2020年02月12日

山口つばさ『ブルーピリオド』

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山口つばさ『ブルーピリオド』(講談社、既刊六巻)

昨年読み始めた漫画の中で最も「刺さった」作品で、すでに何度も読み直してしまった。そんな漫画は最近珍しい気がする。

ちょっとヤンキー入ってるけど、成績は良い高校生の主人公。しかし、特にやりたいこともなく、今ひとつ生の実感がわかずに空虚な生活を送っている。
そこに絵画と美術部に出会い、一気にアートの世界に目覚めて行くが、「芸術大学に行く」「芸術大学に入る」という難関にぶち当たる。

この作品が非常に斬新なのは、「少年が自分の才能に目覚めて、努力して数々の難関を乗り越えてゆく」という少年漫画やスポーツ根性物の「王道」をアートの世界を舞台にして描いていることが一点。同時に、『ドラゴン桜』のような受験ネタを美大受験に置き換えている点も、非常に面白い。東大が東京芸大になっているのだ(漫画家本人も東京芸大出出身、なお東京芸大は日本で唯一の国立美大で、大阪芸大は私立)。
美大を舞台にした漫画だと、やはり「ハチクロ」が鉄壁かもしれないが、恋愛要素は今のところ非常に薄く、アートに関するオタク的知識が満載されている点も、男性寄りに偏っていると言える。
しかし一方で、性的指向に悩む女装の男性が準主人だったり、男性なのか女性なのかわからないキャラがいたり、少年漫画では描かれない繊細なジェンダー観も非常に読ませてくれる。

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内容的に色々詰め込みすぎな感じが現代的ではあるのだが、それが苦痛にならずに、むしろ色々考えさせてくれる点が秀逸なのだ。
そして、数々の名台詞が超カッコ良く、これまた何度も読みたくなる衝動に駆られてしまう。

また、個人的に高く評価しているのは、先生の描き方が非常に丁寧であること。登場する先生たちは、生徒一人一人を見て、生徒が何を求め、どう導いて行くか、あるいはどう気づかせて行くか、真摯に考え、対応している。いささか理想主義的なのだろうが、それが嫌みでは無く、教員の一人として読んでいて、気づかされる点も少なくない。
「先生が良い」なんて思わせてくれる作品は今日では非常に珍しいのではなかろうか。

私の場合、アートとはあまり縁の無い世界で生きてきた割に、幸いにも周囲に美大出身者が何人かいるので、色々想像できる点も良かった。
今後も大事に見ていきたい作品である。
posted by ケン at 12:00| Comment(4) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
さっそく六巻まで読みました!
良い!
ところで「男性なのか女性なのかわからないキャラ」って誰でしたっけ…
Posted by at 2020年02月13日 20:07
龍二と悠でしょう。
Posted by ケン at 2020年02月14日 20:15
橋田悠はハーレムっぽいコマがありましたが、そうか、レズビアンだという線もありますね…!
Posted by o-tsuka at 2020年02月15日 14:34
そこまで意識したわけじゃないけど、まぁそういうことです。
Posted by ケン at 2020年02月16日 15:32
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