2020年11月18日

中国が内需拡大へ長期計画

【中国、内需主導へ転換図る 次期5カ年計画で】
 中国国営新華社通信は3日、共産党が先月下旬の第19期中央委員会第5回総会(5中総会)で策定した第14次5カ年計画(2021〜25年)と35年までの長期目標に関する基本方針を公表し、国内市場の強化を通じて内需主導の経済構造への転換を目指す意向を示した。
 計画期間中の国内総生産(GDP)伸び率目標には言及しなかった。
 習近平国家主席(党総書記)は方針策定に関する説明で、35年までにGDPや1人当たり収入を2倍にすることが「完全に可能」と自信を見せる一方、「外部環境には不確定な要因が多い」として、構造改革に注力する考えを明らかにした。
 次期5カ年計画の基本方針は、習主席が提唱する国内経済に重心を置いて対外依存度の軽減を図っていく「双循環」を盛り込んだ。対米摩擦の長期化をにらみ、科学技術の自立を発展戦略の柱に位置付けた上で、人工知能(AI)や半導体、宇宙技術などの強化を図ると表明。法定退職年齢の段階的引き上げも実施するとした。
 習氏はまた、国家目標に掲げる「小康社会(ややゆとりのある社会)」について、来年上半期に実現を宣言すると述べた。 
(11月3日、時事通信)

よく言われるのは、「米中冷戦で輸出依存度を下げざるを得なくなった」ということだが、米中冷戦を除外しても、中国は成長力を維持するためには内需重視への転換が不可欠になっている。
国際的な労働コスト競争が激化する中で、中国の生産コストは上昇しており、繊維産業を中心に東南アジアへの生産拠点の移行が進んでいる。
とはいえ、軽工業以外はむしろ中国の技術進化と流通体制の充実によって、中国の優位性が高まっている点もある。
エアコン、冷蔵庫、洗濯機など家電製品の世界シェアはこの10年間ほど、中国がトップを維持している。しかし、その生産拠点が移行するとなると、「その次」が問われることになる。

こうした傾向は、1980年代に日本が置かれた立場と酷似しており、私と同世代の方は記憶あるだろうが、当時の日米貿易摩擦は凄まじいものがあった。私も中国の研究所から依頼されて、日中貿易摩擦の解説文を書いて共著出版される予定だ。
日本の場合は、政策的には何でもかんでも先送りにして、最終的には安全保障を理由にして譲歩するという形だったが、中国は安全保障上の問題がないだけに、交渉でも激しく対立する傾向にある。
当時は、日米貿易摩擦下で中曽根政権が「日米親善のために内需拡大」を謳ったが、実のところ日本でも生産コストの上昇に伴い、内需拡大するほかなくなっていたことが現在では判明している。現実には、内需拡大と金融緩和と土地政策の失敗が重なって、土地バブルを発端にバブルが発生、その崩壊後一気に長期停滞に突入していくことになる。
日本の場合、1990年代以降、20年以上も給与水準が上がっておらず、非正規雇用の拡大に伴って、給与格差が拡大、相対的貧困層が増えたことで内需拡大も停止し、長期停滞の最大の原因となっている。人口が増えずに、給与が上がらなければ、停滞は避けられないからだ。

中国に話を戻すと、上海や北京だけ見ると、中国は凄まじい繁栄を享受しているように見えるが、実態としては平均給与(月)は約3500人民元=5万円程度に止まっており、先進国の水準には達していない。
中国人の多くが「世界に冠たる中華帝国」と自画自賛している一方で、インテリ層の相当部分が「まだまだ発展途上国」と卑下するのはそういうことだ。
日本の失敗を踏まえて、中国が成長を持続させるためには、習主席が掲げた「2035年までに国民一人あたりの収入を二倍に」という目標はむしろ控えめなくらいで、実現可能性と成長目標としての現実性を天秤にかけた結果だと思われる。
例えば、日本の場合、1982年の年間平均給与所得は320万円だったが、1992年には455万円になり、2019年は436万円とむしろ低下している。

10億人以上の人口を抱える中国で「所得倍増」を実現するのは容易なことではないが、世界が分断される中で、国内に巨大な市場を抱えていること自体が大きな強みとなっており、日本の反省を踏まえれば、実現可能性は十分にあるのではないか。
例えば、中国では法定退職年齢がいまだに男性60歳、女性55歳(現業職は50歳)となっており、改革の余地は十分にある。
それを見極めることも、私が中国に行った理由の一つだったのだが。。。










posted by ケン at 12:00| Comment(2) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
不勉強で恐縮ですが、中国の都市部と農村部の格差について教えてください。農村部人口の比率が高ければ、急速な内需拡大は望めないような気がするのですが。
Posted by yb-tommy at 2020年11月22日 03:00
実は中国は地方の中核都市化を進める方針を進めており、いまや都市部の人口が半分を上回っています。そのデータも都市近郊部の解釈拡大をしている面もあるのですが、農村人口が減少傾向にあることは確かです。
それでも、農村部と都市部の収入格差は凄まじく、内需拡大における最大の課題であることに変わりはありません。
とはいえ、農業の近代化も進んでおり、巨大な内需があるだけに、農業にも可能性あると思います。
Posted by ケン at 2020年11月23日 15:51
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