2020年05月22日

オンラインを嫌がる大学教員

【大学教員、のしかかる負担 ネット講義の準備や質の確保】
新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言により、全国の大学は学内への立ち入り禁止やインターネットを使った遠隔授業の導入など、異例の対応に追われている。毎日新聞が全国66大学の教員111人にアンケート調査を実施した結果、現場は遠隔授業の準備や質の担保に困惑する一方、「『サイバー化』で実態を失いかねない」と、大学の意義が揺らぐことへの懸念の高まりが明らかになった。アンケートは4月下旬、全国の国公私立大で活躍する研究者にメールで実施。政府の緊急事態宣言が大学へ与えている影響を聞いた。62%から回答を得た。
(5月8日、毎日新聞より抜粋)

教員に「オンライン授業やりたいですか?」なんて聞けば、ほぼほぼ「嫌だ」しか返ってこないだろう。私のように「やりましょう!」なんて言うのは100人に数人程度かもしれない。対面至上主義はいわば大艦巨砲主義と同じ現状維持バイアスであって、論理的な根拠は薄弱であることが多い。

今問題にすべきは、人権面では学生の学習権が阻害されていること、経済面では対価(授業料)を払っているのにサービス(商品)が受けられない問題を、早急に解消することである。
もちろん労働者の権利は担保されなければならないが、それは組合と使用者が話し合って妥協点を見いだせば良い話で、「オンライン授業をやらない」理由にはならない。少なくとも正規雇用の教員は給与を得ている以上、授業する義務があり、これを拒否するのはストライキ、サボタージュと同義だ(もちろん正規のストなら許される)。

本来、労働組合が機能していれば、使用者と組合が協議してオンライン化に合意して、その労働条件や授業などの基準も一気に定めることができるわけだが、労働組合が存在しない場合、使用者が一方的に決定し、個々の教員に要請または命令するという話になってしまうので、個別に「オレは嫌だ」とか「契約にはオンラインの規定は無い」などと争議が発生することになる。
また、労使交渉が行われるなら、その中で「オンライン授業をする代わりに教員の事務作業をなくせ(減らせ)」と要求できるだろう。しかし、労使交渉が行われなければ、教員は膨大な事務作業を残したまま、オンライン授業も押しつけられる(つまり搾取される)のみとなろう。
労働運動を軽視、あるいは潰してきたことのツケとも言える。

確かにオンライン化による授業準備は非常に時間がかかったが、これは新たな科目を受け持つ時と同じで、一回「ノート」を作ってしまえば、後は基本使い回せるのだから、必ずしも悪い話ばかりではないだろう。
出勤時間が削減できるのは大きいし、イベントなどがなくなることによる事務作業や会議、相談業務も大幅に減るのだから、良い点も多いはずだ。

日本の大学人は昭和脳(元亀天正の装備?)のまま21世紀に臨んでいる。
posted by ケン at 12:00| Comment(4) | 教育、法務、司法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも読ませていただいております。
この記事は5月上旬で、この時期は不安を感じている人が多かったという側面もあろうかと思います。今は授業も進んで、オンライン化は悪いことばかりではないと気づいた教員は結構多いように思います。私自身も、案外学習効果が高い場合もあって、手応えを感じています。ただし今後はケン先生が以前記事にされたように飽きてくる可能性がありますが。

また勤務先では授業ではないですが、会議がオンライン化で効率化されて好評だったりします。ただしオンライン化は同意するけどサポートが貧弱すぎる、という点でほぼ全員が不満を感じていて、PCを持たない学生にPCを貸与するのではなく、教員が配慮しろ、となる場合が結構あり授業内容に集中できないところがネガティブな意見に繋がるのだろうと思います。
Posted by ヤッシー at 2020年05月23日 11:16
私の手応えでも、「オンライン授業を受けた学生は例年に比べて学習効果が低い」とは言えない状況にあります。あくまで感触ですが。実際に聞いているかは別にして、出席率は高いですし。
とはいえ、三月から始めて、五月には息切れしている感じもするので、持続可能性には課題があるかもしれません。

日本の場合は、とにかく何をするにしてもケチるし、無駄な仕事を増やそうとするので、そちらの方が課題かもしれません。
Posted by ケン at 2020年05月24日 20:23
 勤務校が1つしかない方はオンライン授業になっても、特に問題はないと思いますが、私のように複数の学校で教えている者は学校によって、オンライン授業の形式や使うアプリ(zoomとかteamsとか)が異なるので大変です。さらにオンライン授業に伴って余計な雑務が増えて、これならただ授業するだけでよかった対面授業のほうがはるかに楽だったと思います。マニュアルも、上級者向けのマニュアルが送られてくるだけで何のフォローもない所も多く(マニュアル作成者はその大学で情報学を教えている先生になるが、初心者を無視して自分を基準にマニュアルを作成し、非常事態宣言を理由に講習会などの開催は拒否する)、結局、工業大学を卒業した甥に手伝ってもらいました。
 ひどいところだと、何遍マニュアルを送ってくれと言ってもマニュアルを送らず、ようやくマニュアルを送ってきたら、2〜3日中にそれをおぼえて授業をやるか、休講にするか選べと言ってきた学校もあります。
Posted by hanamaru at 2020年05月26日 17:51
なるほど、そこは盲点でした。
確かに中国でも最初はみなzoomでしたが、今は大学によって使用媒体が異なるようです。
まぁ初期対応については、私の場合も中国語のマニュアルが送られてきただけで、それが後に英語になっただけで、「いや、中国語でいいわ」と思ったものです。
自分も結局教材を全部一から作り直し、「去年の苦労は何だったんだ!」と思いますが、まぁ一度慣れておけば、次回以降は楽になりますし、どのみち将来的にはオンラインへの移行が進むのですから、むしろ今のうちに苦労しておいた方が良いと思いますよ。

付記すると、「2〜3日中にそれをおぼえて授業をやるか、休講にするか選べ」というのは明らかにパワハラで、小説に出てくる19世紀の資本家そのものです。それを容易に言わせてしまうのは、相手が立場の弱い非常勤講師だからで、その根っこにあるのは交渉力の無さ、引いては労働組合の不在です。仮に組合があれば、当局が発した上記の言葉ですら、逆撃のチャンスとすることができたわけです。その意味でも、日本の労働者は今後も一方的に収奪される運命を辿ると思います。
Posted by ケン at 2020年05月26日 20:19
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