、日ロの平和条約交渉について、「行き詰まっているとは思わない」と述べた。また、「第2次大戦の結果を認めようとしない日本側の意思が条約の締結を妨げている」と話し、交渉の進展は日本側の対応次第との見方を示した。
 同日、モスクワ郊外で開かれた若者との交流イベントで話した。ラブロフ氏は、北方領土の歯舞群島と色丹島の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言について、「ロシアは旧ソ連が負った全ての義務を履行する用意がある」と指摘。安倍晋三首相とプーチン大統領の指示に基づき、対話を継続する考えを示した。
(8月15日、朝日新聞)

対日強硬派の一人と目されているラブロフ外相の発言は重い。
今年に入ってから(あるいは去年から)、日露交渉は急速に進まなくなったが、それはロシアが「中露同盟の強化」を対日交渉と天秤にかけ、前者を重視した上、中露交渉が順調に進んだためだった。
普通に考えれば、北方領土の共同開発より一帯一路の方がはるかに経済規模が大きく、軍事外交的にもアメリカの衛星国である日本と平和条約を結ぶことの意義はさほど大きくは無い。せいぜい対中関係の保険程度の意味合いしか無いだろう。
ロシアにとって有利な条件を日本が提示したなら、ロシア側の対応も違っていたのだろうが、安倍政権は変に妥協しなかったからこそ、今回の日露交渉は不調に終わったとみて良い。

とはいえ、ロシアからすれば、中露同盟の強化は諸刃の剣であり、ロシアの対中依存度を高め、その交渉力を低下させることになり、長期的には好ましくない面もある。
それだけに対日カードそのものを切ることはしないだろう。その辺は狡猾とも言えるが、日本側の事情も似たようなものだ。
日本は日本で、アメリカからの要求は増えるばかり、日中格差も広がるばかり、北朝鮮からは無視され、日韓関係も悪化の一途で、東アジアでは完全に孤立、「やっぱ対米従属強化で行くしか無い」というのが霞が関の平均的共通認識になっている。
だが、恐らく安倍首相は必ずしも対米従属一本では考えていないため、日露カードを捨てることはないだろう。

ラブロフ外相の発言は初期のプーチン政権以降、ずっと主張してきたもので、真新しいところは無い。
要は北方四島のソ連による占拠を「休戦条約締結前に起こったことであり、四島は(北海道では無く)千島列島であると認めろ」ということであり、その上で「ロシアは日ソ共同宣言を遵守して、平和条約後に二島を引き渡す」というもの。
米軍基地云々の話は「ネタ」に過ぎない。例えば、色丹島に米軍基地ができるのと、知床半島に米軍基地ができるのとでは、さほどに違いはないからだ。つまり、ラブロフ氏の主張の根幹は「ロシアは安保面で妥協するから、日本は歴史認識面で妥協しろ」ということであり、そこは譲れない一線なのだろう。しかし、日本政府はそこ読み切れず(あるいは外務省が妨害して)、ロシアの提案を突っぱねてしまったのが真相のように思われる。
さはされど、プーチン氏もさすがに長期政権に飽きられつつあり、支持率低下が伺える中で、以前ほど日本に対して妥協できなくなっていることも確かだ。

一旦流れが途絶えたものを復活させるのは容易ではなく、消費増税などでレームダック化して行く可能性が高い安倍政権的には、かなり厳しいものになるだろう。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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