2020年09月26日

今後の日露交渉は?

【"領土引き渡し禁止"盛り込んだロシア新憲法 大統領側近「読めば答えわかる」北方領土問題は難航必至に】
 辞意を表明した安倍首相に北方領土問題を巡り「残念ながら解決には近づかなかった」と厳しい評価を口にしたロシアの大統領側近が、「新憲法を読めば明確な答えがわかる」と、四島を日本に返還する気がないことを改めて強調しました。
 ロシアのプーチン大統領側近のペスコフ大統領報道官は9月10日、ロシアメディアに「島についての答えは非常に簡単だ。新憲法を読めば、明確な答えが分かる」と話しました。
 ロシアの通信社が行った会見で、「新しい日本の首相が任命された後、クリール諸島(北方領土と千島列島)に何が起こるか」との質問に答えました。
 ロシアで7月に成立した新しい憲法には「領土の引き渡しの禁止」が明文化されていて、ペスコフ報道官の発言は、ロシアが北方領土を返す気がないことを、改めて強調した形です。
 ペスコフ大統領報道官は9日、辞意を表明した安倍首相の対ロシア政策について「残念ながら(領土問題や平和条約締結交渉の)解決には近づかなかったと認めざるを得ない」と厳しい評価を口にしていました。
 日本側はロシアの新しい憲法に「領土の引き渡しの禁止」が盛り込まれたことについて、「領土問題を解決して平和条約を締結する基本方針のもと、引き続き粘り強く交渉に取り組んでいきたい」(茂木敏充外相、7月)としています。
(9月11日、北海道文化放送)

ロシア駐在経験者も含めて、「ロシアは憲法改正して、領土引き渡しを禁止したから、ロシアとの北方領土交渉はもう不可能」旨の認識を平気で掲げている。これは、連中がロシア語の原典に当たらず、英文の西側報道をそのまま日本語に直して流しているためだ。

現実には、憲法改正(ロシア的には修正)によって確かに「領土引き渡しの禁止」条項が入れられたものの、「国境画定作業に伴うものは除外」旨の規定も入れられている。
これを言うと、多少ロシア語が読めるものは、「7月16日にロシア外務省が『日露平和条約交渉は国境画定とは何の関係もない』と発表した」と反論してくるわけだが、これは日ソ共同宣言に記載されていない択捉と国後の日本側領土要求を指していると見るのが妥当だ。
歯舞、色丹については、「平和条約締結後の引き渡し」が国際条約に明記されており、これこそがまさに「国境画定作業に伴うもの」であるからだ。
この例外規定は、わざわざプーチン大統領が求めて加筆されたものであることを考えても、それが妥当だろう。

しかし一方で、ロシアが日ソ共同宣言を確実に遵守するとは限らないわけで、そこをキッチリ交渉するのが、日本側の手腕ということになる。
ところが、右派もリベラル派も「ロシアとはもう交渉不可能」とばかりに最初から敵視することしか考えておらず、北方領土についても日本政府のプロパガンダ(四島返還論)を相変わらず信じている。
平素二言目には「ファクトチェックガー」などと言うリベラル派も、対ロシア・対中国については原典をあたろうとしないのは、連中の二枚舌ぶりを示している。

いずれにせよ、日本が長期的に勢力を減退させ、中国との勢力比が拡大の一途を辿る中、ロシア、北朝鮮、さらに韓国とも敵対するという選択肢が「アリ」と思っている連中ばかりが増えており、自分の都合しか考えない昭和初期の軍人、政治家と同レベルの思考回路に陥りつつあることを示している。
posted by ケン at 12:00| Comment(6) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
米国の腰巾着をやっていさえすれば、面倒くさいその他の隣国との関係は適当にやっておけばいいので領土問題は半永久的に解決させなくてOK、というというのが自民党・外務省の本音というところなのでしょう。
 第二次大戦の結果としての大幅な領土の縮小を受け入れることによって隣国との和解を達成し、現在では欧州大陸全体に自国の影響力を及ぼすことを可能としている戦後ドイツの外交の歩みとは対照的ですね。欧州統一に功績を残したドイツの政治家にはアデナウアーから始まって、コール、現在のメルケル首相と保守政党の指導者が多いのですが、自民党・外務省以下現在の日本人には「人の振り見て我が振り直す」能力は絶無ということなのだと思います。
Posted by SATO at 2020年09月26日 17:10
おっしゃる通りで、ワシントンの意向に反する政策を進めようとした田中角栄や小沢一郎は、パージされてしまうわけです。ただ、これも田中の頃はアメリカの意志が強く反映されたのに対し、小沢の頃、つまり今は霞が関が積極的にアメリカの意向を忖度して進めている感じもします。

ドイツは曲がりなりにも「ナチスは悪で、ワイマールは失敗した」との認識から入っているのに対し、日本は現在に至っても「俺は悪くない」から入っているので、そもそも反省する理由がわからない、わかる気も無いのでしょう。
Posted by ケン at 2020年09月27日 08:47
いつも丁寧なご返事をありがとうございます。ついでに河野太郎北方対策大臣もお勧めのTwitterを紹介しておきますね。北方領土問題についての政府広報のゆるキャラ「北方領土エリカちゃん」のTwitterです。
 先述の朝日の駒木編集委員も自分のTwitterであきれ返っておられるようですが、まともな批判的知性の持ち主なら日本人であることを心の底からやめたくなるようにさせてくれる、大変すばらしい出来栄えです。ケン先生もぜひご覧になってください。

 



Posted by SATO at 2020年09月28日 17:36
「北方領土エリカちゃん」は政権が変わるごとにツイート内容も変化して、共産圏の放送と同じで笑えますよね。
Posted by ケン at 2020年09月29日 12:46
しかしあっさり復活しましたね、「北方領土」表現。
Posted by o-tsuka at 2020年10月01日 01:15
それだけ政治統制がいかに重要かということです。
霞が関の連中は、放っておくとすぐ満州事変を始めてしまうので。
Posted by ケン at 2020年10月01日 18:53
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