2019年10月22日

相対的に学歴が低下する日本

【日本の中学生の大学院志望率は、たったの3%】
 今年春の4年制大学進学率(18歳人口ベース、浪人込み)は53.7%と報告されている。この世代の半分が大学に行くことの数値的な表現だ。これは世界有数の高さで、日本が教育大国と言われるゆえんでもある。
 大学の上には大学院が置かれる。目的は「学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、又は高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与すること」だ(学校教育法第99条)。研究者だけでなく、高度専門職業人の養成も担うとある。
 能力ある優秀な若者の入学が期待されるが、日本の生徒の大学院進学志望率は低い。中学校2年生の4年制大学進学志望率は56%と高いが、大学院になると3%まで激減する(IEA「TIMSS 2015」)。こういう国は他に類を見ない。<図1>は、大学院進学志望率の国際ランキングだ。
 中東の諸国では、中学生の大学院進学志望率が高く、首位のレバノンでは7割近くにもなる。科学技術教育に力を入れ、潤沢なオイルマネーを(理系の)高等教育につぎ込んでいると聞くが、その表れだろうか。アメリカは46%となっている。学歴主義で、大学院卒の学位の効用がはっきりしている国だ。実践的な職業教育の上でも、大学院は大きな位置を占めている。日本はというと、たったの3%で調査対象国の中では段違いに低い。この年齢では、大学院とは何たるものかを知らないのかもしれない。あるいは、大学院に行ってもベネフィットはない、行き場がなくなることを早くして心得ているのかもしれない。
(10月10日、ニューズウィーク日本版より抜粋)

ケン先生も時々参考にさせて頂いている舞田先生の論考。
日本企業は、一部の技術系を除くと、大学院進学に対していかなる評価も与えず、むしろ「経験が無いのに高年齢相当の賃金を出さねばならない」として忌避する傾向が強い。

これに対して、欧米、特にヨーロッパはジョブ型社会なので、会社や公共団体のある職務につくためには、相応の学歴が求められる。
例えば、日本の自治体は若年者を一括採用して、2〜3年のローテーションで窓口業務から社会保障や公共事業まで何でもやらせる。これに対して、欧州の自治体は社会保障の児童保護担当に空きが出たら募集をかけ、相応の専門学位を持つ人に限定されるため、より良い待遇や出世を望むなら大学院で修士号や博士号が必要となる。ただし、幹部級は最初から入り口が異なる場合もある。
これは教員も同じで、日本の教員は小学校を除けば一応専門はあるものの、高校教員でも修士号を持っているものは5%以下しかおらず、その業務も事務や学生管理、部活指導などの専門外の仕事が半分以上を占めている。欧州では、平均して中等学校の教員の約3割が修士以上の学位を持っているという。つまり、日本の中等教育は、教育の質が相対的に落ちているのだ。

この問題は軍隊についても言えて、米軍では将官級には学位をいくつも持っている者が少なくないし、ロシア軍でもその傾向が強まっているが、日本の自衛隊ではむしろ学位を馬鹿にする傾向が強いと言われ、将官級で博士号を持っている者など皆無に等しいという。
要は鬼畜ムダグチの精神論からあまり進歩していないようなのだ。
例えば、ソ連のジューコフ将軍は自らの回顧録を書き上げるために、レーニン図書館や国防省の書庫などに1年以上籠もって、自らの記憶と複数の資料と照らし合わせているが、日本の旧軍人はどうだろうかという話である。

日本人の中にはいまだに「日本の教育は世界一」などと信じている者が多いようだが、現実には学歴も教員の質も世界水準と比べて大きく低下してしまっているのだ。
これから子どもを中等教育以上にやる場合、学校教員の学歴をチェックし、最終的には子の判断にせよ、大学院まで進めるように設計しておくことをお薦めしたい。そうでなければ、国際労働市場の競争に参加すらできないだろう。
posted by ケン at 12:00| Comment(2) | 教育、法務、司法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
女性教育の分野でも、日本の女性の大学院進学率の低さと、それ以上に短期大学進学者に偏っていて(主に保育の分野?)四年制大学に進学する割合が低く男女間の教育格差が最悪になっていると以前指摘されていました(そしてジェンダーギャップ指数はそうした日本の課題を正しく反映してないとの批判もあります)。

「ジェンダーギャップ指数とかいう使えない指標と女子教育の話」
https://note.mu/shota_hatakeyama/n/nbb2cc99c0eae

……まあポスドクとか高学歴ワーキングプアの問題とか考えると、日本で暮らすなら子供をつくるな、つくるなら北欧あたりにでも移住してそこで教育までやってもらいな、とまあ身も蓋もない結論に……
Posted by スパルヴィエロ大公 at 2019年10月22日 23:00
日本の場合、過酷すぎる労働環境や通勤環境も女性の就労を阻害しており、体力的に男性と公平に競争できる環境にないわけで、まずはそこを解決する必要があると思いますが、そうした認識は誰にもないようで、まぁ絶望的だと思いますね。
Posted by ケン at 2019年10月25日 01:43
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