2020年10月20日

異端の鳥


『異端の鳥』 ヴァーツラフ・マルホウル監督 チェコ・ウクライナ(2019)
東欧のどこか。ホロコーストを逃れて疎開した少年は、預かり先である一人暮らしの老婆が病死した上に火事で家が消失したことで、身寄りをなくし一人で旅に出ることになってしまう。行く先々で彼を異物とみなす周囲の人間たちの酷い仕打ちに遭いながらも、彼はなんとか生き延びようと必死でもがき続ける―。

ナチスによるユダヤ人狩りを逃れるために疎開させられた少年が、ひたすら差別と搾取と暴力にさらされ続ける話。ストーリーなど無いに等しく、ひたすら旅を続け、どこに行っても迫害されるハードすぎる内容なのだが、35mmモノクロ・フィルムによる映像が美しい上、セリフも音楽も最小限しか無いため、俯瞰的または第三者的に見られてしまうところが秀逸。

暴力が暴力を呼ぶ社会構造を見事に映像化している。
改めて現代日本もこの二、三歩手前まで来ていることを実感させる。

ロシア・東欧系の映画らしく、全く説明が無いので、一定程度の知識が無いと、主役の子どもがユダヤ人なのかも認識できないところが、日本ではなかなか厳しいかもしれない。
『炎628』で主演したアレクセイ・クラヴチェンコが出演しているところも興味深い。

インタースラヴィクという古代教会スラヴ語を基にした人工言語を使用している点も面白く、ロシア語話者として非常に興味深かった。
ただし、ドイツ語とロシア語はそのまま。
これは、場所や設定が特定されないようにする配慮に基づいている。
posted by ケン at 12:00| Comment(2) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
週末に私も観る予定で、ちょこちょこ情報を調べていたのですが、主人公の少年についてはロマではないかという考察も見ました(監督曰く主演のペトル・コトラールはロマ人らしく、劇中でも少年が「ジプシー」と罵られるシーンがあるとか)。

ポライモスに関して学生時代にイアン・ハンコックの本を読んだことがあって、主導した責任者が戦後も処罰されずドイツの公共部門で勤務し続けたり、80年代になってようやく補償が始まったとか、結構闇が深かったです。
Posted by スパルヴィエロ大公 at 2020年10月22日 12:06
モノクロな上、検証できそうなネタはわずかにしか写らないので、見逃しそうですが、言われてみれば、ロマなのかもしれませんね。確かに、その方が自然に思える気もします。

独ドラマ「ジェネレーション・ウォー」でも、ゲシュタポの幹部が戦後OSSの協力者になっているシーンが描かれていましたが、なぁなぁで済まされた日本とは違った深刻さを抱えていると思います。東独の方はもっと酷かったとも聞きますし。
Posted by ケン at 2020年10月23日 09:32
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