2020年05月29日

外交青書2020から見えるもの

【外交青書要旨】
 2020年版外交青書の要旨は次の通り。
 【北朝鮮】北朝鮮は頻繁に弾道ミサイル発射を繰り返した。日本のみならず国際社会に対する深刻な挑戦で、全く受け入れられない。日本は拉致問題の解決なくして国交正常化はあり得ないとの基本認識の下、最重要課題と位置付け、全ての拉致被害者の安全確保と即時帰国などを強く要求している。
 【韓国】韓国は日本にとって重要な隣国。しかしながら旧朝鮮半島出身労働者問題に関し、依然として国際法違反の状態を是正していないことをはじめ、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了通告(ただし、後に通告の効力停止)、慰安婦問題に関する「和解・癒やし財団」の解散に向けた動きなど、韓国側による否定的な動きは止まらず、日韓関係は厳しい状況が続いた。
 【中国】習近平国家主席の国賓訪日について、日中両国は新型コロナウイルス感染症の拡大防止を最優先する必要があり、国賓訪日を十分成果が上がるものとするためにはしっかりと準備を行う必要があるとの認識で一致し、双方の都合が良い時期に行うことで改めて調整する。
 沖縄・尖閣諸島周辺海域における中国公船の領海侵入は19年に32回。引き続き日本の領土・領海・領空は断固として守り抜くとの決意の下、毅然(きぜん)と、かつ冷静に対応していく。
 【台湾】世界保健機関(WHO)総会への台湾のオブザーバー参加を一貫して支持している。
 【米国】トランプ大統領は令和の時代の初の国賓として訪日し、首脳会談で日米同盟は史上かつてなく強固で、世界で最も緊密な同盟であるとの認識で一致した。
 【ロシア】北方領土はわが国が主権を有する島々。政府は首脳間および外相間で緊密な対話を重ねつつ、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針の下、ロシアとの交渉に精力的に取り組んでいる。
(5月19日、時事通信)

報道では、「親米反中路線へ揺れ戻し」的トーンが多く見られるが、そうだろうか。
習近平主席の国賓訪日を予定通り進めると、外務省の公式文書が述べているのだから、「反中に傾斜」とは到底言えないだろう。
このかなり八方美人的記述から見えてくるのは、

「当面は親米路線堅持」
「短中期的には中国やロシアとも等距離に」
「長期的には独自路線を模索」

という感じではなかろうか。
現状では、安全保障上はアメリカに「おんぶに抱っこ」であることに変わりは無いが、そのアメリカは衰退の一途にあり、在外米軍も縮小され続けている。ましてや「日本のために」中国と戦争するなど、完全にフィクションとなってしまっている。
経済的には、日本の貿易相手国は輸出入共に中国が一位となり、約20%を占めており、国内の観光業も教育産業も中国人なくしては成り立たなくなっている。また、中国との敵対は日本の脆弱なシーレーンにとって最大の脅威となる。戦争に至らずとも、中国が脅威となるような側面は避けるべきだろう。
そもそも、「2020年度予算から見えるもの」で先述べたとおり、今の日本の財政は現状を維持することもままならない状態にあり、より広範なシーレーンを独自に守るだけの軍事力を持つことは不可能だ。

従って、かつての三十年戦争の教訓に従って、「イデオロギーと一国の外交は別物」という方針で安全保障戦略を構築する必要がある。
気持ち的には、独自路線を模索したいのだろうが、現実には財政とその原因となっている少子高齢化がそれを許しそうに無い。
青書そのものは、「それっぽい」ことを書いているが、その実現性は非常に困難な状況にある。
posted by ケン at 12:00| Comment(2) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
戦略級ゲーマー的にはあり得ない判断である太平洋戦争開戦のひとつの理由に、日本海軍のアンバランスな大戦力にあった(作戦級ゲーマー判断的に)ことは間違いないところだと思いますが、現在の海上自衛隊のアンバランスな戦力構成も、将来的にどう機能するのか興味深いところです。
Posted by o-tsuka at 2020年05月30日 12:29
「建艦競争が本格化すれば、ますます太刀打ちできなくなるから、先にやってしまえ」というのが当時の、特に大艦巨砲主義者たちの主張だったわけですが、さすがに今の自衛隊で同様の主張をする人は少なそうです。むしろ外務省の方に、「低強度の日中紛争を起こして、アメリカのコミットメント強化を実現」みたいな発想する者がいて、困ったものです。

海上自衛隊は財政的にも人員的にも現状を維持することすら難しくなっており、国家としてよほどの覚悟を持たない限り、規模縮小は避けられないでしょう。
しかし、実際にはアメリカは「地域の防衛は地域で」に舵を切っており、東アジアの冷戦構造を追認する限り、日本の軍拡は避けられないわけで、そこをどうクリアすべきか、本来は政治家(主権者)が議論しなければならないわけです。

にもかかわらず、右派は「帝政万歳」「俺は何も悪いことしてない」だし、左派・リベラル派は「軍事=悪」ですから、議論がかみ合わないことこの上ありません。
Posted by ケン at 2020年05月31日 13:09
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