2019年10月30日

恩赦のあり方を考える

【恩赦55万人、政令公布 罰金刑対象、資格制限解く】
 政府は22日、天皇陛下の「即位礼正殿の儀」に合わせ、政令恩赦「復権令」を公布、即日施行した。刑事事件で罰金刑となり、2016年10月21日までに納付を済ませた人が対象となる。約55万人に上ると見込まれ、自動的に制限されていた資格が回復する。政令恩赦から漏れた人に対し、個々の事情を審査する特別基準恩赦も実施。政令恩赦とは異なり、基本的に自分で出願しないと審査対象とはならない。国の慶弔に合わせた恩赦は1993年の天皇陛下と皇后さまのご結婚以来、26年ぶり。22日午前、復権令と特別基準恩赦を掲載した官報を発行した。
(10月22日、共同通信)

新帝即位に伴い55万人が名誉回復。
これによって安倍、自民党政権はますます盤石に・・・・・・なるかどうか。
このご時世に恩赦=名誉回復とは、やはり日本は権威主義国家の部類に入れるべきなのだろう。

そもそも恩赦制度は、司法制度や警察権が制度的に確立しておらず、権力者が恣意的に運用してきた人治国家あるいは封建国家時代のものだった。
先の支配者による統治が苛烈を極め、人心が疲弊している時に、世代交代を示すと同時に法の解釈・運用変化を表明するために使われたものと見るべきだ。
現代のように法律が安定的に運用されている時代に、妄りに恩赦を利用するのは、権力者の権威を誇示するためのものになってしまうだろう。

現代における運用例を考えた場合、まず挙げるべきは、第二次世界大戦後の日本における政治犯などの釈放である。これは、治安維持法や軍機保護法などを廃止するためには、議会での審議を経る必要があり、時間がかかるため、緊急解決としてまず恩赦をもって当該犯を釈放する必要があった。これは正しい運用方法と考えて良いだろう。
また日本に限らず諸外国でも見られるケースだが、「刀狩り=武装解除」に際して、自ら武器を持って所轄に出頭した場合、銃刀法違反などに問わないという恩赦の適用方法もある。これも正しい運用方法だろう。

日本の直近では、昭和帝の崩御や平成帝の即位などに際して恩赦が行われたが、昭和帝の時は何と1017万人が恩赦の対象となっており、平成帝の時は250万人が対象となった。数だけ見れば、規模の違いはあれど、スターリン死去に伴う名誉回復の観がある。それに比べれば、今回の対象は非常に少なく、時代への配慮が見られなくも無い。

とはいえ、イギリスでは恩赦が行われなくなって久しく、フランスでも2007年のサルコジ大統領以降は一律の恩赦は行われていない。特にフランスの場合、君主権の代用として存在していた大統領の恩赦権を制限し、一律・大量の恩赦はできないよう、法改正がなされた。

今回の恩赦でも、「新帝即位を理由に、轢き逃げ犯や性犯罪者を復権するのか」などの批判が上がっており、それは全く妥当な意見だと、ケン先生も考える。
とはいえ、恩赦は君主大権の一つであり、現行制度では内閣に実施権があるものの、権威主義国である以上、その大権を手放すことは、少なくとも自民党は無いであろう。
posted by ケン at 12:00| Comment(4) | 教育、法務、司法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
しょーもない質問ですが、現代日本における権威主義の「権威」って、誰の権威何でしょうかね?
それが立派である必要が庶民には分かりませんw
Posted by ガースー at 2019年10月30日 21:57
日本の権威主義というのは、これまた微妙な問題でして、基本的には「天皇の威を借る狐」なわけですが、現代の天皇に戦前のような権威があるわけでもなく、だからこそ天皇の権威を強調すべく、派手な式典を次々と行って、「権威付け」を図っているわけです。叙勲制度や園遊会もまた同様ですね。

安倍総理の権威で言えば、長期間総理・総裁をになっていること自体が十分に権威になっているわけで、それは「桜を見る会」の隆盛ぶりが象徴しています。
ぶっちゃけてしまえば、「俺=法」「俺=権力」という考え方とスタンスこそが権威主義なわけで、これに対するのが、「エリートによる合議制」のリベラリズムと、「大衆による大衆支配」のデモクラシーという感じなわけですが、後者二つが機能不全に陥りつつある、というのが私の世界認識です。
Posted by ケン at 2019年10月31日 20:45
そこで労働者によるソーシャリズムの逆襲ですよ。
Posted by o-tsuka at 2019年10月31日 22:23
問題は「労働者」が分断されすぎて、一階級として成立し得なくなっている点ですかね。今後、AIとロボット化で全員失業すれば違ってくるでしょうが。
実際、欧州では労働者が社会民主主義政党を支持しなくなっていますから、大転換が迫られていると思います。
ただ、その方向性が見えてこないのも事実で、そこが苦しいかと。
Posted by ケン at 2019年11月01日 19:38
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